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半導体産業は今や世界経済と直結〜景気の先行指標となり一分野に左右されず

「景気の浮き沈みなどは関係がない。銀行のATMの切り替えだけを取材して来い。また、ビデオ(VTR)の設備投資動向についても詳細に調べよ」。

筆者がまだ新人時代の70年代終わりの頃は、先輩のデスクからこんなことをよく言われていた。つまり、石油の市況が悪くて景気が沈んでいても、メインフレームコンピュータが好調で、その端末機であるATMに対する投資が拡大すれば、半導体は伸びるとのご託宣なのだ。また、ビデオは草創期であったが、80年代の爆発に向けて開発投資が盛んであり、そこに使う半導体の開発動向が重要だったのだ。

まことにさように、かつての半導体業界は、ITや民生における応用機器の動向が全てであり、世界全体の経済とは必ずしも連動していなかった。ちなみに世界の証券・金融業界が半導体の恐ろしさに気づいたのは、たぶん1984年であっただろう。この年の世界全体の半導体需要は、実に前年比49%増の264億ドルに達した。この爆発的ブームを支えたのはパソコン市場の急成長であった。国内半導体メーカー上位30社の生産額も84年度は前年度比51%増となり、ついに3兆円を突破した。設備投資に至っては、前年度比ほぼ倍増の勢いで、9457億円を投入していた。

昨今の半導体の趨勢はひとえにスマホの生産台数と開発動向にかかっている、といってよいだろう。また、比率はまだ小さいもののEV、プラグインハイブリッド、燃料電池車などの脱化石燃料エネルギーのクルマを中心とする次世代自動車の動向も重要なカギを握っている。また、17年はIoT元年ともいうべき年であり、AI、ビッグデータ、センサ、ロボットなどの報道が世界を駆け巡っている。

35年以上も半導体記者をやってきてつくづく思うことは、ここ10年くらいの半導体産業はほとんど世界経済の情勢と正比例しているということだ。リーマンショックが来ればあっという間に半導体産業はドボンとなり、中国経済が爆発的に伸びれば半導体も一気に伸びてくる、といった風に世界経済と半導体は密着している。

そうした観点で2017年の半導体製造装置市場を見れば、実に世界販売額が前年比20%増となり、約500億ドルという過去最高の水準にあることは実に重要なことなのだ。これはすなわち、18年以降の世界経済が順調に伸びてくることを先行指標としてとらえている。米国でいうところのフィラデルフィア半導体係数が上昇の前触れとなっていることも、明確に認識する必要がある。それ故に筆者はかつての自分のように、ケツの青い新人記者に毎日のようにこう怒鳴っている。

「東京やニューヨーク、北京、パリを闊歩する若き女性たちのファッションを常に見ていろ!!ゴージャスなデザインが流行れば、必ずや半導体は成長する。大胆なコスチュームは男たちを魅了し、商業の活性化をもたらす。今や、世界の女性たちが半導体の命運を握っているのかもしれない」。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉
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