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中国半導体設計恐るべし!HiSiliconを頂点にIC設計企業が1700社

先月は中国の半導体製造業界の一端を紹介したので(参考資料1)、今月は中国の半導体設計事情を覗いてみよう。

既に昨年11月の本欄で、中国Huawei(華為科技;実際の設計は子会社のHiSilicon)が、AI機能を強化したスマートフォン用SoC「Kirin 980」を「世界初の7nm SoC」として、世界トップクラスの半導体やスマートフォンサプライヤに先んじて発表したことを紹介した(参考資料2)。このチップは、すでに同社の最新型スマーとフォンMate 20シリーズに搭載されている。

5Gで先行するHuawei/HiSiliconに米国勢が危機感

さらにHuaweiは、今年1月に次世代通信規格「5G」向けの半導体チップ「Baron 5000」を発表し、近く発売予定の5Gスマホに搭載するという。現行規格の4Gに比べ10倍の通信速度を実現し、米Qualcommの競合製品よりも通信速度が2倍速いという。Huawei/HiSiliconのIC設計能力は、米国政府やシリコンバレーのファブレス企業が危機感を抱くほど高度化している。

これらのハイエンドチップを設計した HiSiliconを頂点に、中国本土には、2018年末時点で1700社を超えるファブレス集積回路設計企業が存在しているという(中国半導体行業協会集成電路設計分会調べ)。中国では、中央政府の半導体自給自足方針に基づき、半導体の国産化ブームに乗って、ファブレス・IC設計会社が雨後のタケノコのように増加し続けてきている。北京、上海、深圳は以前からファブレス業界の3大中心地帯であるが、無錫、成都、蘇州、合肥、西安、南京、アモイ各都市にもそれぞれ100を超えるファブレス企業が存在し、天津、杭州、武漢、長沙などでも増えてきている。リバースエンジニアリング各社の中国ブランドスマートフォン分解調査によると、外国製半導体チップ(半導体メモリを除く)が次々と中国ファブレスのロゴマークの入ったチップに置き替わってきているという。

世界中でファブレス売上高シェアが増えているのは中国だけ

世界的には、ファブレスもスケールメリットを狙ってM&Aでだんだんと大手による寡占化が進んでいる中で、中国の1700社(ほとんどは従業員数100名未満の弱小企業)というのはいかにも多すぎて収拾がつかない。中国人の国民性とはいえ、補助金を手にして一獲千金を狙う起業家がなんと多いことか。中国政府は、国策ハイテク投資グループの精華紫光集団に働きかけて国内ファブレスの企業統合を進めて、世界トップクラスの大規模なファブレスをいくつか作ろうとしている。

ところで、米IC Insights の調べでは、世界ファブレス業界の売上高に占める中国勢(中国を本拠としているファブレス)のシェアは、2010年には5%でしかなかったが2018年には13%まで増えている。このため、ほかの地域・国はすべてシェアを落としており、北米 69%(2010年)→68%(2018年)、 台湾 17%→16%、 欧州4%→ 2% 、 日本1%→1%未満、韓国1%未満のままという具合である。中国とは対照的に、日韓両国はファブレス不毛国であり、両国の半導体産業の将来に影を落している(参考資料3)。

中国ファブレスは昨年23%成長し4兆円規模

台湾TrendForceの調査によると、2018年に中国のファブレス半導体業界は、前年比23%増の急成長で、その売上総額は2515億人民元(4兆円強)となった(参考資料4)。

中国のファブレス業界での売上額トップは、ダントツのHiSilicon(昨年の成長率は30%)
で、2位は清華紫光集団傘下のSpreadtrumとRDAが合併して再編成されたUnisoc、そして3位はCMOSセンサのBeijing OmniVision Technologiesである(表1参照)。年間売上額が100億人民元(1650億円)を超えたのはこの3社だけでなくである。中でもHiSiliconの売上額は2位のUnisocに5倍弱の差を付け、成長率も30%増と、圧倒的な強さを見せ付けている(参考文献4)。HiSiliconのIC 売上額のほとんどは、親会社のHuawei向け内販によるものなので、世界ファブレス売上ランキングによっては含めない場合もあるが、実際は世界5指に入るほど売上額を伸ばしている。

HiSiliconが好調なのは、親会社Huaweiのスマートフォンが好調であり、搭載されているHiSiliconが設計したKirinチップの出荷数が伸びたためである。台湾TSMCが現在HiSiliconから生産受託しているスマートフォン用プロセッサの数量は、Apple iPhone向けよりも多くなっているという。


表1 2018年中国ファブレス・IC設計企業売上額ランキング・トップ10 出典:TrendForce

表1 2018年中国ファブレス・IC設計企業売上額ランキング・トップ10 出典:TrendForce


ファウンドリサービスの中国需要が急増

中国内でのファブレス企業の増加に伴い、世界ファウンドリ業界の中国におけるファウンドリサービスの需要が急増している。

2018年、世界の専業ファウンドリメーカーの中国市場での売上高は前年比、41%増の107億ドルに達し、世界ファウンドリ市場全体の成長率が5%増という低い伸び率だった。そのため、中国地域が世界市場に占めるシェアも拡大を続けており、2018年は2017年の14%から5ポイント上昇となる19%へと拡大してきている(参考資料5)。世界中のファウンドリの業績は、今後ますます中国市場の動向に強く依存するようになると見られている。

なお、Huaweiは、台湾系のファウンドリや実装・検査受託企業等の半導体サプライチェーンに対し、Huawei向け生産ラインを台湾から中国へ移せないか打診している模様である。TSMCの南京工場では、台湾政府の指導もあり、地元との合弁企業化も避け、最先端プロセス技術導入も避けて16nmプロセスまでしか対応していない。このため、Huaweiの7nmプロセス(あるいはそれ以降のプロセス)を用いた先端半導体チップは中国国内では製造できず、TSMC台湾本社工場へ製造委託するしかない。もちろん、Huaweiは自前の半導体工場を持つことも検討しており、「米中摩擦の影響を避けるため、今後は半導体内製化を図っていきたい」と明言しているが(参考資料6)、米中貿易摩擦やハイテク覇権争い下で早急な実現は難しそうである。


参考資料
1. 服部毅、「中国半導体製造恐るべし!新興半導体メーカー経営者は在米数十年の国際人」 セミコンポータル (2019/03/05)
2. 服部毅、「中台勢恐るべし!世界初の7nm モバイルSoCは中国勢が設計し台湾で量産」 セミコンポータル(2018/11/16)
3. 服部毅、「ファブレス半導体市場で存在感を増す中国勢」 マイナビニュース (2019/04/03)
4. 服部毅、「2018年の中国ファブレス半導体業界の成長率は23% - トップはHiSilicon」 マイナビニュース (2019/02/22)
5. 服部毅、「2018年のファウンドリ市場を牽引した中国」 マイナビニュース(2019/01/15)
6. 服部毅、「台湾勢恐るべし!中国顧客も囲い込み独走体制を敷くTSMC」 セミコンポータル (2018/12/11)

Hattori Consulting International代表 服部 毅

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