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テクトロ、最大26.5GHzで500万円台のリアルタイムスペアナを発売

測定可能な周波数帯域が15GHzおよび26.5GHzと非常に高いにもかかわらず、基本仕様の価格がそれぞれ516万円、576万円と手頃なリアルタイムスペクトラムアナライザRSA5115AおよびRSA5126Aをテクトロニクス(Tektronix)社がリリースした。無線通信用の機器や半導体チップのノイズ解析・対策に強力な手段となる。

図1 26.5GHzの信号を測定できる500万円台のTektronix製リアルタイムスペアナ

図1 26.5GHzの信号を測定できる500万円台のTektronix製リアルタイムスペアナ
 色が赤いほど多くの信号が出ていることを表示


テクトロニクスは昨年秋に、4万円台のオシロスコープを発表し、価格を重視した戦略を採ってきている(参考資料1)。今回のスペアナは、周波数軸だけではなく時間軸でも信号パワーをリアルタイムで見ることができる。このため、周波数ホッピングなどのスペクトル拡散技術を利用しているWi-FiやBluetoothなどの信号をチェックできる。メモリは2の33乗ビット分(8Gビット分)を用意しており、さまざまな波形を蓄積できる。

さらに、ノイズに埋もれた信号に色を付けることで観測できるようにした。例えば、2.45GHzの無線LANで通信しながら同じ周波数のBluetoothや電子レンジのマグネトロンを動作させる時に、これらの電波状況をくっきりと観測できる。フルカラーの24ビットで表示するDPX(Digital Phosphor Technology)技術を駆使することで、信号とノイズを色や形で識別している。


図2 スペクトル図(下)を時間軸に沿って掃引する(上)

図2 スペクトル図(下)を時間軸に沿って掃引する(上)


さらにDPX技術は、毎秒29万2000のスペクトルを重ね合わせ表示する。また、ノイズに埋もれた信号にもトリガをかけ、見えるにしている。信号は、帯域25MHz〜110MHzで(機種によってオプションがある)最長7秒間信号を取り込める。反面、過渡的なパルスを最小3.7μsなら捕捉できる。

周波数スペクトルをリアルタイムで観測できる画面に加え、時間軸に沿って掃引する画面もある。また取り込んだ波形を解析する画面やオシロのように横軸が時間軸の画面もあり、通信のアナログ変調やデジタル変調の解析、コンステレーション図を見ることもできる。メモリ容量が大きいため、取り込んだ波形をリアルタイムで見るだけではなく、ビデオレコーダーのように後で再生してみることも可能だ。


図3 さまざまな解析機能と画面がある 出典:Tektronix

図3 さまざまな解析機能と画面がある 出典:Tektronix


ノイズに埋もれた信号を抽出するには一般に、信号スペクトルをFFT(高速フーリエ変換)処理することで、信号を強調する。今回は、DSP(デジタル信号処理プロセッサ)をふんだんに使いFFTプレーンを多数設けることで、さまざまな信号波形を出せるようにしたようだ。力ずくの技ともいえる。DSPチップの量産効果により、低価格化を実現できたと同時に、戦略的な価格にもなっている。例えば、従来の周波数帯域3GHzと6GHzのリアルタイムスペアナも30%程度の値下げを決め、それぞれ298万円、418万円としている。

オプションで帯域を基本仕様の25MHzから、110MHzまで拡張できるため、Wi-Fi仕様だけではなく、将来のLTE-AあるいはLTE-Bの通信にも準備している。テクトロによると、他社は帯域をオプションで40MHzに拡張している機種が多く、最も広帯域の機種でも85MHzだとしている。

ただし、テクトロの帯域110MHzのオプションモジュールは、358万円と安くはない。これを加えると、トータルのスペアナ価格は900万円程度になる。これでも今までよりは安い。従来の機種では、最大の帯域85MHzモジュールを加えると、2000万円程度のシステムになったという。

さまざまな高周波の電波を観測できるため、通信機器のテストだけではなく、電波監視業務、さらには26.5GHzのミリ波レーダーの評価などにも応用できる。

参考資料
1. テクトロニクス、500MS/sながら4万円台という低価格のオシロを発売 (2012/11/29)

(2013/01/25)

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