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GaNデバイス製造用8インチウェーハ対応のMOCVD装置を大陽日酸が発売へ

LEDのチップ面積増大や個数増加に対応したり、あるいはチップ面積の大きなパワー半導体にも使えたりするような、8インチGaNウェーハが入手できるようになる。大陽日酸が8インチSiウェーハ上にGaN膜を形成できるMOCVD装置、モデルUR26Kを開発、セミコンジャパンで展示した。


図1 ウェーハを搭載したMOCVDサセプタ 出典:大陽日酸

図1 ウェーハを搭載したMOCVDサセプタ 出典:大陽日酸


通常の豆ランプなどに使うLEDのチップ面積は0.25~0.3mm角しかないが、自動車のヘッドライト用LEDでは大光量を得るため1mm角と大きくしているチップがある。通常のLED照明器具はチップを多数並べて光量を増すと同時に、配置によって照らしたい領域を広げたり絞ったりする。いずれの応用でも照明に使うLEDのトータルの面積(チップ面積×個数)はますます増えていく。LED用MOCVD装置の大口径化への対応が迫られている。

MOCVD装置市場は、ドイツのアイクストロン(Aixtron)社と米国のビーコ(Veeco Instruments)社が双壁で、大陽日酸は大きく引き離されている。とはいえ、今後の市場次第で、のし上がる余地は大きい。また、8インチウェーハ用の装置は、アイクストロンがG4-TMあるいはG5-HTという装置を持ってはいるが、1回でロードできるウェーハ数は8インチウェーハ最大でも5枚である。

今回、大陽日酸が開発した装置はSiウェーハ上にMOCVD法でGaN膜を形成するもの。これまではGaN-on-Siの装置は6インチ径程度にとどまり、GaN結晶ウェーハとなると2インチ、3インチが主流となっていた。GaN結晶ウェーハがまだ最大でも6インチがせいぜいだからである。6インチから8インチに替えると2.25倍のチップ数がとれるようになり、生産性が向上する。

GaNで8インチウェーハを製作することはまだ難しいため、大口径化の容易なシリコンを基板にしてその上にGaNを形成する動きが米国でも複数社、ベンチャー企業を中心に出てき始めている(参考資料1)。ただし、SiとGaNの結晶格子定数が大きく違うため、それらの間に格子定数を整合させるためのバッファ層を導入することは必然である。AlNをバッファ層に用いるが、格子定数を合わせるためSiから徐々にGaNに一致するようにその組成をAlN、AlGaN、GaNと変えていく。

UR26Kでは、8インチウェーハを6枚、あるいは6インチウェーハなら10枚ロードできる。MOCVD装置はSiと同様、均一性が重要なので、ガスをウェーハよりも下の方から導入し、ウェーハより上のノズルからガスをラミナーフロー(層流)で流す。さらにウェーハ上のガス流を均一にするため、サセプタを回転させると共に各ウェーハも回転させる。すなわち自転と公転を同時に行うという訳だ。この自公転させるのに、従来はベルトを使う例が多いなか、大陽日酸はギアを利用する。ギアはロータリエンコーダを使えば回転しているウェーハの回転位置を特定でき、インサイチュモニターできるからだとしている。インサイチュモニターによってウェーハの反りを測っているという。この方式は同社が持つUR25Kという6インチ対応機と同じ仕組みであり、均一性を重視するため、この仕組みを変えていない。


図2 UR26Kの概念図 ガスは下から導入、上のノズルから流す 出典:大陽日酸

図2 UR26Kの概念図 ガスは下から導入、上のノズルから流す 出典:大陽日酸


ウェーハを加熱するための機構にはPBNによる6輪の抵抗加熱方式を用いているが、これもUR25Kの基本設計を変えていない。ウェーハを6枚載せられる大きなサセプタの中心から6重の輪を加熱用の抵抗とし、ウェーハに均一に熱が加わるようにしている。ウェーハを加熱する温度は1000℃程度とシリコンプロセスに比べて高い。ただし、装置の床面積はほとんど変わっていないとしている。

もともと半導体用のガスを得意としている大陽日酸は、MOCVD装置メーカーとしては後発ではあるが、今回の8インチウェーハ用のMOCVD装置が競合製品を負かすほどの高い生産性を備えていることで、世界市場にも乗り出せるようになる。

参考資料
1. GaN-on-Siのベンチャー続出、白色LED・パワーHEMTを狙いVCも活発に投資(2011/08/17)

(2011/12/22)

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