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多様化するセミコンJ(II)〜MEMSプローブ、樹脂フレーム、簡易クリーンルーム

セミコンジャパン2010においても、半導体の高集積化や高機能化によってシステムのコストダウンを図るというチップユーザーの視点は変わらない。半導体メーカーが常に意識していることはコストダウンである。コストアップを避けるため、テスター分野でもスループットを上げるプローブカードや、450mmの薄いウェーハを支持する軽いフレーム、手軽に実験できるクリーンルームなどもデモされた。

図1 フォームファクター社のMEMSプローブ

図1 フォームファクター社のMEMSプローブ


米フォームファクター(FormFactor)社は、MEMSプロセスによるマイクロスプリング技術に力を入れており、端子ピッチ50μm以下のDRAMをはじめとして、これからの微細で多端子のパッドに当てて検査するのに優れた技術である。このように微細なプローブがあると、300mmウェーハ内のDRAMチップを検査する場合に、ウェーハ全体を一括でテストできる。従来は最大400チップをステップアンドリピートで120台の電源を使い測定していたという。

MEMSのカンチレバーを利用するプローブは微細なスプリングを利用するため、ダメージが少ないとしており、100万回接触(タッチダウン)しても問題ないという。従来は縦方向に押さえていたが、今回のMEMSプローブは、スクラビングモード(まるで飛行機が着陸するように斜め上からスムーズに降りていくような方式)で電極に当てるため自然酸化膜の影響を排除し、クリーニング回数が減る、と同社SOC製品グループ長(VP & General Manager )のエイドリアン・ウィルソン(Adrian Wilson)氏は言う。MEMSプローブは梁の厚さをコントロールでき、カンチレバー1本当たりの最大電流容量を設定することができる。最大で2A/カンチレバーの電流がとれるという。

450mmウェーハ搬送用のフレーム
信越ポリマーは、ウェーハ処理が完了し裏面を研磨して薄く仕上げた後のウェーハのハンドリング用に樹脂製のフレームを提供している(参考資料1)が、今回のセミコンでは450mmウェーハ用の樹脂製搬送用フレームを展示した。これは薄く削った後のウェーハを支持、搬送するために薄いフィルムテープに張りつけるが、その丸いテープフィルムの周囲にフレームを設ける。

従来は金属製のフレームを用いることが多かったが、それを樹脂製に替えると軽くなる。450mmウェーハを支える金属フレームなら850gもあったが、樹脂製のフレームは350gしかない。1台のカセットボックスに従来と同様、25枚入れるとすると金属フレームだけで21.25kgにもなる。樹脂製フレームだと8.75kgですむ。これにテープ、ウェーハ、ボックスの重さが加わる。金属フレームのボックスは人間が運ぶのには重すぎる。信越ポリマーは、SEMIパッケージ委員会で標準化を提案している。

どこでもクリーンルーム
クリーンルームは、気圧を高くして密閉された空間で、ダウンフローの空気を流し常に無塵の空気が満たされた空間、という定義が常識だった。この常識を覆すような簡単なクリーンルームを構築するメーカーが現れた。防塵・防毒マスクや内視鏡洗浄消毒装置、土壌・地下水浄化装置などを製造販売している興研は、初めてセミコンジャパンに出展し、新型のクリーンルームを提案した。


図2 簡易クリーンルームの煙による興研の実験

図2 簡易クリーンルームの煙による興研の実験


これは、HEPAフィルタを敷き詰めたフィルタボックスを4枚並べて立てかけ、その対抗面に同じ4枚のHEPAフィルタボックスを立てかけるだけの簡易なクリーンルームである。4枚ずつ、合計8枚のフィルタを立てかけただけのオープンスペースである。展示では、パーティクルカウンタを使って、空間内の粒子数を測定した。会場内では0.3μm以下の微粒子が1リットル当たり130万個、0.5μm以下の微粒子は1リットル当たり1万6000個を示したが、オープンクリーンルーム内ではどちらもゼロを示した。

HEPAフィルタを通ったクリーンな空気は両面から吹き出て真ん中でぶつかり合い上に抜けていく。セミコン会場ではその様子を煙を使って実験した(図2)。フィルタのそばに煙をパイプから出し、両側から煙が真ん中に向けて流れ出し、両方からの煙がぶつかった後、上に向けて抜けていった。

興研によると、クリーンルームのレベルはクラス5であり、両面に立てかけたフィルタを4メートル以内までならクリーン度を保てるとしている。簡易クリーンルームを研究開発や試作、あるいは生産工程の一部に使うといった応用を提案している。

参考資料
1. 信越ポリマーが薄いウェーハ支持/テープ用樹脂製フレームを標準化提案 (2008/07/30)

(2010/12/14)

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