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Imagination、マルチスレッド技術を織り込んだMIPS I6400をリリース

昨年、MIPS Technologyを買収したImagination Technologiesがマルチスレッド・マルチコアの新しい64ビットアーキテクチャのCPUコア「Warrior」のミッドレンジI-クラス I6400を発表した。2014年2月に発表したローエンドのM-クラスI6400に加え、このファミリを揃えていく。ハイエンド用のP-クラスI6400も計画している。

図1 最大384個のマルチコアを集積できるMIPS I6400 出典:Imagination Technologies

図1 最大384個のマルチコアを集積できるMIPS I6400 出典:Imagination Technologies


MIPSは32ビットと64ビットのアーキテクチャで実績があり、これまでの累計では50億個のCPUコアを出荷してきたという。直近の1年だけでも7億5000万個出荷したとしている。特に、64ビットCPUアーキテクチャで20年の実績を持つ。これまでは64ビットの需要がハイエンド以外の用途ではあまりなかった。MIPSは米国では多数出荷されてきたが、日本ではほとんどの機器がARMアーキテクチャを採用している。MIPSは一部のテレビに32ビット製品が採用された実績はあるが、少数派であることに変わりはない。また、これまでは時代が64ビットを強く要求していたわけではなかった。

ところが、最近になって64ビットシステムはパソコン以上のコンピュータだけではなく、スマートフォンにも使われ始めた。AppleのiPhone 5Sが64ビットのA7を搭載、iPhone 6も64ビットプロセッサA8を搭載している。アンドロイド機種にも8月に発表されたHTCのDesire 510に、64ビットのアプリケーションプロセッサSnapdragon 410(Qualcomm製)が搭載されている。Qualcommの64ビットアーキテクチャは、410以外にもSnapdragon 610/810などが発表されている(参考資料1)。

新開発のコアI6400は買収したMIPSアーキテクチャにImaginationの技術が散りばめられており、最初の共同開発製品といえそうだ。

MIPS I6400の特長は、非常にスケーラビリティに富んだマルチコア・アーキテクチャであることだ。このCPUコアには、クラスタという単位を持ち込んだ。一つのクラスタには6コア含まれており、このIPには最大64クラスタを集積できる。つまり、合計384コアからなる超並列プロセッサを設計することもできる。しかも1コアはマルチスレッド処理が可能で、最大4本のスレッドを処理する。ImaginationはこれまでライセンスしないマルチスレッドのCPUコアMETAプロセッサを設計してきた(参考資料2)。今回のプロセッサにはImaginationのMETAの設計思想も折り込まれている。

MIPSのI6400は、まさにハイエンド用途ではスーパーコンピュータの超並列アーキテクチャが可能になっている。コアの数、クラスタの数はユーザーごとにフレキシブルに変えることができる。

マルチコアではコア同士をコヒーレントにつなぐためことが不可欠で、I6400ではMIPS Coherency Managerを集積している。Coherency ManagerはCPUコア間でメモリを共有できるように整えるための制御回路。これによりクラスタ当たり6コアのCPU構成のコヒーレンシを維持する。しかもクラスタ内のマルチコアCPUはそれぞれいろいろなクロック周波数や電圧を変えて動作できる。しかも、コヒーレンシを維持するアーキテクチャで、マルチクラスタや、ヘテロコアもサポートしている。

加えて、コア単位でハードウエアレベルの仮想化ができる。I6400では15のセキュアあるいはノンセキュアなゲストに対応している。

さらに、複数の独立したセキュアなコンテキストと、複数の独立した実行ドメインを含んでおり、Imaginationのユニファイドセキュア技術の一部としてこのコアをサポートしている。セキュリティを強化したことで、コンテンツ配信や支払い機能、ID保護などに対応できるとしている。

セキュリティに加え、ヘテロなクラスタ内における各コアのクロックと電圧を個別に設定できるようなパワーマネジメントも進化している。もちろん、この動作中にCPUコア間のコヒーレンシは維持する。さらに、128ビットのSIMD(single instruction multiple data)もサポートし、SIMD実行の効率を上げている。加えて、単精度/倍精度の浮動小数点演算回路も集積している。

このCPUコアのソフトウエア開発やボード開発のための仲間、すなわちエコシステムとしてMIPSがこれまで築き上げてきた仕組みに加え、prpl(パープルと発音)というオープンソースファウンデーションを利用できる。PrplはBroadcomやQualcomm、Caviumなどが創設した組織であり、MIPSのI-クラスコアのオープンソースソフト開発をサポートする。


図2 将来の複雑・高速のハイエンド64ビットSoCが揃う 出典:Imagination Technologies

図2 将来の複雑・高速のハイエンド64ビットSoCが揃う 出典:Imagination Technologies


Imaginationはこれまで、CPUコアをライセンスしていなかったが、MIPSを買収したことで、グラフィックスIPやRPU(radio processing unit)コア、ビデオコーデック、画質改善回路などを活かした64ビットSoCを設計するIPコアが出揃った(図2)。開発ツールも用意されている。

参考資料
1. How ARM architecture and Snapdragon processors are supporting the 64-bit future of mobile (2014/08/27)
2. マルチコアよりマルチスレッドで性能を上げながら面積を削減 (2007/11/08)

(2014/09/12)

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