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CESに見る講演から−テレビやPCの将来を描いたサムスン、マイクロソフト

民生機器で米国最大の展示会であるCESが現地時間で明日(10日)から始まる。本日9日は、そのプレビューとして、いくつかの企業の記者向けの説明会に出た(図1)。世界中の記者が集まったため、記者会見の1時間も前から並ばなければ会場に入れないという事態を引き起こした。中でもサムスンの発表は圧巻だった。なんと2時間待ちである。しかも新製品のオンパレードであった。

図1 サムスンの記者会見が始まる前の会場 立ち見が多い

図1 サムスンの記者会見が始まる前の会場 立ち見が多い


やはり聞くと見るとでは大違いであった。発表前にはサムスンが大型の有機ELのテレビを発表しそうだという評判があり、正直言ってそれだけか、と思っていた。ところが、実際のプレゼンは全く違った。これからのテレビの将来を語ったのである。55インチの有機ELテレビの試作品(図2)を見せたが、むしろ家庭におけるコネクティビティの中心にテレビが位置するという考えだった。すなわちスマートフォンやタブレットのビデオ映像とテレビはリアルタイムでつながり、同社がスマートTVと呼ぶものは、テレビ画面上にFacebookやTwitterなどをスマホと同様に操作できる。スマートテレビは今日のテレビでは見られないものと定義している。


図2 55インチの有機ELテレビ サムスン北米の経営層が講演

図2 55インチの有機ELテレビ サムスン北米の経営層が講演


スマートテレビには、3つのスマートがあるとする。スマートインタラクション、スマートコンテンツ、そしてスマートエボリューションである。一つ目のインタラクティブはテレビに、「聴く」、「見る」、そして「行う」、という要素を持たせる。特に入力のユーザーインターフェースに3つの工夫がある。一つ目のモーションコントロールは、ジェスチャー入力とも言われる人間の動きから欲しい要望を取り込む(見る)ものである。二つ目はボイスコントロール、いわゆる音声認識入力(聴く)だ。三つ目は顔認識である。顔を認識して(行う)その人が見たい番組を揃えておく。

スマートコンテンツは、これまでのテレビにはなかった機能であり、ファミリー向けの掲示板にする、フィットネス体操のプログラムを健康管理として入れておく、そしてキッズサービスと呼ぶ子供向けにわかりやすく表現した教育アニメなどがある。そして、こういったコンテンツをタブレットなどの端末と情報共有するコネクティビティが求められる。
最後のスマートエボリューションは、将来を約束されたスマートテレビを実現するための技術の進歩である。有機ELテレビはこの一つにすぎない。このためには半導体SoCがカギとなり、サムスンは一つのSoCで22機種のテレビに共通して使っているという。SoCはデュアルコアCPUを使い、有機ELの応答の速さに負けない半導体の処理回路も速くするという訳だ。

コンテンツの共有に重要なWi-Fiのコネクティビティの例を紹介する。サムスンが生産しているデジタルカメラでは、即座に写真を取り込み、即座に共有し、即座にアップロードする方向に向かっている(参考資料1)。1月6日のブログで紹介したようなモバイルワイヤレスはもうカメラに入るようになる。撮影後即、YouTubeやパソコンにアップロードする。またカメラの画面をスマホと連動させスマホを通してカメラを操作できるとセルフタイマーの操作は楽になる。


図3 ギャラクシータブ7.7LTE

図3 ギャラクシータブ7.7LTE


スマホやタブレットはメディアハブとしての使い方がこれからは中心になるという。7.7インチのギャラクシータブ7.7は米ベライゾンから売られるようになる(図3)が、このタブレットは汎用リモコンとしても機能するという。

サムスンはさらに厚さ0.5インチ(12.5mm)、重さ2.5ポンド(1.1kg)のパソコン、シリーズ9についても触れた。このウルトラノートブックは1.4秒で起動するパソコンでバッテリは10時間持つ15インチスクリーンのパソコンである。

テレビを中心にワイヤレスで携帯機器とつながることは、パナソニックも同様に考えている。タブレット(タフパッドと呼ぶ強固なタブレット)とテレビをワイヤレスでつなぐとしている。

MSのスティーブ・バルマーCEOが基調講演
民生機器のショーであるCESにマイクロソフトが基調講演に立った理由を、主催者のCEA会長兼CEOのGary Shapiro氏は、パソコンとテレビの融合がかつて騒がれた時にビル・ゲーツ氏が基調講演を行ったが、今はマイクロソフトがコンピュータを変えようとしていることと、民生機器がITとコンテンツ、通信を取り込むようになったため、マイクロソフトが重要な役割を果たすようになったとしている。


図4 マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEO(右)はインタビュー形式の基調講演

図4 マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEO(右)はインタビュー形式の基調講演


マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEO(図4)は、Windows PhoneをこれまでのWindowsとは全く違うアプローチをとったと述べ、初期画面にたくさんのアイコン(Sea of icons)が出るように設定し、アイコンを指で左右方向に動かすことで、いろいろなアイコンを出すことができるようにした。これまでのスマホは電話機能がまずあったが、Windows Phoneでは電話機能ではなく、ツイッタでその場の出来事を載せることが盛んになってきたため、それをすぐ出来るようなやりやすさを考えたという。

Windows PhoneはノキアがAT&Tのネットワークを利用するLumia900をこの春に発表し、T-MobileもLumia800をリリースする。マイクロソフトはノキアだけではなくサムスン、HTCとも一緒にWindows Phoneを開発してきた。HTCのType2 はAT&TのLTEネットワークに乗せるスマホを開発しており、内蔵のカメラは1600万画素もあるとしている。

マイクロソフトはタブレットにはWindows PCとARMベースのCPUを使う。2月の末にWindows Storeを開設し、100カ国語に対応する。初期画面はやはりアイコンをタイル状に並べる。名前の変更にはマウスを利用する。サムスンのシリーズ9やHPのウルトラブックに搭載されるとしている。

やはりマイクロソフトも教育とヘルスケアへの応用をにらんでおり、新しいソフトConnect for Windowsが2週間後に登場するが、その中に含めるとしている。もっと自然なUI(ユーザーインターフェース)を作る方針だ。全てユーザーエクスペリエンスに期待するものとなる。

nVidiaはTegra-3新プロセッサを発表
nVidiaは、Tegra-3(OSのコード名Icecream Sandwich:アイスクリームサンドイッチ、図5)を使ったタブレットやスマホを紹介した。前回のTegra-2は2億台のタブレットやスマホに使われたとしている。1個のアプリケーションプロセッサでさまざまな機種に使えることを実証した訳だ。Tegra-3は、60fpsのスピードで、コンテンツから4万ものアプリケーションを利用できるという。


図5 nVidiaのクワッドコアTegra-3新プロセッサ

図5 nVidiaのクワッドコアTegra-3新プロセッサ


Tegra-3ではSnapseedと呼ぶ、新しいUIは、タッチしながら指を上下すると、3〜4つのボタンの内の一つがハイライトされるようにしており、ボタンの選択方法がまた一つ楽しくなった。PhotoShopのような効果をタブレットでも簡単に表現できるようにGPUを動かしたとしている。この効果はフィルタをかけたように見える。

Tegra-3にはクワッドコアを採用し、処理速度を高めると共に、消費電力を削減した。例えば、LEDのバックライトの制御にも単純な調光ではなく、一つのスクリーンの中でも調光と光の調整により見た目の明るさをほとんど変えることなく、消費電力は下げる技術を開発している。同社はこの技術をPrism Enhanced Technologyと呼んでいる。


図6 nVIdiaのJen-Hsun Hwaung CEO(右)とASUSTEKのJerry Shen CEO(左)

図6 nVIdiaのJen-Hsun Hwaung CEO(右)とASUSTEKのJerry Shen CEO(左)


Tegra-3を利用した最初の製品は台湾のASUSTEKが出してくる。Eee Pad Transformer Primeと呼ばれるタブレットである。しかも価格がTegra-2を搭載したEee Padが399ドルだったのに対して、クワッドコアなのに249ドルと低い価格で提供する、とASUSTEKのCEOはJerry Shen氏は述べた。

参考資料
1. 2012年、モバイルワイヤレス元年を先駆ける企業が3年後に勝つ (2012/01/06)

(2012/01/10)

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