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2012年、モバイルワイヤレス元年を先駆ける企業が3年後に勝つ

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新年を迎え、新たな心意気で臨みたいと思います。
年明けの新聞では、昨年はスマホ元年という表現が踊っていた。一昨年からスマホは2ケタ以上の高い成長率で市場の拡がりを見せていた。今年は何が目玉か。と言いたいところだが、実はこの視点をもはや捨てる時代が来た。目玉を期待するのではなく、目玉をユーザーに提案していく時代に変わってきているからである。

テクノロジーでいえば、モバイルワイヤレスの製品や技術、市場はますます広がっていく。今年は、モバイルワイヤレス元年になると思う。では、モバイルワイヤレスとは何か。ネットワークと無線でつながっている携帯機器やその技術のことを指す。スマホや携帯電話、タブレットは言うまでもなく、ありとあらゆる携帯機器がネットワークでつながっていく時代に向かっている。例えば、カメラやICレコーダ、ゲーム機、PND(パーソナルナビ)、体温計や血圧計のようなヘルスケア製品、イヤフォンなど。それもインターネットを介してつながっていくものが多い。

上記の例ではインターネットにつながったカメラの試作提案は、米国ファブレスベンチャー企業のアンバレラ(Amballera)社が進めており、昨年紹介した(参考資料1)。それも低コスト、短納期で設計製造できるようなアーキテクチャを考案、それに基づいて毎年1品種のSoCを設計・商品化している。ヘルスケア製品がインターネットにつながった例は英国のトゥーマズ(Toumaz)社がある(参考資料2、3)。

一方で、半導体ビジネスはユーザーが望むソリューションをメーカーが提案する時代に入ってきている。ユーザーのシステムを100%理解し、想像力を働かせながら、ユーザーが2年後くらいに欲しい製品を提案する。デジタル回路、コンピュータアーキテクチャからアナログ、センサ、パワーマネジメント、そして高周波回路に至るまでユーザーが何を望んでいるのかを120%理解し、要求の先にあるものまでも知り尽くす能力が求められる。IDMにせよ、ファブレスにせよ、共にソリューションプロバイダとなることがユーザーにとって価値ある半導体メーカーとしての存在価値となる。

これからモバイルワイヤレスの時代に必要な半導体ビジネスは、インターネットに接続する携帯機器を提案することになる。となると、ワイヤレス技術が非常に重要なカギを握ることになる。このために必要なテクノロジーは、受信用LNA(ローノイズアンプ)、送信用パワーアンプ、ミキサー、I/Q分離・混合技術、フィルタ技術などを含む、RF回路技術である。さらに、受信機ベースバンド回路では、周波数変換した搬送波から、デジタル変調した信号を取り出す復調回路が必要であり、送信機ベースバンド回路では、I/Qにデジタル変調する信号をキャリヤ周波数に載せる回路が必要となる。

高周波回路を握る半導体メーカーがこれからの広い市場を獲得することになる。モバイルワイヤレスに欠かせない高周波回路を低コスト・低消費電力で実現できる技術開発が世界中でも求められている。いかに安く、いかに少ない消費電力で高性能なチップを動かすか、が腕の見せ所だ。そのためにはアナログから電波、デジタル、ソフトウエアといったシステムを理解しているエンジニアを囲い込むことが近道といえる。これが世界の半導体に勝てる方程式となっている。

高周波回路は、波としての電波を理解するとわかりやすい。電波は波の性質を持つため、波長の1/4倍から1/2倍、1倍、2倍と整数ごとに波の強弱が現れる。干渉・増幅・反射などの性質を理解し、数学的には三角関数だが、量子的に整数を基本とした値になることを頭に入れておけばよい。あとは基本的なアナログ回路と、デジタル変調回路、sパラメータを勉強すれば高周波の基本は理解できる。

モバイルワイヤレスを制するものが3年後の世界を制すると津田は予想する。電波の世界は、これだけではない。プラズマの効率向上、ノイズの削減、リソグラフィ技術の最適化、自動車エレクトロニクス、デジタル放送受信機の設計、ソフトウエア無線などにも役に立つ。高速・高周波技術はパワーエレクトロニクスにも通じる。例えば、数十〜数百Aもの大電流を流すと、ちょっとした配線がインダクタンス成分を持ち、磁界を発生し、電圧も持ち上げる。太い配線は、電磁波を発生するだけではなく、高周波回路の考え方と共通性を持つ。

半導体メーカーの中で、RFから復変調回路(ベースバンド)まで完全制覇している所は少ない。製品・技術のポートフォリオを充実させると、世界の半導体メーカーとして極めて強くなる。システムソリューション提案もできるようになるからだ。ここにルネサスなり東芝なり富士通なり、日本の半導体メーカーがワイヤレス技術のエキスパートとなることを願う。

参考資料
1. 未来の携帯機器を映し出す半導体がカギとなる、ファブレス成功への道 (2011/10/20)
2. 特集:英国株式会社(6)医療用半導体信号処理の大学発ベンチャー (2008/03/26)
3. 津田建二著「欧州ファブレス半導体産業の真実」、日刊工業新聞社刊 (2010年11月)

(2012/01/06)

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