チップをクラウドにつなごう、英イマジネーションがRPUのIPコアを検討
これからの半導体ビジネスを牽引する応用にはカーエレクトロニクス、ヘルスケア、再生可能なエネルギー、セキュリティなどが挙がっているが、どの分野にも共通して使える技術がワイヤレス技術である。いわゆる高周波(RF)回路と復調回路からなるワイヤレスの基本アナログ回路と、復調したアナログあるいはデジタル信号を扱う、いわゆるベースバンド信号回路がワイヤレス技術のキモを握る。IPベンダーでさえも注目し始めた。
今後のSoCにはコネクティビティ機能が付くようになり、「Connecting Chips to Cloud」(チップをクラウドにつなぐ技術)が新しいSoCを牽引するだろうとしている。同社はIPベンダーだけに将来のセット(電子機器)の姿をしっかりイメージしている。半導体メーカーをユーザーとするIPベンダーは、数年経っても陳腐化しないIPを開発しなければビジネスできないことを熟知しているためだ。
同社は、グラフィックスIPコアのPOWERVR SGXがインテルのモバイルプロセッサAtomのチップセットやアップルのiPhone 3GSなどに採用されるなど、最近の勢いを加速している。これまで同社のIPコアを使った半導体チップは累計2億個出荷されたという。その先のアプリケーションとなると、独自の並列処理可能なシングルコアであるMETAをCPUに使い、GPUのPOWERVR SGXや浮動小数点プロセッサコア(FPU)を載せ、さらにRPUを載せることで将来のSoCの中核が出来上がる。
METAマルチスレッドプロセッサコアは、一つのコアの中に最大4つのスレッドを使って並列処理ができるという特長がある。コアは一つでマルチコア同様の動作を行うため面積が小さくてすむ。プロセッサ1個は演算を受け持つALUが最大面積を占有するが、ALUが実際に動作している時間は全体の30%程度だという。このため他のジョブをこのALUに割り当てることで並列処理を行うという訳だ。このスケジューリングに同社独自のノウハウがある。
ハイエンドのMETA HTPでは、マルチスレッドのアプリケーションプロセッサに加え、DSPや浮動小数点プロセッサ(FPU)も集積する。1クロックでスレッドをFPUあるいはDSPにコアを変えられるため、仮想化技術に向く。レイテンシはなく1クロックで処理できるという特長がある。さらにプロセッサコア数が必要な処理には、METAをマルチコアで使うことができる。
第1世代のMETAプロセッサは動作周波数350MHz、消費電力0.02mW/MHz、シリコン面積0.2mm2で、プロセスは65nmだが、開発中の第2世代のMETAプロセッサコアは、動作周波数が最大1GHz、40nmプロセスで製造されるとしている。第2世代はもっと深いパイプラインを使い、しかもパイプラインの段数をダイナミックに10段まで命令によって変えられる構成だとしている。
Yassaie氏はMETAプロセッサコアによってワイヤレス機能を変えることはこれまでのソフトウエア無線を超え、プログラマブル無線と呼んでいる。