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STMicro、データフロー方式のAIエンジンを32ビットマイコンに集積

STMicroelectronicsは、データフローアーキテクチャ方式のAIアクセラレータを集積した32ビットマイコン(マイクロコントローラ)「Stellar P3E」(図1)を製品化、サンプル出荷を始めた。CNN(畳み込みニューラルネットワーク)を活用するニューラルプロセッサNPUを集積した初の32ビットマイコンである。マルチコアを駆使、冗長構成や仮想化技術などより高度でより安全なクルマ作りに向けている。

STELLAR P3E / STMicroelectronics

図1 STMicroelectronicsが開発した32ビットマイコンStellar P3E 出典:STMicroelectronics


マイコンには初めてNPUコアが載るようになった。しかもマイコンといえどもクルマ用のチップでは、仮想化技術も入り込んでくる。複数の機能を1個のマイコンで処理するようになってきたからだ。クルマ用マイコンは、オフィスや家庭のパソコン向けとは違い、リアルタイム性も求められる。

クルマをもっと賢くするためのコンピュータ化では、できるだけ無駄なコストをかけないことがクルマ設計の基本だ。このため、カーコンピュータの心臓部には高価なハイエンドの64ビットSoCではなく、受け入れられる価格の32ビットマイコン開発をSTは選んだ。

Stellar P3Eチップは、CPUにはArmのリアルタイムCPUコアであるCortex-R52を複数個、集積したマルチコア構成であり、仮想化技術として複数の機能を1チップに統合できるマイコンである。

なぜこのようなマイコンを開発したのか。STのマイクロコントローラ・デジタルIC・RFグループ担当バイスプレジデントであり、汎用および車載向けMCU部門のジェネラルマネージャでもあるLuca Rodeschini氏は、次のように語る。「車載ビジネスでは、自動運転やEV(電動車)だけではなく、安全性やセキュリティなどますます複雑になってくる。OEMからの要求も多岐に渡り、より快適なスピードを出すことができ、より多くの新機能を加えるという要求もある。その結果、ソフトウエアのコンテンツが増加しており、コンピューティングプラットフォームには、高性能・柔軟性・セキュリティが求められる」。

そこで、32ビットマイコンにマルチコアCPUやNPUを搭載したという訳だ。CPUやNPUはソフトウエアを使って独自の機能を付加できるという柔軟性がある。しかもソフトウエアはOTA(Over The Air)のように無線を通して更新できる。ここでは、リアルタイム性のあるCPUコアとして、Arm Cortex-R52+シリーズを採用した。

加えて、マルチコアを利用することで消費電力をさほど上げずに性能を上げることができるだけではない。複数のプロセッサがあれば、仮想化して使ってもさほど性能は落ちない。仮想化できれば複数のECUを1個のECUで統合できる上、柔軟性も高まる。ハイパーバイザというソフトウエアで機能を追加・切り替えられるからだ。


冗長構成でより安全に
さらに、2個以上のプロセッサは、自動車のようなミッションクリティカルな応用では冗長構成のLock-Stepモードを使って安全性を優先するか、あるいはSplitモードで様々なタスクを独立した2個のCPUとして使うか、ユーザーが選択できるようなSplit-Lock方式を採用した。Lockモードで動作しているときに、もし一つのCPUコアが故障すると、故障したCPUを切り離し(split)、故障していないCPUでしばらく走ることができるような設計ができる。

Stellar P3E / STMicroelectronics

図2 Stellar P3Eのブロック図 出典:STMicroelectronics


NPUに関しても、ニューラルネットワークモデルを使ったCNN(畳み込みニューラルネットワーク)を効率的に実行するためにデータフローアーキテクチャを使っている(図3)。この方式は、畳み込み演算部、プーリング演算部など、ニュ―ラルネットワークの演算の流れに沿って処理を進める方式で、効率の良さから演算性能の向上、そして消費電力などの削減につながる。CPUからHBMメモリを何度も行き来する必要がない。CPUでAI演算をする従来方式と比べると障害物検知の推論では69倍の性能、近接物の確認では16倍の性能が向上している。


安全なNoC / STMicroelectronics

図3 AIアクセラレータ専用回路を集積、ニューラルプロセッシングに対応 出典:STMicroelectronics


エッジAIの応用としては例えば、窓に指が挟まれそうになると、それを検知して止めるようなアルゴリズムを組み込むことも可能になる。センサからのデータを元に行動を予測するスマートセンシングのような新しいアプリケーションが可能である。

メモリとしても従来のNORフラッシュでは微細化に限界があるため集積度を増加させにくいが、PCM(相変化メモリ)を使ったxMemoryを集積したことでメモリ容量を従来の2倍の19.5MB(バイト)を搭載した。また通常のメモリとして1.8MBのSRAMと128KBのデータPCMメモリを集積した。xMemoryはOTAを通じてソフトウエアを更新するために利用できる。PCMメモリを搭載したこのプロセスでは28nmのFD-SOI(Fully Depleted – Silicon on Insulator)テクノロジーを使っている。

Stellar P3Eチップは現在、主要顧客にサンプルを出荷中で、2026年後半に量産開始する予定である。

(2026/02/10)
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