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TI、GaNとドライバICを1パッケージに集積したモジュールを製品化

GaNやSiCのような高速のパワー半導体は性能の優位性は明確にあるものの、ノイズやオーバーシュート、アンダーシュート、リンギングなどプリント基板上で使いにくさが残る。ノイズを抑えるドライバICがカギを握ることをすでに伝えたが(参考資料1)、ドライバICとGaNパワートランジスタを集積したモジュール(図1)をTexas Instrumentsが開発した。

GaN IPM / Texas Instruments

図1 TIが開発したGaNインテリジェントパワーモジュールIPM 出典:Texas Instruments


今回TIが開発したのは、1つのパッケージ内にGaNトランジスタ6個とドライバICを搭載したIPM(Integrated Power Module)、モノリシックには集積していないが、1パッケージ内に統合したもの。マイコンからのデジタル信号で、そのまま命令を受信し、パワートランジスタを駆動できるため、回路構成が極めて簡単になる。しかもノイズなどの問題に苦しめられなくなる。

GaNパワートランジスタをハイサイド側3個とローサイド側3個ずつ設けており、3相ブラシレスモータをスムーズに駆動できる。耐圧650VのIPMになっているため、家庭でエアコン用の200V(日本)や230V(欧州)の交流電源に合わせてモータを駆動できる。また大型冷蔵庫や、自動皿洗い器、洗濯機などのモータにも使えば、騒音や振動を少なくできるという。可聴周波数よりも高い周波数でスイッチングできるため騒音として聞こえないためだ。


TI GaN IPMとIGBTの効率性能を比較 / Texas Instruments

図2 IGBTとの効率の比較 IGBTは放熱フィン付き 出典:Texas Instruments


TIがGaN IPMを開発したのは、「モータ駆動回路を小型、高効率だけではなくさらに低コストにできるメドがついたためだ」と同社モータドライブ担当システムアプリケーションマネージャーのKrushal Shah氏は語っている。GaNはシリコンのIGBTよりも単体のコストは高いものの、モータ駆動回路というシステムから見ると、GaNを使った方がシステムコストは下がる。インバータの効率が99%と高く(図2)、ヒートシンクなしで出力250Wのモータを駆動できるため、放熱フィンのコストが不要、面積が半分になる基板コストなどシステムコストで2ドル以上削減できる、とShah氏は言う。

新製品「DRV7308」GaNパワー半導体内蔵のIPMは、図3のようにハイサイドとローサイドで1組のGaNパワー半導体を3組集積したパワー半導体部分(赤で囲んでいる)に加え、ゲートをドライブするためのドライバ回路(ハイサイドとローサイド)、I/Oデジタルコントローラに加え、昇圧回路や過電流や加熱から部品を守る保護回路などを集積している。ドライブ回路にはスルーレートを4種類選択できるようになっており、これには外部抵抗を利用する。


GaN FETs / Texas Instruments

図3 GaNパワートランジスタとドライバやI/OコントローラなどのシリコンICを1チップに統合 出典:Texas Instruments


このIPMは、12mm×12mmの60ピンのQFNパッケージに封止されており、1000購入時の単価は5.5ドルだという。IPMデバイスをプリント回路基板に実装したリファレンスデザインも提供できる。

参考資料
1. 「Analog Devices、GaNパワーFETを駆動するシリコンICでGaN回路設計を容易に」、セミコンポータル、 (2024/06/05)

(2024/06/19)
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