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MediaTek、日本市場を強化、5Gチップをリリース

MediaTekがAIプロセッサコアとArm Cortex-A77を4コアとA55を4コア、さらにGPUコアMali-G77を9コア集積した、5Gモデム内蔵のハイスペックなSoC「MediaTek Dimensity 1000+」をこのほどリリースした(図1)。昨年のArmが発表したばかりのマルチコアのCPUコア、GPUコアを集積しており、消費電力を下げるためbig.LITTLEアーキテクチャを使っている。

MediaTek Dimensity 1000+

図1 MediaTekがリリースした5G向けSoC Dimensity 1000+ 出典:MediaTek


最近、中国華為科技のファブレス半導体子会社HiSiliconに注目が集まっているが、実は台湾MediaTekは2018年に5GモデムチップセットHelio M70をリリースしており、5Gで出遅れた訳ではない。モデムだけではなく、スマートフォンのプロセッサであるSoCも5G向けスマホにリリースしている。2019年にはサブ6GHz向けの5Gチップを使ってT-Mobileと5G-NR(New Radio)のスタンドアローン(SA)での通信試験を成功させ、2020年に入り中国のスマホメーカーOppoとスウェーデンの通信機器Ericssonとの三社のVoNR音声・ビデオ通話試験を行うなど、5Gシステムの先頭を走っている。

そのような中、昨年末「MediaTek Dimensity 1000」を発表し、今回はこれに続くSoCとなる(図2)。CPUコアとGPUコアは昨年リリースした1000と同じであるが、ゲームやカメラ機能、ディスプレイなどを強化しており、このことを、UX(ユーザーエクスペリエンス)を改善した、と表現している。加えて、2波のキャリアアグリゲーション(2CC CA)にも対応しており、データレートを2倍にできる機能を持つ。


MediaTek Dimensity 1000+

図2 MediaTek Dimensity 1000+に集積されている機能 出典:MediaTek


図2のAPUとあるのは、アプリケーションプロセッサというよりAI専用のアクセラレータで、これもbig.LITTLEアーキテクチャを採用している。スイス連邦工科大学によるスマホ用SoCの機械学習のベンチマークでは、HiSiliconのKirin 990 5GチップやQualcommのSnapdragon 865や855 Plusを抑えてINT8やFPT16などいくつかのベンチマークでトップに立っている。

カメラ用のISP(イメージ処理プロセッサ)回路にも5コアを集積しており、80M画素の動画を24fpsで処理する。ディスプレイに対しても、2520×1080のフルHDで144Hzのリフレッシュレートにも対応する。4K動画を60fpsでビデオ処理する。

5Gモデムは、NSA/SA(4G共存のノンスタンドアローン/5Gだけのスタンドアローン)両方に対応し、しかもダウンリンク最大4.7Gbps、アップリンク最大2.5Gbpsをサポートする。

これらのプロセッサなどがあればスマホには十分使えるが、Intelのプロセッサと組み合わせれば、5Gパソコンが可能になる。このチップには、CPUでブラウジング、ゲームにはグラフィックス、ビデオ撮影などUXが改善されているため、コンピュータで計算しながら5G通信でビデオやゲームなどを楽しめるようになる。

MediaTekはミッドレンジのDimensity 800/820も同時に発表しており、5Gスマホやパソコンに向け、さまざまなデバイスポートフォリオに対応できる。MediaTekは、10年ほど前にNTTドコモと提携し(参考資料1)、LTE技術のライセンスを授与したことで今日のモデム事業で5Gでもほぼトップクラスに入れるようになった、と日本への感謝を忘れない。台湾企業らしいコメントを述べていた。

参考資料
1. したたかメディアテックの世界戦略、NTTドコモとの提携で日本攻略へ (2010/07/28)

(2020/07/22)

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