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Intelが新型GPUを発表、ヘテロアーキテクチャ向けソフトも新開発へ

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Intelが新しいXeアーキテクチャをベースにしたGPUを発表した。汎用のGPUだとしながらも、狙う分野はAI(ディープラーニング)とHPC(High Performance Computing)だ。CPUとGPUのヘテロ集積により複雑になりがちなソフトウエア開発を簡単にする手法を創出するための仕組み作りOneAPIイニシアティブを提案した。

Building the Foundation for Exascale Computing

図1 IntelがGPUを発表、同時にソフト開発のためのエコシステムOneAPIイニシアティブを設立 出典:Intel


IntelはXeonプロセッサCPUとGPU、Optane DCパーシステントメモリなどを基板(図1)に搭載したExascaleコンピュータをArgonne National LaboratoryにAuroraシステムという名称で納める。このAuroraスーパーコンピュータのコンピュートノードには、2個のXeon スケーラブルプロセッサ(コードネームSapphire Rapidsで、10nmプロセス)と6個のPonte Vecchio GPUを搭載しており、10P(ペタ:10の15乗)バイト以上のメモリと、230Pバイトのストレージをサポートする。

Intelがこれまでのx86単一アーキテクチャのCPUに加え、GPUも出すことによって、ソフトウエア開発は複雑になる。それぞれの命令セットが異なるからだ。ライセンス無料のRISC-Vを提唱した、UC BerkeleyのKrste Asanovic教授もCPUやGPU、DSPなどのヘテロプロセッサシステムにおいてそれぞれのISA(命令セットアーキテクチャ)を使うことによって複雑になってしまうため、RISC-Vを開発したのであって、無料のCPUが最初の目的ではない、と述べていた(参考資料1)。

IntelはGPU導入によりヘテロアーキテクチャを容易に扱えるようにするため、OneAPI産業イニシアティブを設立した。Intelが提唱するOneAPIは、CPUとGPU、FPGA、その他のアクセラレータを含む異種のプロセッシングアーキテクチャでアプリケーションを開発するために統一的で簡単なプログラミングモデルを提供するというもの。これまでならCPUの命令セットが確立しており、プログラミングする場合でも学んできたプログラム手法が使えた。しかし、GPUのようにグラフィックス専用の命令セットも加わるようになると、複雑すぎて混乱を招くようになる。そこで、IntelがCPUもGPUもFPGAも統一的な命令セットを用意して、簡単・明瞭にプログラムできるようにするのが、このOneAPI産業イニシアティブである。

ヘテロプロセッサのソフトウエア開発はあまりにも多くの時間を要するため、さまざまな開発者がさまざまなアーキテクチャを取り扱うような独自のプログラミング手法はもはや限界にきており、これを突破するためオープンスタンダードなモデルへ変えていこうとしている。IntelのシニアVP兼チーフアーキテクトであり、アーキテクチャ・グラフィックス・ソフトウエアのジェネラルマネジャーのRaja Koduri氏は、「カスタマが簡単にさまざまなコンピューティング環境のパワーを最大限に引き出せるようにすることが最優先で、Intelはソフトウエアファースト的手法を進めることを約束し、ヘテロプロセッサのアーキテクチャに向け、統一的でかつスケーラブルな抽象化技術を提供する」と述べている。

OneAPIイニシアティブは、AIが大量に吹き込まれたマルチアーキテクチャの世界に向けたプログラミング手法を定義し、性能を犠牲にせずにアーキテクチャを開発する人たちに統合的でオープンなプログラミング体験を提供する。複雑でバラバラなコードや、多数のプログラミング言語、異なるツールやワークフローといったわずらわしさを取り除く。既存言語のサポートで既存のソフトウエア投資を保ちながら、開発者がいろいろなアプリケーションを創出できるようなフレキシビリティを持たせる。

OneAPIにはオープン規格に基づく業界主導のソフトウエアとIntelのベータ製品を含む。その規格としては、プログラミング言語と強力なAPI、そして低レイヤーのハードウエアインターフェイスを含む。IntelのOne APIベータソフトウエアには、コンパイラやライブラリ、アナライザなど幅広い開発ツールをカスタムツールキットとしてソフト開発者に提供する。当初のOneAPIベータ版にはIntelのXeonスケーラブルプロセッサと、グラフィックス搭載したIntel Coreプロセッサ、Intel FPGAを他のハードウエアも含めてこれからリリースしていく。

参考資料
1. 半導体プロセッサメーカーが集結した師走(IoT/セキュリティ編) (2017/12/22)

(2019/11/19)

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