3D-Xpointメモリの位置づけをMicronが明確に
NANDフラッシュとDRAM、ストレージクラスメモリの他にも今後10年に渡り、コンピュータおよびAIシステムを構成するメモリ階層の構想をMicron Technologyが打ち出した。ストレージクラスメモリとしての3D-Xpointメモリだけではなく、NVDIMM、TLCとQLCの役割分担なども明確にした。
図1 Micron エグゼクティブバイスプレジデント兼CBOのSumit Sadana氏
Micronが示したメモリの階層構成の中で、NVDIMMはデータセンターで次の10年に重要になるだろう、との見通しを同社エグゼクティブバイスプレジデント兼CBO(最高ビジネスオフィサ)のSumit Sadana氏が示した。同氏は、今後10年はビッグデータと深く関係し、そのデータの持つ能力に基づいた応用が展開されるとした。例えば農業から新アイデアまでデータは強い影響を及ぼすだろう、とSadana氏は見る。
3D-Xpointメモリは、セル構造がクロスポイント(交点)構造だが、実はデバイスのスピードを決めるのは、メモリセルではない。読出し/書き込みの動作を高速にするのはIOインターフェイスであり、並列に大量に読み出せればよい。NVDIMM(図2)に関してはまだ研究中とのことで明らかにしないが、セルに3D-Xpointを使い、入出力回路のバンド幅を広げて高速化するメモリがNVDIMMのようだ。
図2 メモリの新階層構成をMicronが提案
このことは3D-Xpointメモリだけではなく、NANDフラッシュについてもいえる。SLC(1ビット/セル)が最も高速で、次がMLC(2ビット/セル)、そしてTLC(3ビット/セル)、QLC(4ビット/セル)と続く。最も遅いが、最も消費電力が低いのがQLCである。だからこそ書き込みことよりも読み出すことが中心となるストレージに使う。このことは、NANDフラッシュやSSDのユーザーであるPure Storage社も同様に見ている(参考資料1)。
3D-Xpointの特長は、NVDIMMと比べ、少し遅いが、柔軟性があり、しかもスケーラブル(拡張可能)だという。今回は、実際に3D-Xpointメモリを搭載したSSD(製品名「X100」)も製品化した(図3)。これまでで最も早いSSDと比べ、入出力の速度は、2.5M IOPS(Input Output per Second)と3倍速く、バンド幅は9GB/s以上だとしている。ただし、X100は高速ストレージという位置づけで、今年中にサンプル出荷を行う。
図3 3D-Xpointメモリを使ったMicronの高速SSD
これに対して、同じ3D-Xpointでもメモリとして扱うのがNVDIMMである。これまで、NVMeインターフェイスを持つSSD(NANDフラッシュ)では14k IOPSで、レイテンシも67µsだった。最初のNVDIMM-Nの場合、1.1M IOPSで、0.8µsと桁違いに速くなった。今回は、入出力速度もレイテンシもさらに速くなった。同じメモリセルを使っても、ストレージ用途では4Kバイトのブロックでアクセスするのに対して、メモリは64バイトでアクセスするため、コントローラが全く異なる。それぞれ最適化して使う。もちろん、X100では新たにコントローラを設計し直した、と同社Emerging Memory Solutions部門のVP兼ジェネラルマネージャーのVinod Lakhani氏は述べている。
NVDIMMはその名の通り、NV(Non-volatile:不揮発性)ながらDRAMのようなメモリモジュールという意味で名付けられたメモリモジュールである。ただ、これまでのDDR DRAMでは同期式で、クロックに合わせてアクセスのタイミングが決まっていたが、NVDIMMでは新しいバスアーキテクチャが必要で、NVMpという名前のプロトコルを準備中だという。現在JEDECで標準化を提案している。NVMのpはパーシステントメモリ(Persistent Memory)のpだという。DRAMとは違い非同期式で動作する。このため、ホストからアクセス信号を受け取るとそれを返して動作を開始することを伝えてからアクセス動作が始まる。いわゆるイベントドリブン方式のアクセスを使う。
こういったDRAMの次に速いメモリという位置づけにすることによって、CPUとの通信に関して、Intelとディスカッションしているという。
参考資料
1. QLCを使いこなしたフラッシュアレイのPure Storage社 (2019/10/11)