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Analog Devices、IoTビジネスで早くも顧客獲得

IoTシステムの実例が出てきた。Analog Devicesは、IoTシステムのループ(センシング→計測→データ変換→伝送→クラウド解析・予測・学習→実行と最適化、を経てIoT端末へ)に必要な半導体チップを、クラウド解析と実行・最適化を除き、網羅してきた。すでにニュージーランドの農場などでユーザーを確保している。

図1 手のひらに載る赤外分光分析器 出典:Consumer Physics社

図1 手のひらに載る赤外分光分析器 従来の分光分析機は机2〜3個分の大きさだが、ADIがセンサと送信機の1チップ化で実現した 出典:Consumer Physics社


半導体・部品メーカーでありながら、顧客である工場や農場主と直接ディスカッションして顧客満足度を上げているAnalog Devices社(ADI)の例は、IoTビジネスのあり方を示唆している。チップメーカーがIoTシステムの主導権を握り、顧客の価値(データを変換した情報)を高めることに成功したのだ。

IoTビジネスでは半導体や部品メーカーがIoTデバイスやセンサ端末だけを作ってシステム業者に販売するだけでは、従来と同じ「部品屋」と変わらない。工場・農場経営者・小売り商店などの顧客の価値を高めることで初めてIoTビジネスの主導権を握り利益を確保できる。クラウド解析部分は、クラウドサービス業者やクラウド利用のプラットフォーム事業者に任せて、顧客にとって最も欲しい価値のあるデータを握ることで、半導体・部品メーカーでさえ、主導権を握れることをADIは示した。

ADIが用意するのは、センシング部分の赤外線LEDや受光センサ、温度センサに加え、ガスやにおい、旨みなどを検出するセンサもそろえた。このセンサ(図1)は近赤外線を利用した分光スペクトロスコピーを利用した化学センサである。Consumer Physics社の持つ「SCiO(サイオと発音)」技術を使い、物質を分析する。野菜や果物、肉などの食料の糖分、脂肪、タンパク質、アルコール濃度などに加え、薬品、鉱物などの成分を分析する。セミコンジャパンのIoTパビリオンでのSCiOの展示では黒山の人だかりだった。

ADIはConsumer Physics社とコラボして、彼らの持つ分光分析技術を1チップの赤外送受信機として開発し、それをスマホサイズに小型化した。分光分析データSCiOからクラウドへ飛ばし、クラウドで物質を分析しスマホにその結果を送る、という仕組みだ。物質のデータベースはクラウド上にあり、試料のスペクトルとデータベースを照合し検出データとする。ADIはこの超小型分光分析器にMEMSを使ったものかどうかを明らかにしていないが、セミコンポータルでは英国のベンチャーPyreosがMEMSを使った分光分析器を紹介している(参考資料1)。

このデモとは別に、ADIは工場で使われているモータの不具合をIoTセンサで検出するというデモも見せた。これは、機械的な回転軸の組み合わせの位置合わせミスを警告し、ベアリングが損傷していることなどを示す振動波形を見せた(図2)。


図2 モータの不具合を波形で確認する

図2 モータの不具合を波形で確認する


ADIには、もともと強いデータコンバータ技術やオペアンプなどのアナログ技術をセンサからの信号を受け処理する計測機能ICも豊富にある。AFE(アナログフロントエンド)アンプやコンパレータなどのICで心電計(ECG)を構成できる。またデータ変換用のマイコンやDSPも用意している上に、伝送機能はワイヤレス送受信回路専門メーカーHittite社の買収により可能になった。クラウド用のコンピューティングチップはIntelやARM、MIPSなどを利用すればよい。これらのデバイスを動かすためのパワーマネジメントもあるが、本格的なチップはLinear Technologyの買収によって手に入る。

実行と最適化は顧客が行う部分であり、ここにADIが関与しており、ニュージーランドのトマト農場にセンサ、ゲートウエアを導入し農家から理想のトマトを収穫するための理想の条件を聞き出し、それを実現した。農家のパートナーとなったのがADIだった。国内でも畜産農家からの引き合いが来ているという。


図3  ADIのIoT戦略ディレクタであるJason Lynch氏

図3  ADIのIoT戦略ディレクタであるJason Lynch氏


ADIは、IoTビジネスでは様々な企業とパートナーを組んでおり、クラウド解析とクラウドのプラットフォームを利用したアプリケーション作成やデータ解析ツールなどを持つPTC ThingWorxと組んでいる。さらに、例えば毎日の健康管理用の生体モニタリングでは、LifeQ社、アスリートのモニタリングではHexoskin社と組んでいる。こういったパートナーが欠かせないと、セミコンジャパンで講演したADIアイルランド工場のIoT戦略ディレクタであるJason Lynch氏(図3)は語っている。同氏はHittite Microwave社から来た無線通信の専門家であるが、IoT端末の送受信回路だけではなく、センサからパワーマネジメントまでアナログの知識は豊富だ。

参考資料
1. 手のひらサイズのIRスペクトロスコピー、MEMS技術のおかげ (2012/09/12)

(2017/01/11)

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