Semiconductor Portal

» セミコンポータルによる分析 » 市場分析

中国、「今のうちに半導体製造装置をせっせと購入しておこう」

世界の半導体生産能力は2024年も前年比6%で伸び、25年もさらに7%で伸びて、8インチウェーハ換算で月産3370万枚になる、という見込みをSEMIが発表した。特に中国市場の伸びが著しく、2025年には同15%増の885万枚と世界の1/3を占めるようになるという。

Total Semiconductor Capacity / SEMI

図1 世界の半導体生産能力の推移 出典:SEMI


中国の伸びは25年も続き、同14%増の月産1010万枚となる見込みだ(参考資料1)。この見積もりは、中国ファウンドリ企業のHuaHong Group、Nexchip、Sien Integrated、SMICとDRAMメーカーのCXMTの活発な投資による。

こういった見込みに対して、製造装置市場はさほど好景気の感触はない。それは中国向けの製造装置が売上額の半分近くも占めており、パソコンやスマートフォンなどの景気が回復したという感触がないためだ。SEMIが6月に発表した2024年第1四半期における世界の半導体製造装置市場は前年同期比2%減の264.2億ドルとなった(参考資料2)。わずかな減少にも拘わらず、中国向けが異常に多い。東京エレクトロンにせよ、Applied Materialsにせよ、中国の売上比率は2四半期連続40〜50%もある。逆にいえば、中国以外の地域で新しい製造装置を導入する需要がまだ少ないことを示している。


Semiconductor Equipment Billings by Region / SEMI

図2 2024年第1四半期における半導体製造装置の地域別市場 出典:SEMI


図2は2024年第1四半期における半導体製造装置の地域別の推移であるが、製造装置の中国市場は24年第1四半期、その前の23年第4四半期とほぼ同様な傾向で大きく伸びている。24年第1四半期における中国での売上額は前年同期比2.13倍の125.3億ドルと大きく伸びているが、逆に中国以外の地域では33.4%減の139億ドルにとどまっている。つまり、中国以外は大きく後退していることを示している。

この状況を整理してみると、現状でスマートフォンやパソコンなど半導体製品を大量に使う市場はほぼ横ばいであり、その市場は中国でも同様だ。つまり中国でスマホやパソコンが急激に伸びているわけではない。にも拘わらず、中国の半導体工場が大量に製造装置を求めるのは需要があるからではなく、政治的な思惑からだといえる。

中国は米国からの製造装置の輸出を制限されかねないため、今のうちに購入しておこうという姿勢である。中国においても半導体を急激に生産するほどの需要がまだない。一方製造装置を出荷する日米の半導体製造装置メーカーは今のうちに売っておこうという姿勢を続けている。政府がいつ中国向け装置の輸出を禁止するのか読めないからだ。

参考資料
1. "Global Semiconductor Fab Capacity Projected to Expad 6% in 2024 Aand 7% in 2025, SEMI Reports", SEMI Press Release, (2024/06/18)
2. "Q1 2024 Global Semiconductor Equipment Billings Edge Down 2% Year-over-Year, SEMI Reports," SEMI Press Release, (2024/06/05)

(2024/06/21)
ご意見・ご感想