Xilinx、プログラマブルSoCを今後のプラットフォームに
XilinxがプログラマブルSoC(CPUコアやメモリなどのコンピューティング回路と、FPGAを集積したシステムLSI)のロードマップを示した。FPGAメーカーのXilinxがあえて、SoCと呼ぶのは、FPGAだけで独自回路を構成するのには大きすぎ、かといってCPUソフトウエアだけで動作させるのは遅すぎる、といった新しい市場が見えてきたからだ。
図1 Xilinx社Worldwide Automotive Marketing and Product Planning, Kevin田中氏
その一つの製品が「Zynq」と呼ぶ製品シリーズである。さまざまなインターフェース、CPUコア/メモリ、FPGAファブリックを備えており、その28nm製品はすでに量産に入っている。応用の一つがクルマ用ADASシステムだ。Xilinxは自動車市場には2002年から参入しており、2015年末には累計で自動車市場に1億個以上出荷する見込みだ。FPGAを搭載したサラウンドビューモニターは米フォード社のF-150、カメラのビデオ処理チップはホンダのAcuraやCR-V、Legend、Odysseyなどに搭載されていると、同社ワールドワイドの自動車マーケティングおよび製品企画部門のケビン田中氏(図1)は言う。
Zynqの28nm製品では、CPUコアとして600MHzで動作するデュアルARM Cortex-A9コアを集積していたが、最新の16nmFINFETプロセスによるZynq Ultrascale+MPSoCでは(参考資料1)、1GHz動作のCortex-A53クワッドコアを集積している。これらはADASシステムには最適なチップであり、さまざまな機能安全レベルASIL-AからDにも対応していく。
ADASシステムでのロードマップとして、警告を発するだけのASIL Aレベルから、ドライバー支援のASIL-B, C、半自動運転のASIL-C, D、そして完全自動運転のASIL-Dへと進んで行っても、デュアルコアのARM Cortex-A9からクアッドコアのCortex-A53へと進む(図2)。さらにその先のARMコアについても議論を始めているとケビン田中氏は言う。
図2 ADASの高度化に合わせてプログラマブルSoCも高度 出典:Xilinx
高度な機能安全レベルや高度な機能の追加がこれから登場してきても、FPGA回路で対応する。CPUの性能・消費電力が向上していくことに対しても、次のARMコアを利用することで柔軟に素早く対応できるとする。ARMコアの最大のメリットはソフト開発、ツール開発、ファウンドリ、ハードウエア設計ツールなどのエコシステムが整っていること。いつでもARMのエコシステムを利用できることが次世代のSoC開発の強みになる。ARMコアをベースに次世代のFPGAファブリックも設計できる。
こういった視点から見ると、IntelがAlteraを2兆円で買収した意味は大きい。Intelが持つCPUやアプリケーションプロセッサと、Alteraの持つFPGAを組み合わせる解こそ、次世代のプログラマブルSoCのプラットフォームになる。Xilinxにとっては大きな脅威になるはず。これに対して、ケビン田中氏は、Xilinxの強みの一つはIntelのCPUコアではなく、ARMのエコシステムを利用できるCPUコアを使っていることだという。
ケビン田中氏は、FPGAファブリックを集積したこのプログラマブルSoCの売り上げ比率は伸びており、2020年度には50%以上を占めるだろうと見ている。
参考資料
1. 3世代同時進行のFPGA時代を切り拓くザイリンクス (2015/06/24)