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小型・低価格・低消費電力のFPGAが順調に成長

4月、Globalpress Connection主催のeuroasiaPRESS 2014がシリコンバレーで開かれた。ここ数年、小型・低価格FPGAにフィットする市場があり、伸びていることを報じてきた(参考資料1)。Lattice SemiconductorとSilegoは、低価格・低消費電力・小型化にこだわりながら、T2M(タイムツーマーケット)を最重要課題に掲げている。

図1 Latticeの持つ3種類の主力製品 iCE40(左)、MachXOS3(中央)、ECP5(右) 出典:Lattice Semiconductor

図1 Latticeの持つ3種類の主力製品 iCE40(左)、MachXOS3(中央)、ECP5(右) 出典:Lattice Semiconductor


Latticeは、スピードと俊敏さ(Speed & Agility)をモットーとして、数十セント級の小型のiCE40シリーズと、5〜15ドル級のECP5製品、その中間2〜5ドル級でI/O当たりの価格が最も低いMachXOS3製品シリーズに力を入れてきた(図1)。「1ドルにも満たないFPGA(iCE40など)は、億単位で販売する製品であり、FPGAのマクドナルドと考えてよい」と同社CEOのDarin Billerbeck氏(図2)は言う。


図2  Lattice社CEOのDarin Billerbeck氏

図2  Lattice社CEOのDarin Billerbeck氏


今回、Latticeが発表したFPGAは、高性能に最適化しながら小型化を維持するECP5製品。10mm×10mmの小さなプラスチックパッケージに200以上のI/Oピンを配置し、8万5000個のLUT(look up table)ロジックエレメントとSERDES(直並列変換)インターフェースを集積している。3.25Gbpsの高速インターフェースで消費電力は0.25W程度に収めている。高速インターフェースとして、LVDSやDDR3、PCI Express、Gigabit Ethernetなどに対応し、3.25Gbpsを確認している。

応用としては、スモールセルなどの携帯基地局用にデジタルフロントエンドASIC/ASSPのコンパニオンチップとして使う。通信用の独自インターフェースを設けたり、ベースバンドモデムやアナログフロントエンドのインターフェースなどをLUTなどで作り出したりすることで差別化できる。デジタルフロントエンドのASIC/ASSPには、DUC/DDC(digital up conversion / digital down conversion)や、パワーアンプに入力する波形を制限するCFR(Crest Factor Reduction)などの回路を内蔵しているため、ECP5にもそれらに対応する回路を集積している。

プロセスは40nmだが、28nmの他社製品と比べて小型にできるという。85kのLUTでは配線が簡単になり最適化できるためとしている。またDSPも集積しており、ビデオコーデックやイメージ信号処理プロセッシング機能を実現しやすい。チップサイズは7.0mm×6.6mmで、Cuピラーを形成したフリップチップで実装する(図3)。Diamondと呼ぶ開発ツールや、IP/リファレンス設計ツール、ハードウエア開発ボードを用意している。


図3 40nmプロセスでも小さなFPGA 出典:Lattice Semiconductor

図3 40nmプロセスでも小さなFPGA 出典:Lattice Semiconductor


構成可変のミクストシグナル製品
もう1社のSilegoは、これまでディスクリートや標準ロジックなどの部品を置き換えるビジネスを行ってきた。「今は第2フェーズに入った」と同社マーケティング担当VPのJohn McDonald氏(図4の左)は述べる。特に同社が力を入れてきたミクストシグナルアレイのGreenPAKシリーズをCMIC(Configurable Mixed-signal IC:シーミックと発音)と名付け、機能を作り直すことのできる製品と位置付けた。


図4 Silego社マーケティングVPのJohn McDonald氏(左)とマーケティングディレクタのNathan John氏

図4 Silego社マーケティングVPのJohn McDonald氏(左)とマーケティングディレクタのNathan John氏


図5では、プログラマブルな半導体製品を集積度の高い順にFPGA、マイコン、CMICと示した。FPGAはハードウエアをプログラムで変えるのに対して、マイコンはソフトウエアをプログラムすることで変えるデバイスであり、CMICはマイコンよりも簡単にハードで機能を自由に変えられるデバイスと位置付けている。


図5 Silegoの製品はマイコンよりも簡単にプログラムできる 出典:Silego

図5 Silegoの製品はマイコンよりも簡単にプログラムできる 出典:Silego


GreenPAKは、不揮発性メモリを基本とするプログラマブルなミクストシグナルICで、開発ツールに習熟すると、ほんの数分でプログラム構成できるという。4ビットあるいは8ビットのマイコンやグルーロジック、レベルシフター、リセット信号、電圧モニターなどの機能を1チップに搭載する。マイコンの制御機能はステートマシンで実現する。もちろん、従来のディスクリートや標準ロジックの集積化も可能である。最小のICはGreenPAK3(SLG46110V)で、ICパッケージは1.6mm×1.6mm×0.55mm(厚)の12ピンSTQFNタイプである。

このICにはアナログ部品、デジタルロジック、プログラマブルな配線、フレキシブルなI/O、発振器、不揮発性メモリが集積されている。これほど小さなプログラマブルデバイスは存在しないという。不揮発性メモリには低コストにするためOTP(One time program)を採用している。単価は、100万個購入時で12セント(12円)と安い。

これほどまでに小さな部品が必要とされる分野は、ウェアラブル端末やスマートフォンなど、小型化の要求が厳しいところである。機能として、リセット制御や電源のシーケンス、バッテリモニター、ウォッチドッグタイマー、タイミング信号発生器などがある。設計ツールGPAK Designerソフトと汎用開発ボードを用意している。


図6 CMICの売り上げはここ1〜2年急増している 出典:Silego

図6 CMICの売り上げはここ1〜2年急増している 出典:Silego


このGPAKファミリは4年前に最初の製品を出荷して以来、累計で10億個出荷を記録したという。特に、2013年の出荷数は4億2000万個と急増、売り上げも伸びた(図6)。中国での監視カメラ用とモバイルタブレット用に売れたとしている。0.18µmCMOSプロセスで設計、製造はファウンドリに依頼している。

参考資料
1. 新しい市場開拓が可能になったFPGA業界、チャンスと脅威が共存(2) (2010/05/19)

(2014/05/08)

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