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新しい市場開拓が可能になったFPGA業界、チャンスと脅威が併存(2)

FPGAビジネスが変貌してきている。前回、米ザイリンクスとアルテラという2強の動きを紹介したが、今回はローエンド市場に新しい応用が出てきているのを見ていく。実はここが新しい市場になっている。

ラティスのショーン・ライリー氏(右)とマーケティング担当VPのダグ・ハンター氏

ラティスのショーン・ライリー氏(右)とマーケティング担当VPのダグ・ハンター氏


しかし、ゲート規模が1万以下の小さな規模でもFPGAとして使える応用が出てきた。しかもブレッドボード代わりではない。そのまま応用製品に使えるチップである。例えば、いわゆるグルーロジックや受動部品をまとめるという応用がある。これまではLSIの集積度を上げても、受動部品やグルーロジックなどが残り、これらが意外と大きな実装面積を占めてきた。受動部品そのものは小さいが実装した面積はそれほど小さくなっていないことが多い。例えば抵抗やコンデンサを20個実装した基板は数cm平方に及ぶことがある。せっかく1608や0804といった超小型の部品を使っても実装面積が小さくならなければ何にもならない。これをわずか1〜2mm角の大きさの半導体FPGAチップで置き換えることができる。ラティスセミコンダクタや、シレゴテクノロジ(Silego Technology)はここに大きな市場があると見ている。

2010年の第1四半期におけるラティスの売り上げは、2009年第4四半期の業績よりも28%増の7040万ドルになり、純利益は1110万ドルとなった。この売上高は、2008年のレベル(6000万ドル)よりも高い。これは同社の製品戦略をハイエンドからローエンドまで幅広く手掛けていたものをミッドレンジないしローエンドに集中することに変えてきたことが奏功した。「不況でユーザーがローコストを追求してローコスト・ローエンド商品を求めてきたために、われわれは成長した」と同社高密度ソリューション担当のVP兼ジェネラルマネジャーのショーン・ライリー氏は言う。


ラティスはもはや不況前の売り上げを超えた

ラティスはもはや不況前の売り上げを超えた


ラティスはフラッシュメモリーを内蔵し、LUT(ルックアップテーブル)を基本単位とするFPGAメーカーだ。無線および有線の通信インフラや、セキュリティと監視システムのような産業用にはミッドレンジの製品を提供する。携帯機器や液晶テレビなど民生機器の簡単な調整を行うための製品と、グルーロジックや受動部品をまとめるための製品をローエンド市場に向けている。LUT数でいえば1万以下のロジックをローエンドと定義している。フラッシュメモリーは例えば電子機器の電源をオンしたら即、立ち上がるように必要なシーケンスや命令などを格納しておくために使う。

例えば、液晶テレビやデジタルカメラの応用では基本的な画像処理ではなく、機能を追加したり変えたりするような周辺回路にFPGAを使う。色補正やスクリーンサイズの比率などの変更に低コストで使えばそれほど大きなゲート数は要らず、むしろLUTをベースにしているため簡単にプログラミングできる。開発ツールは高級言語やプログラミング言語は要らない。簡単なGUIインターフェースを使って、画面を見ながら回路を設計するため、低コストでちょっとした回路の変更ができるという応用を狙う。例えば4000ZEシリーズの製品だと、待機時電流が10μAと低く、動作電圧は1.6Vと低い電圧でも動作するため消費電力を下げることができるため携帯機器に向く。


ICのサイズがわずか4mm角の64ボールのBGA 4000ZE

ICのサイズがわずか4mm角の64ボールのBGA 4000ZE


加えて、電源用IC、すなわちパワーマネジメントIC(PMICともいう)もプログラム可能で、一般的なアナログのDC-DCコンバータをデジタル制御するためのPMICシリーズ、Power Manger IIもある。例えば製品686は0.72Vから動作し、605は多数の電源レールをモニターする。インテルのプロセッサチップのように、例えば1.0から1.2Vまで0.01Vずつ細かく電圧を上げ下げするような応用に向く。またSoCのような大きなシステムチップでは複数の電源を使うが、これらの電源レールをモニターするのにも使える。

ラティスはミッドレンジからローエンドまでカバーしながらもローエンドに今後フォーカスするという。これに対して、シレゴ(Silego)社はローエンドだけ徹底的にフォーカスする、2001年設立の新興FPGAメーカーだ。シレゴは、シリコンと子供のおもちゃであるレゴを組み合わせたSi+Legoから会社名を付けたように、レゴブロックのように組み立てて設計できるようなロジック製品を持つ。クロック制御ICで実績のある同社だが、OTP(One-time programmable)ROMベースのFPGAシリーズであるGreenPak製品に加え、メタルマスクでプログラムするGreenSak製品を最近リリースした。GreenPakがPROMベースなのに対して、GreenSakはマスクROMベースという訳だ。


GreenPakの回路ブロック

GreenPakの回路ブロック


共にミクストシグナルのゲート数の少ないFPGAで、グルーロジックやレベルシフタ、電源リセットなどのいわゆるその他の回路をクリーンアップするのに使う。10数個のICや受動部品をきれいに片づけて1チップにまとめてしまおう、という応用である。プリント基板回路を見ると、小さなICや受動部品が固まっている面積は案外、ばかにならない。これらをわずか2mm角のチップでまとめてしまえば機器の小型化が図れる。「8個のレジスタを使いたいというような用途がよくあり、ここに市場がある」と同社セールス・マーケティング担当VPのジョン・マクドナルド氏(John McDonald)は言う。

GreenPak/Sakシリーズは、ともに高級プログラミング言語は要らない上、スクリーンを見ながら部品を並べて回路を構成していける『レゴ』方式のGUIインターフェースになっている。このため、設計が簡単だ。回路の部品情報、接続情報を完成させたら、シレゴに手渡せば、メタルマスクのGreen/Sakでさえ、4週間でシリコンが出てくるという。

こういった簡単な設計回路方式は、8ビットのアナログ回路混載のマイクロコントローラであるサイプレス社のpSoC製品と同じだ。実は、ジョン・マクドナルド氏の前歴は、サイプレスにもサイタイム(SiTime)にもいたという。サイタイムのMEMSによるクロック制御ICもシレゴの競合製品だ。


部品をライブラリからドラッグし結線すると回路を設計できるツール

部品をライブラリからドラッグし結線すると回路を設計できるツール


共にコンペティタ製品は8ビットあるいは16ビットのマイコンだろうが、「マイコンはコントローラ機能に重点が置かれ、性能が限られている」とラティスのショーン・ライリー氏は述べる。「ハードウエア回路中心のFPGAの方が性能は出しやすい。しかもマイコンはC言語などでコードを書きアセンブリする必要がある」としている。

(2010/05/19)

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