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スマホ向けモバイル(+IP)放送受信用チップをイスラエルのファブレスが発売

イスラエルの放送受信用チップを設計しているファブレスのSiano Mobile Silicon社が4月1日から日本国内で始まったスマートフォン向けのテレビ放送、「NOTTV」に向けた受信チップを日本市場に向けて発売する。電話インタビューを通し、同社マーケティング担当VPのRonen Jashek氏にその勝算を聞いた。

図1 新モバイルテレビ向けチューナチップ 出典:Siano Mobile Silicon

図1 新モバイルテレビ向けチューナチップ 出典:Siano Mobile Silicon


NOTTV は、NTTドコモと民放各社が共同出資して設立したmmbi社が始めるスマホ向け有料テレビ放送。これまでのワンセグは従来のテレビ放送を携帯電話でも楽しめるだけの1方向のサービスにすぎなかった。NOTTVは、ワンセグと違いISDB-Tmmというスマホ向けのマルチメディア放送規格を利用する。画質は約10倍の解像度(720×480画素)になる。この放送では、単なるプッシュ放送だけではなく、タイムシフト機能や情報発信機能もある。タイムシフトは、予め登録しておけば自分のスマホにコンテンツを自動的にダウンロードし、あとでじっくり視聴するというもの。このためリアルタイム放送に加えIPパケット機能も持つ。加えて、同じ放送を見ている仲間とツイッターやフェースブックなどSNSも楽しめる。

Sianoが狙うのは、NOTTVチューナ用のIC、SMS3230であり、同社はこれを5月に発売する。まだ日本にオフィスを持っていないが、5月中には設立する計画だ。新会社mmbiに出資しているキャリヤはNTTドコモのみであるため、Siano社のユーザーは、ドコモにスマホを納める携帯電話機メーカーである。出資企業であるシャープや富士通、NEC、パナソニックなどの国内携帯電話機メーカーに加え、サムスン、LGなど海外のスマホメーカーもその潜在顧客になる。Jashek氏は、スマホだけではなくタブレットのメーカーも対象となると見ており、日本でのセールス活動を開始する。

SMS3230は、シングルチップのISDB-Tmm規格の受信ICであり、従来のフルセグ仕様(ISDB-TのHDTV)、ワンセグ受信回路も集積している。加えて、モバイルプロセッサとやり取りできるように汎用のSPI/I2Cなどのシリアルインターフェースも集積している。RFからベースバンド回路まで含む1チップチューナICの消費電力は140mW以下と、競合チップの170mWよりも小さい。加えて、チップオンボード設計が可能なように薄型のLGAパッケージ(4mm×4mm)に収容している。

こういった受信チップの設計にはSDR(ソフトウエア無線)技術は使っていない。シリコンの面積や性能を最適化するためにはやはりハードウエアで設計しておく必要があるからだ。これがSiano社の大きなメリットになっているとJashek氏は述べる。

リファレンスデザインも当然作成するが、サードパーティの設計会社とパートナーシップを組み、そこから販売していくことになる。

日本オフィスを置くのは実は、これが2回目だという。最初は、製品リリースと整合性がとれていなかったため、セールス活動をうまくマネージできなかったという。今回は、製品発表とリンクできたので、成功するとJashek氏は期待している。


参考資料
1. ソフトを変えるだけで世界各地のTVを受信できるICを100カ国に販売へ (2011/08/10)

(2012/04/03)

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