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ルネサス、集積化などSiP技術を生かしたパワーMOSFETの差別化戦略を発表

ルネサスエレクトロニクスが新しい体制でのパワーデバイスの取り組みについて、記者会見を開き、明らかにした。それによると、2012年度までの中期計画では2009年に対して1.6倍の売り上げ目標を立て、2010〜2012年度の平均年率成長率CAGRは10%という強気の計画となっている。そのけん引力はパワーデバイスの集積化である。

図1 2012年度に向けたルネサスのパワーデバイス計画

図1 2012年度に向けたルネサスのパワーデバイス計画


同社が現在持っているパワーデバイスには大きく分けて4種類ある。耐圧が150V未満の低圧パワーMOSFET、それ以上の高圧パワーMOSFET、IGBT、トライアックなどである。そして、2012年度までの計画の中で最も大きな成長を見込んでいるのは低圧パワーMOSFET部門だ。

低圧パワーMOSFET分野は、一般にコモディティ化しており、価格競争に陥っている。このため、インターシルのように撤退した企業もある。コモディティ市場にいるよりももっと付加価値の高い市場へシフトしたためである(関連資料1)。ルネサスはどのようにして価値を高めていくか。

ルネサスの強みは、パワートランジスタだけではなく、さまざまな製品を持っていることだ。この強みを生かし、MOSFETを駆動するためのプリドライバ回路を内蔵したICのDrMOSや、プリドライバとPWM(パルス幅変調)回路を内蔵したICのPOL-SiPなど、ディスクリートのMOSFETからMOSFET ICへと集積化を進めていく。ここにはSiP技術をフル活用する。ユーザーは高いパワーの入力を入れなくてもMOSFETをドライブできるため回路が簡単になり、プリント板への実装コストを抑えられる。


図2 ドライバ内蔵、PWM内蔵など複合ICで差別化 出典:ルネサスエレクトロニクス

図2 ドライバ内蔵、PWM内蔵など複合ICで差別化 出典:ルネサスエレクトロニクス


もちろん、全ての低圧パワーMOSFETが集積化だけではない。コモディティ化製品も半分程度ある。ではどのようにして差別化するか。同社アナログ&パワー事業本部パワーデバイス事業部長の青木勉氏は、ディスクリートの低圧パワーMOSFETはボリュームゾーンに使われるため、ルネサスのプロセスの強みを生かすという。すなわち、小さなチップ面積で大きな電流をとれる、あるいはオン抵抗が小さいというプロセスを持っているため、同じ面積なら小さなオン抵抗、同じオン抵抗なら小さな面積という特長こそがルネサスの特長であるため、競争力があると見ている。また、パワーMOSFETのコスト構造は前工程と後工程がほぼ半分ずつであるため、後工程の海外生産能力を上げていくことで競争力を上げるとしている。マレーシアに2カ所ある自社の海外工場と、中国のサブコントラクタの生産能力を上げていくとする。

加えて、技術的にも0.35μmから0.25μmのトレンチ構造プロセスを推進、オン抵抗のさらなる削減や微細化による容量の削減を進める。パッケージングでは、放熱板をチップの下両面に設ける新パッケージや、Alの太線ボンディング、Cu板接続、Cuワイヤーボンディングなどのパッケージ開発も進める。

他の製品でも600Vなどの高圧パワーMOSFETでは200kHzで96%効率や高速ダイオードの内蔵を進め、IGBTでは8インチSiウェーハを60〜70μmの薄型化による損失削減を実現する。またIGBTにダイオードを1パッケージに内蔵した製品なども開発中である。将来のGaNやSiCにも取り組み、SiCダイオードを2011年度上半期にサンプル出荷し、GaNの高周波パワーデバイスも11年度下半期に商品化する計画だ。


関連資料
1) 「危機はチャンスでもある」を実践するインターシル、2年で6社を買収 (2010/06/2)

(2010/09/29)

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