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帯域幅を上げながら消費電力を下げるシリアルメモリーの新手法

シリアルメモリーといえば、I/O端子数を減らし、遅いアクセスの安物メモリーという印象を持つ読者は多いだろう。ところが、シリアルメモリー方式が帯域幅を上げながら消費電力を下げられる手法として、新たなモデルチェンジを行っている。このほどSPMTコンソシアムの会長が来日し、その新手法について語った。

写真 SPMTコンソシアム会長のJames Venable氏

写真 SPMTコンソシアム会長のJames Venable氏


SPMT(Serial Port Memory Technology)コンソシアムのメンバーは昨年の8月時点では、サムスン電子、ハイニックス、LG電子、シリコンイメージにARMが加わったが、今回はさらにアプリケーションプロセッサのマーベルも参加した。

今、SPMTが推進するシリアルポート技術は、DRAMメモリーの入出力を単純なシリアル形式にするのではなく、速度と消費電力の両方をにらみながら、シリアルI/OとパラレルI/Oを切り替えられるスイッチを設けたSerialSwitchと呼ぶ新しい方式だ。HD動画や3Dゲーム、3Dテレビなど高帯域を必要とする携帯機器がこれから伸びてくると見られており、「2012年には携帯機器でさえも12.8GB/sのデータレートが必要となると、業界の認識が変わった」とSPMT会長のJames Venable氏は言う。

12.8GB/sを従来のパラレル方式で転送するためにバンド幅を広げるとなると、クロック周波数を上げるか並列性を上げるかになるが、いずれも消費電力が大きくなってしまう。このため、ある程度、バンド幅が大きくなると、DDR2 DRAMメモリーのアクセスをシリアルに切り替えて消費電力を自動的に下げてしまう、という技術がSPMTである。


図1 SPMTはPLLを内蔵している分、小さなバンド幅では消費電力が大きい

図1 SPMTはPLLを内蔵している分、小さなバンド幅では消費電力が大きい


SerialSwitch内蔵のデュアルモードだと、バンド幅が1.6GB/s(入力クロックが400MHz、16ビット並列の場合)以下では通常のLP DDR2(低消費電力ダブルデータレート2)モードで動作し、それ以上のバンド幅が要求される場合にはシリアルモードで動作する。シリアルモードでは4倍の6.4GB/sで動作し、しかも0.1Vの差動信号でデータを出力する。LP DDR2からシリアルモードへの切り替えは、MRW(mode register write)コマンドを動作させることで、内蔵のPLLとCDR(clock data recovery)回路がイネーブル状態に移り、シリアルモードへ移る。その間最大10μsで、クロックサイクルは10クロック以内。


図2 DDR2モードからシリアルモードへの切り替え動作

図2 DDR2モードからシリアルモードへの切り替え動作


このシリアルモードを搭載するDRAMのピン配置は、LP DDR2パッケージと完全互換であり、ユーザーは単純に置き換えるだけですむ。SPMTコンソシアムには韓国の2大メーカーが入っているが、エルピーダとマイクロンはまだ参加していない。特に、このメモリーは携帯機器向けなので、ビデオや映像コンテンツを見るための携帯機器にはこのメモリーは必須になる。DRAMメーカーは従来のパラレルI/Oに加え、シリアルI/Oと、PLLなどの周辺回路を載せる必要がある。マイクロンはコンピュータ用のDRAMがほとんどなのでよしとしても、ハイニックスの15〜18%よりも多い割合でモバイル用DRAMを生産しているエルピーダの態度が注目される。

一方、こういったシリアルメモリーを利用するシステムLSI側は、メモリーコントローラ回路を少し変え、1.2VのDDR2信号と0.1Vの差動信号をやり取りできる回路を設ける必要がある。コンソシアムには、システムLSIメーカーとしてマーベルとサムスン、電子機器メーカーとしてLG電子とサムスン、メモリーメーカーとしてハイニックスとサムスン、IPベンダーとしてARMとシリコンイメージが参加しており、DRAMを設計し作り使いSoCを設計するというエコシステムが出来つつある。さらなる参加を呼び掛けている。

(2010/06/22)

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