ドメインコントローラをTIがEV向けに提案
EV向けのドメインコントローラのコンセプト(図1)をTexas Instrumentsが明らかにした。EVには動力となるモータを駆動するインバータだけではなく、DC-DCコンバータ、オンボードチャージャー(OBC)、バッテリ管理システム(BMS)も欠かせない。これらの機能ごとにECUを作るのではなく、ECUをいくつかまとめてドメインとするという考え方だ。
図1 EVに必要な動力回路と電源をまとめるドメインコントローラ 出典: Texas Instruments
インバータでは、120度ずつ、360度のスムーズな回転を実現するために3相モータを使うが、そのためにはパワートランジスタが3組(6個)必要となる。IGBTやSiC MOSFETなどのパワートランジスタのゲートを駆動するためのドライバIC、さらには正しい順番にトランジスタを動作させるための制御用マイコンも必要となる。クルマそのものを動かす大出力のモータを駆動するため熱管理の問題もある。
DC-DCコンバータは、4V程度のリチウムイオン電池セルを多数、直並列に接続して大容量のバッテリパックを組むわけだが、電圧は300V〜400Vに高める。この電源をパワートレインだけではなく、ADASやコックピットでも使えるようにするため、電圧を変換するDC-DCコンバータで、3.3Vや5V、12Vなどを作り出す必要がある。
オンボードチャージャー回路は、EVにブレーキをかける時に、モータを動力から切り離すと同時に、惰性で回転しているモータは発電機に切り替わるため、ここから発電される電気を利用してバッテリを充電する。発電することによってモータの回転が失われ、ブレーキとなる。電気の無駄を減らせるため回生ブレーキと言われている。ただし、発電される電力は交流だから、バッテリに充電するためには直流に変換しなければならない。オンボードチャージャーはAC-DC変換器を搭載している。加えて、ACからDCに変換する場合に重要な力率を改善するための回路も必要となる。
バッテリマネジメントシステムは、4V程度のリチウムイオンセルを直並列に大量に並べたバッテリモジュールにおいて、セル1本ずつの充電バラツキを減らすためのテクノロジーである(参考資料1)。
EVに欠かせないこれらの技術はそれぞれECUを作って構成していたが、まとめてしまおうという考えがドメインコントローラだ。個別にECUを作らなくて済むため、各作業のコストを考慮して最大50%のコストダウンを図れるとTIは見ている。バッテリマネジメントシステムは、バッテリのそばに配置するため1カ所にまとめづらいが、それ以外の機能は一つにまとめられると見ており、すでに3-in-1(図2)を開発中だ。
図2 3つの機能をまとめた3-in-1のコンセプト 出典:Texas Instruments
TIはマイコンC2000を、DC-DCコンバータとオンボードチャージャー、インバータを制御するドメインコントローラの中核と位置付けている。モータ制御のアルゴリズムはインバータからドメインコントローラに移すことができる。また、オンボードチャージャーやDC-DCコンバータの閉ループコントロールアルゴリズムをドメインコントローラに移すことによって、一つのC2000でこの中の制御を一手に担う。
参考資料
1. TI、ワイヤレスバッテリモニターチップセットでEVの軽量化を図る (2021/01/26)