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TI、ワイヤレスバッテリモニターチップセットでEVの軽量化を図る

Texas Instrumentsは車載グレード(ASIL D)のバッテリマネジメントシステムを開発、そのチップセットを発表した。このチップセットは、バッテリの充放電状態をモニターしながらその情報をローカルマイコンに送り、さらにホストマイコンにワイヤレスで送るというシステムを構成する(図1)。ワイヤーをできる限り排除した構成になっており、EVを軽量化できる。

図1 バッテリモニターシステム+マイコンボードからワイヤレスでホストにデータを送る ここでは96個のセルを個別にモニターしている例 出典:Texas Instruments

図1 バッテリモニターシステム+マイコンボードからワイヤレスでホストにデータを送る ここでは96個のセルを個別にモニターしている例 出典:Texas Instruments


バッテリマネジメントシステムは、走行距離を伸ばし、過充電を避けるためにEV(電気自動車)に必要な技術である。しかし、配線を担うワイヤーが重ければクルマの重量が増えてしまう。このためできる限りワイヤレスにしようというTIの提案が今回のチップセットだ。EVでは、出力4.1Vのリチウムイオンセルを直列・並列にずらりと接続し、バッテリ全体の電圧を300〜350Vまで上げて使う。電流は可能な限り小さくしたい。というのは電流を十分上げると配線を太くしなければならないからだ。配線が太いと重量がかさむ。

EVではセルを直列に並べて高電圧にしたセルを一つのモジュールとして、そのモジュールを複数個並べて必要な電流を得る。十分な電力を蓄えてモーターを回す。このため、バッテリパックにはモジュールがずらりと並んでいる。もちろん、EVだけではなく、ハイブリッドカーや回生ブレーキを備えたマイルドハイブリッドカーにも応用できる。

バッテリモニターは、直列に接続されたセル1個1個の充電状態を監視するために欠かせない。セル同士にはバラつきがあるため、一つのセルが間もなく満充電に達しようとしていても他のセルはまだその状態には至らないことがある。そこで、速く充電するセルが遅いセルを待つというような方式などを使って、全てのセルの充電をバランスよく統一して満充電に持っていく。

TIの開発したチップセットは、複数個のバッテリモニターとバランサーを集積したモニターチップBQ79616-Q1ファミリーと、Arm Cortex-M4コアを集積したマイコンCC2662R-Q1からなる。このマイコンCC2662R-Q1からホストのマイコンへワイヤレスでデータを送信するというもの。

このチップセットの最大の特長は、スケーラビリティとフレキシビリティで、電池セルの数が12個、14個、16個に対応しており、かつ過電圧、加熱に対応する温度測定ができることだ。これまで直列接続したセル数は最大12個の製品が多かったが、このBQ79616-Q1は、最大16個までのセルを個別にモニターできる(図2)。例えば300V以上に上げるとすると16個直列で最大64Vになるため、このモニターICは5個程度必要となる。


図2 バッテリモニターチップの使用例 ここでは2個表示したが320Vには5個必要となる 出典:Texas Instruments

図2 バッテリモニターチップの使用例 ここでは2個表示したが320Vには5個必要となる 出典:Texas Instruments


モニターICを1個搭載した1枚のボード(ノード)に配置し、各ボードで16個のセルを受け持ち、そのボードを5枚配置したものを一つのモジュールとすると、さらにそのモジュールを6〜8個接続する訳だが、接続配線が大量になる。このため少しでも接続配線を減らすため、TIはノードからメインマイコンへの接続に2.4GHzで周波数ホッピング技術によるワイヤレス通信を用いた。

バッテリモニターでは、個々のセルの電圧を正確に測らなければならないため、TIは測定精度を最適化するため、デジタルローパスフィルタと高精度のA-Dコンバータを集積、誤差2mV未満の測定精度を実現したという。このようにしてセル全体のバランスを図ることで、ホットスポットを生じにくくしたが、さらに温度測定も行い過電流、過熱に備えた。また、独自の通信プロトコルを用いてマイコンとのワイヤレス通信をスムーズにした。このシステムだと、100〜800Vのバッテリシステムにも対応できるとしている。

バッテリモニターからの信号をワイヤーで受け、そのデータをワイヤレスでホストマイコンへ送る。図2で示したBQ7961xシリーズのバッテリモニター&バランシングICは2個しかないが、これが多数並べられており高電圧のバッテリ系から12V系の低電圧のマイコンボードに直流的には絶縁されて接続されている。図2ではマイコン(MCU)はCANバス経由になっているが、ここにワイヤレスでデータを飛ばしてホストマイコンへ届ける。このワイヤレスマイコンCC2662R-Q1のボードも複数個あり、図1のようにホストマイコンがバッテリ全体を管理する。

TIはバッテリモニターICの評価ボード「BQ79616-Q1EVM」も提供しており(参考資料1)、399ドルで入手可能となっている。16チャンネルの製品はすでに販売されているが、12および14チャンネルの製品も第1四半期に供給する見込みである。

参考資料
1. BQ79616EVM-021

(2021/01/26)

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