セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

SanDisk、書込みレイテンシ15µsと高速のフラッシュストレージを出荷へ

書込みレイテンシが15µs、とストレージ装置としては3ケタ高速のフラッシュストレージ製品(図1)をSanDiskが6月1日から出荷する。これまでの10〜20msというSSDと100nsというDRAMメモリとの間(メモリギャップ)を埋めることができる上、ストレージそのものの速度を底上げすることになりそうだ。

図1 高速のフラッシュストレージ製品「Fusion ioMemory SX350」 出典:SanDisk

図1 高速のフラッシュストレージ製品「Fusion ioMemory SX350」 出典:SanDisk


SanDiskの新製品「Fusion ioMemory SX350」は、データの通信インタフェースが、大容量ストレージのRAIDシステムに使われるSASやSATAではなく、PCI Expressである。HDDよりも少し速いだけのSSD(固体ディスク)では実現できない高速の新しいストレージ用途を狙う。しかもボードだから、フォームファクターも小さい。

SSDはHDDとの互換性を保つために、ネジの位置やインタフェースも同じにしている。このためにサーバー設計者はHDDをSSDに置き換えるだけでストレージを固体化できた。しかし、フラッシュの性能は犠牲にしていた。SSDは速くても10ms止まりであった。このためDRAMメモリとの速度差は10万倍もあった(図2)。

フラッシュストレージは、SSDのような縛りはなく、フラッシュメモリをDRAMのような実装でストレージとして使う。DRAMのようにDMA(ダイレクトメモリアクセス:CPUを介さずにデータを外部と直接やり取りする機能)機能も持つ。このため、高速化が可能で、書込みレイテンシが15µs、とDRAMとの差は100倍程度に縮まった。フラッシュストレージは、SSDではないシステムのメモリアーキテクチャを変えてしまう可能性を秘めている(参考資料1)。つまり従来のストレージをすべて置き換えると、ストレージの速度が3ケタも高速になる。MRAMやSTRAM、FeRAMなどの不揮発性RAMの市場をさらに小さくする可能性もある。


図2 フラッシュストレージはSSDよりも100倍程度速い 出典:Sandisk

図2 フラッシュストレージはSSDよりも100倍程度速い 出典:Sandisk


サーバーやデータセンターのストレージ用途を狙い、さらには金融市場にも参入可能になる。AmazonやYahooなどデータセンターを持つ企業はeコマースにも力を入れているため、高速のストレージを強く求めている。アプリケーションの遅延がビジネスに及ぼす影響は大きくなってきている。例えば、Amazonは100msの遅延当たり売上額の1%に影響し、TABB Groupは株取引のプラットフォームが5ms遅延すると、1ms当たり数百万ドルの損失が発生すると見積もっている。Googleは検索結果の表示が0.5秒遅延するとトラフィックが20%減少すると見ているという。

SanDiskは、これまでフラッシュカードやSSDなどで実績を上げてきたが、フラッシュストレージの専門企業、Fusion-io社を2014年7月に買収した。Fusion-io社は2011年に第2世代のフラッシュストレージ製品「ioDrive 2」を発売、ロングセラーを続けてきたが、NANDフラッシュメモリとしてはIntelやSamsung、Micronなどのマルチベンダー製品を使ってきた。今回、東芝の四日市工場にあるSanDiskの工場ラインで生産したNANDフラッシュチップを使った。1y nm(17〜15nm)のプロセスでMLC(multi-level cell)技術を使っている。

第3世代のフラッシュストレージ新製品である「Fusion ioMemory SX350」は、前世代の製品「ioDrive 2」と比べ、GB当たりの価格が最大61%削減している。性能だけではない。使用可能な容量も大きく、1250GB、1600GB、3200GB、6400GBの4種類揃えている。

企業用途では、性能や容量に加えて、高信頼性も要求される。ビットエラー率UBER(Uncorrectable Bit Error Rate)は、従来のSSDが10の-16〜-17乗だったのに対して、この製品は10の-20乗と低い(図3)。誤り訂正技術として、従来のBCH(Bose-Chaudhuri-Hocquengham)コードに替えて、LDPC(Low-density parity-check)コードを使った。


図3 ビットエラー率も格段に低く、信頼性を確保している 出典:SanDisk

図3 ビットエラー率も格段に低く、信頼性を確保している 出典:SanDisk


システムとしての投資コストはRAIDと比べるとむしろ安くなるという。RAIDでは、性能を上げるためにディスク容量を必要以上に大きくしてきた。しかし、実際に必要な容量よりも多すぎた例もある。例えば、40TBのシステムを組んでいても実際に使っている容量はわずか38GBだったというRAIDシステムがあったとしている。Fusion ioMemory SX350だと、高速であるため実際に必要な容量が適切であるため、ストレージの設計が単純になり、膨大な数のストレージを並べる必要がないという。この結果、インフラ全体の簡素化とTCO(total cost of ownership)を削減できる。

参考資料
1. SSDより速いフラッシュストレージをViolin Memoryが出荷 (2015/03/19)

(2015/5/12)

月別アーカイブ