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フリースケール、次世代安全システムを実装、Super GTレースでテスト

フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンが市販車のカーレース、Super GTに参戦する。ADAS(Advanced Driver Assist System:次世代ドライバー支援システム)を実際のレースでテストしてみるのがその目的だ。速度やエンジン回転数などの車両情報、クルマの前後左右の周辺情報、そしてドライバーの生体情報を、同期をとりながら取得していく。

図1 Super GTレースで実験データをとる 車種は日産自動車のGT-R

図1 Super GTレースで実験データをとる 車種は日産自動車のGT-R


フリースケールジャパンはレーシングチーム「OGT! Racing」のメインスポンサであり、2012年12月にカーレース「ポルシェカレラカップジャパン」に参戦した時は、ドライバーの体にさまざまなセンサを貼り付け、汗、心拍数、体温などの基礎データを測定した(参考資料1)。カーレースはスピードを競うため、データをリアルタイムで得ることが難しく、この時は車の状態を同時に測定できなかった。

今回、7月27~28日に宮城県で開催される、Super GTの第4戦「SUGO GT 300km Race」において、ADASの実装実験を行う。ここでは、クルマのスピードやエンジン回転数、ハンドル舵角、車両の傾きなどのデータを取得し、ドライバーの発汗や心電位、筋電位などの身体情報と連動させる。さらに走行中の車両の周辺情報をとるため、前後左右4台のサラウンドビューカメラやレーダーなども使い画像合成技術やセンシング技術を駆使する。具体的には、クルマのデータとドライバーの健康データ、そして動画データと、すべてのデータとの同期をとって、全データを車外へ送信する。車内での情報のやり取りにはEthernetを利用し、車外への通信にはLTEネットワークを使う。


図2 クルマ情報、生体情報などを取得する機器を助手席、後部に搭載

図2 クルマ情報、生体情報などを取得する機器を助手席、後部に搭載


車間距離、レーンキーピングアシスト、死角での衝突防止など、従来からの応用に加え、サラウンドビューカメラ画像を合成して無線で飛ばすことでドライバーと同じ体験ができる。画像はMotion JPEGで圧縮する。カメラ映像の合成と圧縮はフリースケールのチップで行う。そのためのアルゴリズムを開発している。

車間距離を保つため、前方の車との距離を測定する77GHzのミリ波レーダーを搭載するが、レース中では衝突防止というよりも、レーダーがしっかり機能するのか、壊れやすいかどうか、などのテストに重点を置く。衝突防止レーダーは通常、前方の車に近づくと自動的にブレーキを掛けるシステムである。しかし、レースでは前方車を抜くことができなくなってしまうため、ブレーキを利かせるのではなく、近づくことを検出することにとどめる。また、レーダーは路面上に漏れたオイルを検出するのにも使えると、ドライバーのイゴール・シュスコ氏はいう。レース場でオイルが漏れるとハンドルやブレーキが利かなくなり危険な状態になる。さらに、一般道路の水たまりの深さの検出にも使えるとしている。

TPMS(タイヤ圧監視システム)を搭載したタイヤを使い、その中に温度センサも設置し、タイヤの温度も測定する。摩擦熱により熱くなるタイヤの状態をモニターする。

今後、ADAS技術は、メディカルや高齢化社会などへのソリューションに応用できるとみている。例えば、ドライバーの身体情報とのリンクによって、てんかん患者の発作予知や身体障害者にとって運転しやすい車の設計などに生かしていく。また、居眠り防止にも使えるという。目標は、事故死ゼロである。

参考資料
1. フリースケールがカーレースのメインスポンサになった理由(わけ) (2012/12/14)

(2013/07/25)

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