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折り曲げてもびくともしないThunderbolt光ファイバ配線を住友電工が製品化

インテルは、パソコン用の高速データバスをベースとするPCI Express(PCIe)と、ディスプレイへビデオ伝送などを行うDisplay Portを、マルチプレスして1本のケーブルで伝送できるThunderbolt技術を提案してきたが、住友電気工業はこれをサポートする光ファイバケーブルを製品化した。このほどテクトロニクス社が主催したテクトロニクス・イノベーション・フォーラム2012の中でその詳細を語った。

図1 製品化されたThunderbolt規格の光ファイバケーブル 出典:住友電気工業

図1 製品化されたThunderbolt規格の光ファイバケーブル 出典:住友電気工業


パソコンと周辺機器をつなぐ配線を細く、軽くするための高速インターフェース規格がPCIeであり、そのケーブルでは例えばストレージ装置とPCをつなぐ。PCからディスプレイへはRGBあるいは最近ではHDMIインターフェース規格のケーブルを使うことが多い。しかし、2K、4K、8Kへとディスプレイが高精細になるにつれ、HDMIでさえ遅くなってしまう。そこで、10Gbpsで伝送できるDisplayPortインターフェースケーブルが最近使われ始めた。ところが、ストレージからPCはPCIe、PCからディスプレイはDisplayPortとなり、二つの異なるケーブルを使わなくてはならなくなっている。インテルが提唱するThunderbolt規格のケーブルを使えば、1本でつなげられるためPCとその周りはすっきりする。Thunderboltはデイジーチェーンのように最大6台までの装置をつなぐことができる。

Thunderbolt規格ではケーブル1本の送信、受信がともに10Gbpsでやり取りできる。ケーブル媒体は銅でも光ファイバでもどちらでも構わない。これまでのThunderbolt規格媒体は銅ケーブルしか製品がなかった。今回国内で初めて、住友電工が光ファイバケーブル製品を展示した。光ファイバだと、通信距離を伸ばすことができるため、用途が広がる。同社は銅ケーブルもこれまで製品化していたが、長さが30cm、50cm、1m、1.5m、2m、3mであり、最大3mしかなかった。今回、光ファイバケーブルを製品化することで、通信距離を20mまで伸ばすことができるようになった。今回の製品では10m品も用意している。

今回の光ファイバケーブルでは、伝送媒体は光ファイバだが、コネクタ部分に光電変換回路を入れている。このためケーブルのつながったコネクタは、USBのような電気信号コネクタとして使える。コネクタハウジング部分の長さは銅コネクタの28mmに対してやや長い38mmとなっているが、外見は通常のケーブルとして使えることが大きな特長だ。ケーブルの外形は直径4.2mmと銅ケーブルと全く同じ。


図2 光ファイバを180度完全に折り曲げてもびくともしない 出典:住友電気工業

図2 光ファイバを180度完全に折り曲げてもびくともしない 出典:住友電気工業


特に、ケーブルを180度折り曲げても壊れない(図2)。紐のように線を固く結んでも断線しない。家庭での光ファイバケーブルのように慎重に扱わなくても断線しないという。さらにケーブルを固定するためのステープルガンを打ちつけても大丈夫で、引っ張り強度試験も行っている。ただし、光ケーブルがガラスファイバなのか、プラスチックファイバなのか、材質については答えられないとしている。

光ファイバのコネクタでは、レーザー発振器と受光器、変調器などを基板上に集積しているが、銅線では必要とされた信号強調のためのプリエンファシス処理や、受信側で信号劣化を防ぐイコライザ処理などのアクティブ回路が必要でそのための供給電源も必要になる。光ファイバでは、バス電力の給電は銅ケーブルと違って必要ない。テクトロニクス社は、電気的特性試験に必要な、トランスミッタ性能とレシーバ性能、リターンロス、HDMIとDisplayPortソーステストなどを行うためのオシロスコープやスペクトラムアナライザ、テストアダプタなどを供給している。

Thunderbolt製品はインテルによるコンプライアンス試験に合格しなければならない。6月に台北で行われたComputex Taipeiでは、コンプライアンス試験に合格した製品を6〜7社が発表していたと言われている。

この規格は、1ケーブル当たり2チャンネルの送受信回路を含み、1チャンネルには10Gbpsの送信と10Gbpsの受信を含む。このため1方向に送信するだけなら最大20Gbpsでデータを送ることができる。

光ケーブルの最初の想定顧客は、プロ仕様のデジタルシネマカメラからのビデオデータを扱うビデオ編集者。プロは撮影したコンテンツを編集するためデータを圧縮しない。このためできるだけ高速のビデオデータが欲しい。加えて、ビデオデータを保存処理するビデオサーバなども対象用途となる。

(2012/06/15)
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