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半導体産業、パッケージング時代に!〜SKが米新工場、TSMCは日本に立地検討

半導体のフロントエンドの限界が近づいている。様々な意見があるが、シリコンウェーハで0.5nm以下は物理的に難しいとの意見がかなり増えているのだ。そこで、後工程のパッケージングに多くの注目が集まっている。つまりは、チップレットやパッケージングで凌いでいくという考え方なのである。

泉谷渉の視点

熊本に新工場を立ち上げたTSMCは、ここにきてAI向け半導体の先端パッケージング工場を日本国内に設置することを検討しはじめた(編集注1)。TSMCは、「CoWoS」という独自のパッケージング工程を作り上げており、これは台湾で本格的に作っており、2024年には生産能力を2倍にする計画を公表している。

同社は、2022年にパッケージング工程の新たな研究開発拠点を茨城県つくばに設立しているが、CoWoSの本格的な生産設備は台湾だけにしかない。そこで、パッケージングのサプライチェーンがもっとも整っている日本国内に新たな先端パッケージング工場を作ろうという考えだ。場所はまだ決まっていない。


韓国のメモリ大手であるSK hynixもまた動き出した。同社は、AI半導体に使用される高帯域幅メモリ(HBM)のトップシェアのサプライヤであり、世界に先行している。この製品はAI半導体市場の80%を占めるNvidiaに納入しているのだ。そして、何と6000億円という巨額を投資して、米国インディアナ州にアドバンス半導体パッケージングの新工場建設を本格的に検討しはじめた(編集注2)。

一方、Samsungも横浜に400億円を投じて、パッケージングの開発センターを作ることを決定しているが、これに合わせて近い将来に日本国内にパッケージング新工場を設置するかもしれないという発言をほのめかしている。そしてさらに、Intelもまた日本国内にパッケージング開発拠点の開設を検討している。


日本勢においても、こうした動きは広まってくる。ルネサスは大分工場の新規パッケージング開発と製造ラインの自動化を一気に進めている。当然のことながら、大分工場にはそれなりの設備投資を考えているのだ。ソニーもまた、大分における後工程の充実を考えており、先端パッケージングについても開発や量産を検討しているようだ。

国家半導体戦略カンパニーともいうべきラピダスは、超大型の半導体工場建設を進めているが、後工程工場も設けるわけであり、先端パッケージング量産も十分に考えているだろう。こうした動きに合わせて北海道千歳周辺にパッケージングに強いメーカーの進出も十分に予想されるのだ。立体的に重ねていき、三次元実装して性能を向上させる先端パッケージング技術は、今後の半導体の技術革新の大きなコアになっていくことは間違いないだろう。

産業タイムズ社 代表取締役会長 泉谷 渉


編集注
1. 2024年3月25日の週間ニュース分析「Intelの投資計画に85億ドルのCHIPs支援が確定、TSMCの日本パッケージ工場」で解説したように、TSMCは正式にコメントしていない。ロイター1社が報じただけで、他のメディアもこのロイターの情報を記事にしているだけで、まだ噂の域を出ていない。
2. SK hynixは、米インディアナ州のウェストラファイェットに38.7億ドルを投資して新パッケージング工場建設を正式に決定している。特にパデュー大学と協力してHynixが得意なHBM(High Bandwidth Memory)を中心とする先端パッケージを開発する。まずGPUなどのAIチップとセットで使われる次世代のHBMを開発し、2028年後半の量産開始を目指している。インディアナ州の隣にあるオハイオ州ではIntelが200億ドルを投資して工場を建設中だ。

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