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電池の寿命を6倍以上延ばす充電アルゴリズムを尼崎のベンチャーが開発

電池の充電方法を変えることで、電池の寿命を伸ばすことができる。このような新しい充電アルゴリズムを開発することで電池の寿命を延ばせる充電器を開発してきた、兵庫県尼崎市のベンチャー、テクノコアインターナショナルがこの充電の考え方をセミコンポータル主催の「パワーエレクトロニクスの全貌と半導体の未来」(関連資料1)の中で発表した。

図1 充電方法を見ずに例えたアナロジー 出典:テクノコアインターナショナル

図1 充電方法を見ずに例えたアナロジー 出典:テクノコアインターナショナル


電池に損傷を与えずに急速に充電することを企業の社是とするテクノコアは、写真家向けデジカメ用の充電器、単3・単4の充電器といった小型の充電器から、45V/100Aという大型の充電器や川崎重工業の大型バス用の330VのNi-MHギガセル電池(関連資料2)用の充電器まで幅広く扱ってきた。


図2 大型バス用の充電器 出典:テクノコアインターナショナル

図2 大型バス用の充電器 出典:テクノコアインターナショナル

500回程度しかもたないという市販の電池がこの充電方法を採用することで2900回もクリヤした。ただし、これ以上は実験する時間的余裕がなかったため、データを採っていない。10名足らずの少ない人数で開発しているベンチャーだから、大手のような長期信頼性の実験を行う余裕がないためだ。

この充電方法のキモを、空ビンに水を入れるというアナロジーで同社代表取締役社長の高岡浩実氏は説明した。水道の蛇口から水を入れる場合、水を勢いよく入れると蛇口付近であふれ出してしまうため、水量を絞りチョロチョロと入れて行き満杯にする。ビンの形が下に拡がっていれば最初はやや水量を大きくして急速に水を入れても、満杯に近付くと水量を絞り、満杯まで持っていけばビンいっぱいに水を満たすことができる。

このために同社の充電アルゴリズムは、基本的にはパルスで充電するが、オンしているときに充電し、オフした時に電池の起電力(電圧)を測るという方式をとる。パルス方式を採るのは、電池を充電し続けると発熱し、電極を傷めてしまうためだと考えている。充電+測定を何度も繰り返しながら、電池を発熱させずに充電電圧を上げて行く。


図3 充電方法 出典:テクノコアインターナショナル

図3 充電方法 出典:テクノコアインターナショナル


満杯になりそうな終盤に近づくと、充電終止設定電圧を少しずつ上げていく。最初にV0maxを設定しておき、その条件で3〜4回パルスを入れ、起電力を測定する。V0maxをクリヤしてしまうと、その電圧よりも少し高い電圧V1maxを設定する。さらに3〜4回パルスを入れ起電力を測定し、その設定電圧もクリヤするとさらに設定電圧を少し高める。この作業を繰り返しながら、設定電圧を上げてもその電圧を超えることができなくなると、そこが最終点となる。高岡社長によると満充電の97%までは充電できるという。終盤に近づくにつれ、充電電流も減っていく。これはビンの口が細くなっていくことに似ている。


図4 充電終了を決めるアルゴリズム 出典:テクノコアインターナショナル

図4 充電終了を決めるアルゴリズム 出典:テクノコアインターナショナル

起電力は電池の温度や使ってきた電池の状態などによってやや異なるため、この測定法では起電力の絶対値を見るのではなく、充電過程における起電力特性の曲線から満杯に近付いていることを判断するという。このため、どのような電池であっても電池容量が満杯に近づくにつれ、充電を安全に止めることができる。

電池が劣化するのは電気的には内部インピーダンスが上がるためと高岡社長は考えている。物理化学的には反応速度や反応面積、拡散速度、電気泳動などが効いているのだろうが、電気的特性で見るとこれらを内部インピーダンスとして見ることができるとする。例えば、蓄電容量Qと内部抵抗Rは単位電荷と抵抗率を面積積分すると求められるが、QR積は一定になる。すなわち、抵抗(インピーダンス)が増えると電荷容量は少なくなることが説明できる。

問題は開発した充電器のコストを下げられないこと。鶏と卵の関係ではないが、充電器の数量が増え、充電器の回路を半導体IC化できれば下げられると高岡社長はIC化に期待する。

関連資料
1) SPIフォーラム パワーエレクトロニクスの全貌と半導体の未来
2) 川崎重工のギガセル、電車走行停止の充放電試験から次世代グリッドに期待

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