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NECエレがIBMコモンプラットフォーム計画に参加、自らの強みを生かせるか

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先週末にビッグニュースが飛び込んできた。NECエレクトロニクスがIBMの32nm世代のコモンプラットフォーム計画に参加するというニュースが9月11日にIBMから送られてきた。この計画に参加していた、シンガポールのチャータードセミコンダクタ、フリースケール・セミコンダクタ、インフィニオン・テクノロジーズ、サムスン電子、STマイクロエレクトロニクス、東芝の共同アライアンスにNECも加わることになる。

これまでNECエレクトロニクスは、32nm以降のシステムLSIプロセス技術の共同開発として東芝と組むことで合意していた。2006年2月に45nmプロセスで東芝と共同開発する意思を表明してから2007年11月に32nmでも東芝と共同開発を続ける意思を表明してきた。このチームに富士通も参加するのではないかという憶測が流れている。

片や東芝は、その直後、2007年12月にIBMのコモンプラットフォーム計画に参加することを表明した。東芝はソニーのCellプロセッサの生産工場を買収しソニーと合弁でCellプロセッサを生産する合弁会社を設立している。CellはSOIプロセスで生産されてきたが、東芝はバルクCMOSしか量産経験がない。その折衷案、あるいは最適化を図ったのがSpursEngineだ。Cellで使われている8個もプロセッサエンジンコアを必要としないが、最大4コアを利用する応用を東芝は見込み、そのSpursEngineチップをバルクCMOSで生産している。

東芝のアグレッシブなコラボ戦略とは全く対照的なのがNECエレクトロニクスである。国内外においてユーザーあるいはサプライチェーンにいる企業パートナーとの共同開発という従来からあった意味でのコラボはやってきたものの、コンペティタともいうべき企業との新しいコラボレーションには積極的ではなかった。国内のコンソシアムとSEMATECHに参加する一方、独自で32nmプロセスの一部を学会発表していた。45nmから32nmにかけて製品に直結する微細化技術を1社で開発することが困難になり、NECエレクトロニクスは東芝と組んだ。当の東芝はIBMアライアンスにも加わり、最適な32nmプロセスを探している。

今回ようやく、NECエレクトロニクスも製品に使う基本技術でグローバルなアライアンスを組むようになった。32nmプロセスは半導体製造メーカー同士の協力で開発するということであるから、32nmプロセス技術にはもはや差別化技術はないことになる。競合メーカーとの優位点は微細化ではなく、別の所にある。これが賢いソフトウエアかもしれないし、ある機能を実現するための賢いアルゴリズムかもしれない。あるいはそのアルゴリズムをシリコンにインプリメントするための賢い設計技術かもしれない。

微細化以外の付加価値をどこに持たせるかによって半導体メーカーの売上や利益に大きな影響を与えると言っても言い過ぎではない。各社が持つ知恵をどこに集中させるか、各社ごとに企業文化もノウハウも違うからこそ、半導体メーカーはこうすべしと一概には決して言えない。半導体メーカー自らのコアコンピタンスを明確に意識し、従業員全員が共有できるようになればその企業は強くなる。

NECエレクトロニクスの中島俊雄社長は、9月11日に発表したニュースリリースの中で、「当社は、従来の東芝との共同開発に加えて、IBMとの共同開発に直接参加することにより、世界の有力な半導体メーカーと共通的なプロセス・プラットフォームを開発し、その共通的なプラットフォームの上で、当社の優位性であるeDRAMプロセスや高信頼、低消費電力といった付加価値を加えたシステムLSIを早期に製品化することにより、ユーザーの期待に応えることを目指します」と述べている。

NECエレクトロニクスの優位性はeDRAMプロセスや高信頼、低消費電力のシステムLSIだと中島社長は言っている。他社に負けない高信頼、低消費電力、eDRAMプロセスを今後コアコンピタンスとしてNECエレは業績を伸ばせると考えているのだろう。NECエレの再浮上は、これらのコアコンピタンスで決まる。じっくり見守っていきたい。

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