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厳しい環境の中、在庫調整が一段落、受注減少が鈍化しDGレシオは上向く

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2月23日付けのニュース、「マーケット」と「ニュース解説」で在庫調整が進みすぎて、その調整局面に入ったことを伝えた。ここ数カ月間在庫を絞るだけ絞ったため、その反動がやってきたという訳だ。このためこれから出荷量はやや増えていくということを述べたが、先週のニュースでもそれを裏付ける報道があった。

市場調査会社のアイサプライ・ジャパンがまとめた1月の半導体・電子部品のDGレシオ(販売額に対する受注額を加重平均した値)は1.01となり、先月よりも0.04ポイント上昇した。上昇そのものは3カ月ぶりで1.00を超えたのも3ヵ月ぶりだとしている。受注額や出荷額そのものは依然として厳しい状態が続いているが、この上昇は受注減少が鈍化したとみられる。

半導体後工程で、ウェーハを研磨し、さらにチップを切り出す専業メーカーのディスコの溝呂木社長とのインタビュー記事が3月10日の日本経済新聞に掲載されており、「半導体の工場が回り始めている。わずかだが戻ってきた」というコメントを述べたと伝えている。ウェーハからチップを切り出す切断刃の出荷は3月に入って5%ほど持ち直したという。

現在の不況業種である民生分野は、単価の高い自動車分野と同じ消費者を相手とする産業だが、単価が安い分、景気の戻りは早い、と米調査会社のIn-Statが見ている。自動車と比べ、単価の安い携帯通信機器やエンターテインメントなどに消費を回すため、2010年初めには成長するだろうとしている。

もちろん、まだまだ厳しい状況が続いている企業もある。3月期の収支見通しについてセイコーエプソンが発表したが、それによると売上見込み1兆1380億円に対して、1000億円の赤字を計上する見通しとなった。エプソンにとって黒字化の難しい中小型液晶パネルと半導体部門を見直す。液晶部門はソニーへの売却を視野にソニーとの話し合いに入っている。半導体は携帯電話向けのLCDドライバやファウンドリ事業が伸び悩み、秋田県酒田と長野県富士見の工場を1本化し、酒田に集約する。低消費電力のアナログ混在ICを今後も事業領域にするとしている。

今後、力を入れる領域は二つ。一つはインクジェット技術をコアとして完成品までもカバーする事業であり、もう一つは水晶をコアとしてモジュールやシステムをカバーする。水晶と半導体を同一パッケージに入れて、他社製品との差別化を図るとしている。

東京精密は大胆な改革方針を打ち出している。日経新聞は藤森一雄社長とのインタビュー記事を掲載した。それによると、半導体製造装置と計測器を事業の柱としてきたが、2年くらい前から続く製造装置の落ち込みを計測器事業でカバーしてきた。計測器は自動車向けが多いため、ここへきて計測器も業績が悪くなった。そこで、製造装置の製品ポートフォリオを見直し、これまでのような広い範囲の製品を改め、得意なプローバーなど3分野に経営資源を集中させるとしている。さらに業界再編も視野に入れているという。

新しいアプリケーションが出てきた。電化製品、オーディオ製品の企画・デザインを手掛けるリアル・フリート社は名刺サイズのビデオカメラを開発、気楽にYouTubeなどの動画サイトに撮影した映像を上げることを狙う。2002年に設立されたこのベンチャー企業の低価格ビデオカメラは、30万画素程度の安いCMOSイメージセンサー、録画時間2時間程度のメモリーを搭載し、パソコンと直接つないでデータを送る。「アマダナ」ブランドで5月に発売し、価格は2万円程度になる見通し。

カーナビに代わってPND(パーソナルナビゲーションデバイス)が海外で爆発したのに対して、日本では三洋電機がゴリラの愛称で販売していたが、海外展開が今一つでPNDの波に乗れなかった。今回の低価格ビデオカメラはミクシィやYouTubeなどを狙ったもので、海外にはすでに相当する安いビデオカメラはすでにあるため、「アマダナ」は国内に照準を合わせている。こういった安いアプリケーションは、1チップソリューションで徹底的に低価格を狙うという半導体ビジネスがありうる。CMOS回路とフラッシュメモリー、CMOSセンサーとの集積化を安く実現できる技術が求められている。

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