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半導体の人材育成、プログラムを創設する経産省、レゾナックは新人事制度

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半導体産業がかつてないほど盛り上がりを見せているが、問題となっている人材育成に関して経済産業省から新しいプログラムを創設するという計画が発表された。旧昭和電工は日立化成を買収してレゾナックと社名を改め、半導体を念頭に置いた人事制度を刷新する。北海道もラピダス支援の新組織を作る。米国はインドと半導体で協力するという覚書を交わした。

(参考)半導体関連企業の主な設備投資計画・立地協定 / 経済産業省

図1 九州に集まる半導体関連企業 出典:経済産業省


ラピダスが人材募集を進めており、TSMCの熊本の拠点となるJASMでも人材募集を継続している。半導体技術者は不足している。3月10日の日刊工業新聞は、「経済産業省と文部科学省は、半導体分野の新たな人材育成プログラムを創設する方向で検討に入った」と報じた。用途を踏まえた上で回路設計から量産プロセスまで一気通貫で担える人材を育成するためのプログラムを2023年度中に策定するという(参考資料1)。

「半導体をはじめとしたデジタル産業基盤の強化に向けた取組が国内投資の規模・伸びを引っ張っている状況」という認識を示す経済産業省だが、続けて「賃金水準も高く、需要も拡大しているこの分野で、日本国内で持続的に稼げる職場を作り、そこに必要な人材を育てることが必要」としているが、この分野の賃金は決して高くない。むしろ問題は、TSMCが大卒28万円、修士修了32万円という初任給を示したものの、日本の半導体メーカーがこのレベルに追いついていない状況だ。

「『2020年代後半に次世代半導体の設計・製造基盤を確立する』との政府方針(22年6月7日閣議決定)の実現に向けて、必要となるプロフェショナル・グローバル半導体人材の確保と次世代人材育成が急務となる」と経産省は認識し、足下の対策として国内外の次世代半導体産業と大学等の教育機関が連携した「プログラム」を 2023年度より創設することを提案している。

具体的には、2nmプロセスノード技術を開発するLSTCを事務局とし、国内外の教育・研究機関から次世代半導体産業の求める人材像の候補者(数十名/年程度)を選定する。さらにラピダスのパイロットラインの活用や、海外大学・アルバニー/Imecへの派遣などにより即戦力人材を確保するという。しかし、これではエリートエンジニアの育成プログラムにすぎず、工場での各プロセスエンジニアやプロセスインテグレーション、データ分析など歩留まりを上げるためのプログラムになっていない。

半導体は、量子力学の理解から始まる半導体物理や、エッチングやCVDなどに必要なプラズマ物理や化学、データ解析に必要なAI(機械学習)や数学、歩留まり向上や品質管理に必要な統計解析など半導体を根底から理解する研修プログラムをSTEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)教育として高校や大学から教える仕組みも重要であろう。また、参考資料1を読む限り、デジタル人材と半導体人材を完全に分けており、最近のSoCソリューション設計に表れるようなソフトウエアとハードウエアの両方の理解を求めることには全く触れていない。

レゾナックは社員が希望部署に異動申請できる「社内公募制度」を促進し、社員のやる気や組織の改善につなげることを目指す、と3月8日の日経産業新聞が報じた。同社CTOの福島正人氏は「2022年から全社で社内公募制度を強化している。ある組織が「こんな人材が欲しい」と公募を出すと、その職場や職種を希望する社員が年次や所属にかかわらず自由に応募できる。社員が選考に合格したら基本的に現在の組織の上司は引き留められないルールになっている」と述べている。2022年の1年間で181件の公募があり、応募した154人の内74人が実際に異動したという。

ラピダスが進出を決めた北海道では、事業支援を担う「次世代半導体戦略室」を4月に設けるほか、ラピダスに道職員も派遣する、と9日の日経地方版が伝えた。ラピダスや千歳市と協議し、建設用地や用水などのインフラ整備や人材育成といった課題を洗い出して、具体的な支援策につなげていく。工場誘致では先行する熊本県も視察する。

人材育成には女性の力も必要。広島のMicronには大勢の女性エンジニアが働いている。OECDによると日本ではSTEM分野の卒業生に占める割合は17%しかない、と8日の日経が伝えている。日本では、「女性は理系に向かない」といった偏見が根強い。しかし、多様性のある人材を最も多く活用しているシリコンバレーは、世界で最も活力のある地域として欧州からも参考にされている。ちなみにシリコンバレーのハイテク企業に勤める男女の割合から言えば、女性の方が若干多い51対49になっている(参考資料2)。

インドを訪れたレモンド商務長官が、「商業機会の促進や研究開発、人材・技能開発など相互の優先事項を強化する」と述べたと11日の日経が報じた。サプライチェーンや研究開発で米国はインドと協力、インドとの連携を深める。もともとインドには米Texas Instrumentsや欧州のSTMicroelectronicsなどが半導体設計をインドのデザインセンターに委託してきたという歴史がある。このため半導体設計に長けた人材は極めて多い(参考資料34)。インド市場は急速に発展しており米国は中国に代わる新市場として期待する。

参考資料
1. 「デジタル社会実現に向けて」、第12回産業構造審議会経済産業政策新機軸部会 (2023/03/01)
2. 「どっこい、シリコンバレーの隆盛は10年以上続く、SVL Groupが調査」、セミコンポータル (2012/05/02)
3. 「レイアウトデータやマスク検査用EDAツールを提供するインドの『ソフト人』」、セミコンポータル 2010/12/24)
4. 「LSI設計を知り尽くしたベテラン達が昨年起こしたインドのデザインハウス」、セミコンポータル (2011/09/27)

(2023/03/13)

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