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どっこい、シリコンバレーの隆盛は10年以上続く、SVL Groupが調査

ここ数年、米国カリフォルニア州シリコンバレーの復活・隆盛をそれとなく感じていたが、それを裏付ける資料が明らかになった。それによるとここ10年以上はこの地がまだ成長を続ける。1990年代後半からITバブル崩壊が続いた2000年代中ごろまでシリコンバレーは元気を失っていた。転入人口よりも転出人口が上回った年もあった。ところがどっこい、、。

今回発表された資料は、シリコンバレーリーダーシップグループ(SVL (Silicon Valley Leadership) Group)がシリコンバレーに設立されている企業のCEOにアンケート調査し、その結果をまとめたもの。SVL Grurpのコミュニケーションズ担当VPであるSteve Wright氏がGlobalPress Connection 主催のe-Summit2012で発表した。今回の調査では、365社の会員企業の内、188社から回答を得た。この結果、この1年のシリコンバレーでは雇用が増え、海外シフトは少ない、という傾向が見られた。


図1 シリコンバレーの経済は好調続く 出典:Silicon Valley Leadership Group

図1 シリコンバレーの経済は好調続く 出典:Silicon Valley Leadership Group


シリコンバレーで活躍しているエンジニアには外国から来た人たちの方が米国生まれの人たちよりもが多い(図2)。


図2 シリコンバレーのエンジニアは外国出身者が多い 出典:Silicon Valley Leadership Group

図2 シリコンバレーのエンジニアは外国出身者が多い 出典:Silicon Valley Leadership Group


さらに、アンケートに回答したハイテク企業の創業者やCEOの50%以上が外国出身者である。例えば、グーグルのSergey Brin氏はロシア出身であり、インテルのAndrew Drove氏はハンガリー出身だ。ヤフーのJerry Yang氏は台湾出身者。同様に、大学教授や高い学位を持つ大学卒業生も50%以上が外国出身者である。加えて、男女差も少ない。シリコンバレーで働く企業正社員の51.2%は女性であり、また、大学卒業生の半数以上が女性という調査結果だ。

では、シリコンバレーの強みとは何だろうか。CEOにアンケートをとると、図3のような回答を得た。


図3 シリコンバレーの強み(a)と弱み(b)  出典:Silicon Valley Leadership Group

図3 シリコンバレーの強み(a)と弱み(b)  出典:Silicon Valley Leadership Group


シリコンバレーでは、優秀な人材を獲得できるが、人材を確保することも問題となっている。つまり、人材の流動性が高い。これはメリットである半面、デメリットであることを表している。働く人にとって、顧客に近いと同時に、ライバル企業にも近い。このため切磋琢磨して競争し、シリコンバレー全体の活性化につながっている。SVL GroupのSteve Wright氏(図4)は、この状況を説明するのに面白い造語を二つ紹介した。


図4 Silicon Valley Leadership Group VPのSteve Wright氏

図4 Silicon Valley Leadership Group VPのSteve Wright氏


一つは、Frenemy(フレネミー)である。これは友達(Friend)とライバル(Enemy)とを混じえた造語だ。もう一つは、Co-opetition(コーペティション)という言葉だ。これは協力(Cooperation)と競争(Competition)を合わせた言葉である。シリコンバレーをよく表している。技術の流出が当たり前のシリコンバレーでは、それを心配するのではなく、前へ前へと早くビジネスを進める方が技術は進化する。スピード感がなくては、技術が流出した後、開発すべきものが何もない状態になってしまう。シリコンバレーでは一つの技術が流出したとしても次から次へと新しい技術が出てくることでコストに見合う結果になっている。

起業家志向の強い産業が出てくることもシリコンバレーの特長である。図3(a)にもあるようにそこは起業家精神が旺盛な場所だ。例えば自動車産業は今でもデトロイトが中心だが、電気自動車メーカーのテスラ社(Tesla Motors)はシリコンバレーで生まれた。携帯電話やインターネットビジネスは当初、米国の東海岸から生まれたが、ビジネスはシリコンバレーで隆盛期を迎えている。スマートフォンは、カナダのRIM(リサーチインモーション)がBlackBerryで先駆けたが、普及するようになったのはアップルがiPhoneを発明して以来である。

起業に必要なベンチャーキャピタル(VC)やエンジェルへのアクセスが容易なことも大きなメリットだ。2011年に全米のVCは284億ドルを3700の案件に投資した。このうち、シリコンバレーを含めたサンフランシスコ市周辺のベイエリアの企業は39%を受け取ったという。第4四半期には30億ドルを超えた。

世界的なレベルの大学も多い。スタンフォード大学やカリフォルニア大学バークレイ校、サンフランシスコ大学、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、サンノゼの州立大学、サンタクララ大学、カリフォルニア大学サンタクルーズ校などがある。

現在のシリコンバレーでは、失業率は9%と、カリフォルニア州全体の11%よりも低い。240万人の人口を抱え、就業人口は100万人いる。さらにハイテク企業の雇用主は7000社もある。シリコンバレーは米国の他の地域とは全く異なる様相を示しているが、今回の調査では明確な裏付けがとれた。「シリコンバレー新聞」ともいえる「San Jose Mercury News」の記者を長年務めていたWright氏は、シリコンバレーの隆盛がここ10年以上は続くだろうと見ている。

(2012/05/02)
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