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ルネサスとTELの決算発表から景気動向を読み取る

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直近の半導体市場にはパソコンやスマートフォン、テレビなど民生市場は世界経済の影響をまともに受けて景気後退だが、産業向けや自動車向けはゆっくりとした成長が続いている。このような仮説をもってルネサスエレクトロニクスと東京エレクトロンの決算を見ていたが、この仮説が正しそうなことがわかった。

ルネサスの第4四半期(10月〜12月期:4Q)決算が発表され、前年同期比24.5%増の3913億円となった。当期の営業利益率は34.7%と好調が続く。2022年度通期(1〜12月期)では、前年比51.1%増の1兆5027億円となった。久々の1兆円台に回復させた。通期での営業利益率は37.2%と極めて好調な業績となった。

同社社長の柴田英利氏は、「買収したDialog Semiconductorの業績を9月から組み入れたため、前年比で51%成長となったが、その分を除くと40%成長くらいになる」と述べているが、1カ月程度しかなかったが円安期間の影響もあるだろうとみている。というのは、海外売上比率が極めて大きいからだ。売り上げの地域別は大きく分けて、日本20%強、米国10%、欧州20%弱、中国30%、その他アジア20%だとしている。

ルネサスは、車載向けと産業向け(産業・インフラ・IoT向け事業)にフォーカスしており、それぞれ2桁成長を遂げた。2022年4Qでは、自動車向けでは28.8%増の1696億円、産業向けは22.0%増の2189億円となっている。車載向けはEV(電気自動車)やADAS(先進ドライバー支援システム)の拡充などが追い風となった。産業向けではデータセンター向けにAMDとほぼ一緒に成長したという。

ともに4Qも好調のように見えるが、それまでの2022年前半の成長率はさらに高い。Dialogの業績を組み入れていなかった1〜6月期でさえ、前年同期比71.7%増の7238億円の売上額だった。ということは好調なルネサスでさえも手放しで喜ぶわけではなく、少しずつ成長率が下がってきていることになる(図1)。このため、柴田氏は警戒感を持っており、「(大きな世界の動きに)遅れないような手綱さばきをしていきたい」とマクロ経済との警戒心を崩さない。


2022年12月期 通期決算発表 / ルネサスエレクトロニクス

図1 ルネサスの決算は2桁成長だが、そろそろ頭打ち 出典:ルネサスエレクトロニクス


ルネサスの発表と同日、東京エレクトロンからも決算発表があった。同社の決算期(10月〜12月期)は2023年度第3四半期に当たる。この期の売上額は前年同期比34%減の4678億円となった。営業利益率は24.5%と減収減益になった。特に民生分野で使用量の多いメモリ向け装置の売り上げが大きく低下し、1年前はメモリとロジックの比率が5:5だったが、直近の四半期では3:7となっている。河合利樹社長によると「直近の肌感覚では、2:8くらい」という。

東京エレクトロンは前半が調子がよかったため、会計年度の通期では2023年度上半期(2022年4〜9月)の売上額は1兆1828億円だが、下半期(22年10月〜23年3月)は9872億円と予想する。通期では2022年度の2兆38億円から8.3%成長の2兆1700億円となる。ただし、研究開発費・設備投資費共に減らさない。2023年度の研究開発費は前年度比20%増の1900億円、設備投資費は同31%増の750億円となっている。

2月10日の日本経済新聞は中国最大手のファウンドリSMICの投資額について触れ、2023年12月期の投資額について前期並みの高水準を維持すると発表した。前期の投資額は63億5000万ドル(約8300億円)で、前の期に比べ約4割増え過去最高だったが、今期の投資額の詳細は明らかにしていないという。主に成熟分野の技術を採用した生産設備の能力拡大にあてるとしている。SMICは25年の生産能力を21年時点の約2倍に増やす計画を掲げており、昨年8月には1兆円規模を投じて天津市に新工場を建設する計画を発表していた。

AI研究では、OpenAIが開発したChatGPTが話題を呼んでいる。これまでのAIとは大きく異なり、汎用AIの幕開けとなる技術である。OpenAIにはMicrosoftが投資しており、Microsoftの検索エンジンBingに取り入れる、と9日の日経が報じた。これまでのAIは、音声認識や画像認識などで学習させる対象がある程度絞られた特定用途にしか使えなかったが、ChatGPTはどのような対話にも応じることが優れた点だ。例えば、「気候変動を解決するにはどうすればよいか」といった漠然とした問いにも応えられる。Googleも負けずに汎用AIを開発しているが、今のところOpenAIほどの優れた対話ではないという噂もある。

(2023/02/13)

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