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WSTS、今年の半導体販売額を下方修正するも13.9%増の2桁成長

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WSTS(世界半導体市場統計)は、6月に2022年と23年の見通しを発表した数字である16.3%増を13.9%増へと早くも下方修正した。中国経済と個人消費の減速を反映してスマホとPCの出荷が落ちていることから修正した。とはいえまだ2桁成長だ。半導体不足が続いている市場もあるからだ。中長期的に半導体産業の成長が続くことは間違いなさそうだ。

WSTSが24日に発表した改訂版の今年の半導体予測は、前年比13.9%増の6330億ドル(約85兆円強)となった。6月時点の予測は5月に各社が集計したもので、その後半導体各社は2022年第2四半期(4〜6月期)の決算を発表した。この決算そのものは決して悪くなかったが、次の第3四半期(7〜9月期)の見通しが良くなかったためにこれを考慮に入れて今回下方修正した。2023年の成長率も6月発表の同5.1%増から、今回は同4.6%増の6620億ドルに修正した。

今年の半導体市場の製品別では、スマホのアプリケーションプロセッサを含むロジックが同24.1%成長、アナログは同21.9%成長、センサが同16.6%成長となっている。25日の日本経済新聞によると、メモリの成長率は22年の18.7%を8.2%に、23年の3.4%を0.6%に見直されたという。

パソコン用ゲームのアクセラレータやコンピュータ用でこれまで業績を伸ばしてきたNvidiaにブレーキがかかった。8月24日に発表した2023年度第2四半期(2022年5〜7月期)の売上額は67億ドルと前年同期比わずか3%増しかなく、前四半期比では19%減であった。営業利益はNon-GAAP(一時的な損益を除いた調整後の会計金額)で、13.25億ドルと営業利益率19.8%になった。特にパソコンゲーム用のアクセラレータボードやGPUの落ち込みがひどく、ゲーム用売上額は前年同期比33%減で、前期比44%減の20.2億ドルにとどまった。プロ向けのビジュアル化用途は前年同期比4%減、前期比20%減の4.96億ドルとなった。この分野はメタバースや同社のOmniverse部門があり、まだそれほど伸びていない。


図1 Nvidia CEOのJensen Huang 出典:GTC 2022から

図1 Nvidia CEOのJensen Huang 出典:GTC 2022から


Nvidiaの業績をけん引したのはデータセンターとクルマ。データセンターの売上額は前年同期比61%増、前期比1%増の38.1億ドルと好調で、GPU、CPUに加え、AI向けの言語モデルのフレームワークや量子コンピュータ開発ツール、エッジAI、学習ベンチマークなどのソフトウエアツールセットが貢献した。自動車向けは未だ金額は少ないが、自動運転向けに力を入れている分野だ。売上額は前年同期比45%増、前期比59%増の2.2億ドルである。来期(8〜10月期)の同社の決算見通しは、59億ドル±2%となっており、依然としてゲーム応用は来期もマイナスの見込みであるが、データセンターとクルマが打ち消すことになりそうだと見ている。

クルマ用の半導体はこれからも間違いなく成長する分野である。日産の英国北部のサンダーランド工場では、内燃エンジン向けのシリンダーヘッドの生産を2024年に終えることを明らかにした、と24日の日経が報じた。日産は同工場を中心に10億ポンド(約1600億円)を投じ、電気自動車(EV)の製造から車載電池の生産まで手掛ける計画を掲げているという。

26日の日経は、米カリフォルニア州の環境当局が2035年にガソリンのみで駆動する新車の販売を全面禁止する新たな規制案を決定した、と報じた。ハイブリッド車も35年以降には販売禁止にするという。ただし、バッテリや水素だけで約80km以上走れるプラグインハイブリッド車は認められている。

スマートフォンやパソコンでは半導体は在庫調整に移ってきたが、産業向けなど少量の半導体は未だ品薄が続いており、半導体製造装置に使う半導体不足も深刻だ。TSMCの熊本工場など九州では、製造装置向けの半導体が不足しており、やっと入り始めたという商社の話を、24日の日経産業新聞が紹介している。

中長期的な半導体の大需要になりうるメタバースの世界に関しても24日の日経産業が伝えており、将来1兆ドル市場への期待が高まるとしている。メタバースはデータセンターの計算能力を上げる必要があり、大量のCPUやメモリを増やしていくだけではなく、端末のVRゴーグル内のチップ需要も増えていく。端末ではビデオ処理、グラフィックス処理、そして5G通信が必須になる。

23日の日経は、富士通が理化学研究所と共同で量子コンピュータを開発し、23年度に公開して研究に活かしてもらう、と報じた。量子コンピュータの制御用にも半導体需要は生まれる。量子状態を産み出すためのデバイスとして超電導SQUIDや極低温動作の半導体トランジスタなどの量子デバイスの製造にはシリコンウェーハを基板として使い、デバイスの製造装置も半導体の延長で必要となろう。

(2022/08/29)

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