セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

Mac PC、独自チップ採用により売上急増、Samsung、ルネサス、Qualcommも好調

|

先週末は2022年第1四半期および2021年度3月期の決算報告が相次いだ。Apple、Samsung、ルネサスエレクトロニクス、Qualcomm、京セラ、イビデンなどから発表があった。最大のインパクトはAppleだった。独自開発チップの採用により、それまで伸び悩んでいたMacが急成長を続けている。

図1 Apple Macパソコン事業の売上額推移 独自開発チップを採用した2020年度から急成長始まる 出典:Apple社の決算発表の数字をセミコンポータルがグラフ化

図1 Apple Macパソコン事業の売上額推移 独自開発チップを採用した2020年度から急成長始まる 出典:Apple社の決算発表の数字をセミコンポータルがグラフ化


Apple社全体では2022年1〜3月期における売上額は、前年同期比8.6%増の972.8億ドルに達した。営業利益率は30.8%と好調。Apple社の各部門は、iPhone、Mac、iPad、ウェアラブル/ホーム/アクセサリ、サービス部門に分かれており、ハードウエアとして特筆すべきはパソコン事業のMacの売上額だ。1〜3月期の売上額は、同14.6%増の104.4億ドルとなった。Apple製品が最も良く売れる第4四半期は同25.1%増の108.5億ドルを達成、翌第1四半期でさえ、ほとんど落ちなかった。

実はAppleの決算資料を追っていくと、Macの売上額は2017年度(9月決算期)から2019年度まではほとんどフラットで255億ドル前後を推移していた(図1)。それが2020年度、2021年度は増加し始めた。

この増加は、Macの頭脳部となる独自プロセッサM1の採用時期と重なる。最初のM1は、2020年10月に発表され、その年のMacに採用された。それまでは市販のIntelプロセッサを頭脳として使ってきた。市販のプロセッサから独自開発のプロセッサM1に変えて以来、Macパソコンは蘇ってきた。直近の数字でさえ2021年の第1四半期よりも14%多く、その前の四半期よりも25%も多かったため、この勢いでは2021年度を追い越すことは確実で400億ドルを突破しそうだ。

最初のM1チップセットは、CPUとGPU(グラフィックプロセッサ)を別チップにしていたが、2021年11月に発表したM1 ProとM1 Maxでは1チップに集積し、メモリを共有化したことで、性能はそれぞれ3倍、6倍に上がった(参考資料1)。グラフィックデザイナーをはじめとするあらゆるデザイナーが動画編集やグラフィックス処理を行う上でサクサク動くようになった。さらに2022年に3月に発表したハイエンド版のM1 Ultra(参考資料2)では、M1 Maxを2個並列に動作させ、性能はM1 Maxの2倍になった。もちろん、ArmベースのCPUコアであるから消費電力は低い。例えばM1 UltraのMacは16コアの市販チップのMacと比べ同じ性能で動作させると消費電力は100Wも低い。

Samsungの半導体も好調である。半導体部門の売上額は同39%増の26.87兆ウォン(212億ドル)、内メモリ部門は同39%増の20.09兆ウォン(159億ドル)となった。現在水準の1ドル=1265ウォンで計算。次の四半期には、データセンターの需要回復と共にモバイルメモリ需要も増えると同社は見ている。コスト競争力をさらに安定にすると述べている。

1年前と比べた成長率ではルネサスが特筆すべき結果を得ている。前年同期比70.2%増の3467億円を達成、毎年ピークを迎える前年の第4四半期よりも10.3%も多い数字となっている。同社の柴田英利社長は「出来すぎ」と謙遜するが、前回での発表時に極めて大きな受注残を示しており、デザインインが急増していることもその実績を裏付けている。同社は利益の少ない車載事業で売上を伸ばし、IoT・インフラ部門で利益を稼ぐ、という方針でやってきたが、今回は車載部門の営業利益率が37.4%、IoT・インフラ部門も39.9%とどちらも利益が大きく伸びた。

スマートフォンでは5G時代で再び成長しているQualcommの売上額は、同41%増の112億ドルとなり、営業利益率も35%と健全経営となっている。同社はCDMA基本特許を持たない4Gでは売上額が減少し、台湾のMediaTekや中国のHiSiliconなどにシェアを奪われたが、5Gではその存在感を強く示している。同社はスマホ依存のビジネスから5G基地局や車載、IoTなどを伸ばしてきているが、今後はデータセンターやエッジコンピューティングのコンピューテンング向けの事業にも乗り出す構えを見せている。IoT事業はエッジコンピューティング事業の入り口でもある。

事業別では、ハンドセット端末向けは63億ドル、RFフロントエンドが12億ドル、車載3.39億ドル、IoT17億ドル、そして特許会社のQTL(Qualcomm Technology Licensing)が16億ドルとなっている。Qualcommは事業会社のQCT(Qualcomm CDMA Technologies)と特許会社のQTLの2大部門からなるが、ファブレス半導体事業を推進するQCT部門の比率は年々増加している。

参考資料
1. 「Appleの新型SoC、GPU・ビデオ機能を充実しながら消費電力を削減」、セミコンポータル (2021/10/20)
2. 「Appleの新CPU「M1 Ultra」はSiインターポーザ技術で実現」、セミコンポータル(2022/03/09)

(2022/05/02)

月別アーカイブ