セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

Appleの新CPU「M1 Ultra」はSiインターポーザ技術で実現

|

Appleが独自のCPU「M1Max」を2チップ搭載した新型SoC「M1 Ultra」を開発したと発表した。このSoCにはM1 Maxの2倍となる1140億個のトランジスタが集積されており、消費電力当たりの性能を高めている。AppleのパソコンMacに使うことを想定しているため、グラフィック性能が高い。

M1 Ultra / Apple

図1 Appleの新SoCはM1 Maxチップを2個インターポーザで接続 出典:Apple


M1 Ultraは、M1 Maxチップ(参考資料1)を2個、シリコンインターポーザを通して接続しており、同社はUltraFusion技術と呼んでいる。これにより1万を超える信号をチップ間で接続し、2.5TB/秒という超高速のバンド幅でチップ間をデータ転送している。これまで最先端のマルチチップ配線技術より4倍も速い。このことによって、ソフトウエア側からはM1 Ultraがまるで1チップのように見えるという。従来だと2チップをマザーボード上で接続していたため、配線距離が長くなり、レイテンシが遅く、バンド幅は減少し消費電力は上がっていた。このUltraFusion技術はApple が独自に開発したという。

M1 Maxではメモリを周囲に4個抱えて共有メモリを構成していた。図1のチップアーキテクチャを見る限り、今回のM1 Ultraはメモリも一緒に集積しているようだ。配線長が短いため高速メモリを共有できるため、CPUの動作はレイテンシが少なく極めて速くなる。最大128GBの共有メモリとなる。

M1 Ultraは、20個のCPUコアからなる。その内16コアが性能の高いコア、4コアは性能よりも低消費電力を優先するコアとなっている。演算速度が必要な時は高性能コアを多用し、動作させない時は低消費電力コアを多用する、ArmのbigLITTLEアーキテクチャに似ている。従来の高性能パソコンで使われる16CPUコアのプロセサと比べて、同じ60Wレベルでは性能が90%も高い(図2)。


CPU performance vs. power / Apple

図2 同じ消費電力なら性能は90%高い 出典:Apple


また逆に、従来の16コアプロセッサのピーク性能と同じ性能なら、100Wも少ない消費電力で動作する。M1 Ultraは1チップのM1 Maxのほぼ2倍の性能や電力効率を提供する。

AppleのパソコンMacはグラフィックデザイナーなどが好んで使うパソコンであるため、グラフィックス性能はもちろん高い。64コアのGPUを搭載しており、3D(3次元)レンダリング作業を高速にできる。また、ビデオコーデックでは8K ProRes422ビデオを最大18本も再生できるほか、複数のディスプレイを駆動できるディスプレイエンジンも搭載している。

またGPUとは別に集積しているニューラルエンジンも32コアを備え、22 TOPS(Trillion operations per second)のAI性能を持つため、機械学習のモデルが大きいAIでも使える。今回のApple Siliconに合わせて、M1 UltraのCPUやGPU、付随するメモリバンド幅を活かすためにソフトウエアも改良したMac OS Montereyも新規に設計した。

Appleは、消費電力を下げることによって、取り組んでいるカーボンニュートラルに向け、製造のサプライチェーンだけではなく製品そのものの低消費電力にも取り組んでいる。ハイエンドのWindowsデスクトップパソコンよりも年間1000kW時も少ない電力になるとしている。

参考資料
1. 「Appleの新型SoC、GPU・ビデオ機能を充実しながら消費電力を削減」、セミコンポータル (2021/10/20)

(2022/03/09)

月別アーカイブ