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半導体株が再び上昇、5GやAIに期待集まる

半導体市場が8月も好調で、半導体関連株が上昇している。米国の「華為科技たたき」によってSamsungスマートフォンの好調さが明らかになった。長期的に半導体をけん引する5GもAIでは、従来のムーアの法則通りに微細化が推進され、7nm以降のEUVレジスト市場を狙った投資も相次ぐ。5G+AI+ビッグデータ解析+クラウドでデジタルトランスフォーメーションを推進する実証実験結果も出てきた。

半導体関連企業として、製造装置・検査産業の株価上昇が目立つ。10月9日の日本経済新聞によると、10月8日の東京株式市場では、SCREENホールディングスが前日比8%高をはじめ、アドバンテストの5%高、東京エレクトロン4%高、ディスコ4%高など軒並み高値が付いた。アジア市場でもTSMCが2%高、米国市場でもフィラデルフィア半導体蟷愎堯SOX)は9月上旬に付けた最高値の98%まで回復している。Intelは華為科技への輸出が許可され、9月下旬に下落した株価が回復している。

Samsungの2020年7~9月期の業績が速報値だが増収増益だった、と9日の日経が報じた。売上額は前年同期比6.5%増の66兆ウォン(6兆420億円)と過去最高の17年10〜12月期に並んだ。営業利益も同58%増の12兆3000億ウォン(1兆1260億円)と好調だ。原動力となったのはスマホ事業で、ネット販売を強化したためと見ている。中国の華為に代わり再び世界市場で伸ばしたようだ。中印の国境紛争で小米やOppoなどが不買運動によりSamsungがトップに返り咲いたとしている。Samsungのスマホだけで半導体市場が好調という訳ではないが、今後の長期的なけん引が5GとAIであり、Samsungもこれらを推進する。

国内では、富士通がMicrosoftと協力してローカル5Gを使って施設内から得られるデータをリアルタイムで可視化するシステムの有効性を検証したと8日発表した。富士通は国内で最初にローカル5Gの免許を取得し、同社の新川崎テクノロジースクエアで実験してきた。この構内にローカル5Gネットワークを構成し、エッジコンピューティングによる映像分析、リアルタイム処理を実現し、それをクラウドで一元管理するというシステムだ。映像の分析はMicrosoftの「Azure IoT Edge」プラットフォーム上で行い、富士通が開発したモノづくりのプラットフォームCOLMINAを使ってデータを可視化した。全てのデータはクラウドプラットフォームであるMicrosoft Azureで管理する。

農機具のクボタは、天候や生育状態も含めたスマート農業の自動運転可能な農機具を開発するため、Nvidiaと戦略的パートナーシップを結んだ。スマート農業ではカメラと知能化が欠かせない。車両内で遅延なく動作するにはエッジAIでの画像認識が必須で、そのためにAIチップ(GPU)とAI開発プラットフォームを持つNvidiaと組んだ。


5GやAIでは先端の微細化技術が欠かせない。7nm以降、EUVは必須となるため、国内の富士フィルム、住友化学が続々EUVレジストに参入した、と10日の日経が伝えた。富士フィルムは静岡県の工場に45億円を投じて設備を導入し、21年中にもEUVレジストの量産を始めるという。住友化学も22年度までに大阪市の工場で開発から生産まで手掛ける体制を構築するという。

5G向けの半導体では、日本勢は弱いが、村田製作所に代表される電子部品では強い。特に小型化・大容量のコンデンサではアジア勢は追いつけない。積層セラミックコンデンサ(MLCC)では大きさが0.25mm×0.125mmで静電容量0.1µFという製品を昨年暮れに発表し、今年量産した。肉眼で見えないほど小さなコンデンサでこの容量はスマホ向き。スマホでは電子部品やICチップは小さければ小さいほど、電池の面積を大きくできるためだ。スマホは高機能になればなるほど消費電力は上がるため電池を大容量にして持ち時間を長くしている。結局、リチウムイオン電池の高密度化の進展がICや電子部品と比べかなり遅いため、半導体や電子部品に高集積、小型化の要求が迫られてくる。

東京大学の森川博之教授が10日の日経で指摘している通り、5Gは進化し続けることを忘れてはならない。今の5Gと10年先の5Gの性能は異なるため、10年先の進化した5Gを見据えて将来を深く洞察することが大切だ、と指摘する。5Gで日本が出遅れたと言って卑下することはない。むしろ5Gでも日本は十分勝てることを認識すべきであろう。

6日の日刊工業新聞は、半導体ストレージに特化するキオクシアホールディングスが、9月末に延期を決めた東京証券取引所への上場を最短で12月に計画していると、報じた。中国華為への出荷再開を米商務省に申請中だが、四日市工場への新棟建設の前倒しなど訴求し、株価の高値安定を狙う。想定価格が高すぎると当初見られた声に対応するため、出荷再開と、旺盛な設備投資での成長シナリオを描く。ただ、世界の大手半導体メーカーは、工場を一カ所に集中させることはできるだけ避けてきた。リスク分散のためだ。岩手工場でも生産していることは好材料だが、再び四日市に集中させることは、地震や災害が増えてきた日本ではリスクを伴う。リスクは、想定価格への懸念材料の一つでもある。

(2020/10/12)
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