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半導体業界が回復期を迎え、攻めの動きも出てきた

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世界の半導体市場が回復に向かっていることが明確になってきた。11月16日の日本経済新聞は、世界の大手半導体メーカー10社の動向をまとめた所、2019年第3四半期の純利益は4四半期ぶりに増益に転じた、と報じた。半導体をけん引するメモリが回復の兆しが出てきたことが大きい。中国もこれから攻めの姿勢を見せ始めた。日本は量子力学の応用に力を入れるニュースが多い。

ここでの大手半導体メーカーとは、時価総額(株式発行数×株価)の上位10社としている。第2四半期までの不況はメモリ価格の下落と中国市場の軟調によるものが大きいようだ。10社の中に景気後退の原因であったメモリ大手3社(Samsung、SK Hynix、Micron)が含まれているため、完全に回復したわけではないものの、回復に向かっていることは確かだ。

16日の日経は、先週電話会見があったNvidiaの会計年度の第3四半期(8月〜10月期)も好調で、次の第4四半期(11月〜20年1月)は、クラウド企業が持つデータセンター向けの販売がさらに大きく伸びると同社CEOのJensen Huang氏は見ているという。Intelの全社売上額は前年同期比フラットであるが、データ中心ビジネス部門の売上額は前年同期比6%増を示した。AMDも第3四半期は前四半期よりも売り上げを50%伸ばしたとしている。各社ともAI(ディープラーニング)需要が高まっており、それらの市場に向けたCPU、GPU、FPGAなどが成長しているとしている。

ファウンドリトップのTSMCも回復の手ごたえを感じており、特に7〜9月期の利益は前四半期比5割増だとしている。TSMCのビジネスの中で7nm/10nmといった超微細化技術は売り上げの3割も占めており、利益の源泉となっている。ここまでの微細化は5G向けのスマトフォンのアプリケーションプロセッサやモデムが必要としており、次世代通信である5Gの需要だとしている。この結果、19年の設備投資額を従来の100~110億ドルから140~150億ドルへと増額した。

メモリ需要も復活する方向にある。13日の日経産業新聞は台湾のメモリモジュールメーカーADATA TechnologyのSherry Chen CEOのインタビュー記事の中で、「データセンター需要が減少したのは各社が在庫を抱えすぎたからだ」というコメントを載せ、在庫は7〜9月期でほぼ解消されたとしている。サーバ向けのDRAMの伸びは30~40%、NANDフラッシュのそれは30%だという。

同日の日経産業は、ストレージ用NANDフラッシュの取引価格が7~9月から上昇に転じていると報じた。スマホやパソコン向けのNANDも7,8,9月と3カ月連続で値上がりしているという。DRAMメモリは、20年1月のWindows 7のサポート終了前に駆け込み需要が起きたとして半導体メモリの回復様子を伝えている。

回復期が訪れると企業は攻めに転じる。中国の華為科技は、自社の技術者に対して総額300億円の報奨金を支給し、エンジニアを鼓舞する。主に研究開発や部品調達で内製化に関わった2万人が対象だと14日の日経は報じた。中国の政府系大手ファンドの紫光集団は、幹部にかつてエルピーダメモリ社長だった坂本幸雄氏を招へい、高級副総裁に起用すると発表した。紫光集団は、中国の通信用半導体ファブレスのSpreadtrumも買収し傘下に収めている。

NTTは、米航空宇宙局(NASA)や米Stanford大学などと共同で、光通信技術を応用した新しい方式の量子コンピュータの開発に乗り出すと14日発表、15日の日経が報じた。研究には、レーザ技術に強い米CalTech(California Institute of Technology)など米国とオーストラリアの6つの有力大学とNASA、カナダの量子コンピュータ関連企業の1Qbitが参加する。NTTが開発に成功した「量子ニューラルネットワーク(QNN)」というタイプのコンピュータを基盤に10年後の実用化を目指すとしている。

NTTはまた、光で動作する新しい原理の半導体を開発するための業界団体を20年春にも設立すると発表した。MicrosoftやIntel、ソニーなど国内外65社と連携するとしている。これは14日の日経が報じたものだが、その詳細は不明である。

13日には日経に「量子技術競争、日本も参戦、NTT、NASAと計算機、富士通など商用化」と題した記事が掲載されたが、量子コンピュータと言っても、超並列処理を特長として量子力学の重ね合わせ原理を利用するゲート型の量子コンピュータと、カナダのD-Waveが開発したような、磁性体のIsingモデルによる量子アニーリング技術を用いる量子コンピュータ、さらに量子力学の不確定性原理を利用する量子暗号などがある。どの量子力学の技術なのかは記事を読んでも明らかではないが、日本政府は量子暗号の通信システム導入に向けた予算を補正予算として盛り込むという。

(2019/11/18)

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