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ワイヤレス給電がIoTから超音波生体給電にも及ぶ

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ジャパンディスプレイ(JDI)の支援から中国の嘉実基金管理グループが離脱を決めたことで、JDIは再建計画の抜本的な見直しを迫られることになる。一方、ローテクの液晶ディスプレイではなく、5G、IoT向け無線給電、生体給電など、次世代技術のワイヤレス給電のニュースが相次いだ。

9月27日の日本経済新聞によると、嘉実基金は、中国と香港の企業連合が結んだ支援契約800億円の内の630億円という大きな金額を支援することになっていた。6月には台湾2社がこの支援から離脱し、今回、嘉実グループも降りたことで、JDIの再建はますます難しくなってくる。そもそも、液晶ディスプレイの生産工場の主役は、とっくに日本から韓国・台湾を経て今や中国に移っている。韓国のSamsungは液晶ではなく、量子ドットと呼ぶ新しいバックライト源あるいはディスプレイに約1兆円の投資を行うことを表明しており(9月25日の日経)、ローテクになった液晶から新ディスプレイ技術へと付加価値を追求している。日本のJDIはその日暮らしの運転資金に困っており、もはやこれまでという状況を中国グループに見透かされた感じだ。ローテク液晶ディスプレイにはもはや付加価値はなくなっている。

これからの成長分野は5GやIoTに使うワイヤレス技術であり、AIという機械学習である。市場調査会社の矢野経済研究所は、次世代通信規格5Gサービスの契約数が2025年に世界で41億件にのぼる見通しだと26日の日経が報じた。25年には中国の契約数が世界市場の1/3を占める15億件、米国は4億件、欧州連合は8億件に達すると見込んでいる。

26日の日経産業新聞は、IoTの電源として、エネルギーハーベスティング技術の一つである無線給電技術にパナソニックや、スタートアップのスペースパワーテクノロジーズ(SPT)などが開発にしのぎを削っている、と報じた。エネルギーハーベスティング技術は、電池や電源ケーブルの要らない、自然界の光(太陽電池)や電波、温度差、振動などを利用して電源にしようという技術である。パナソニックは、マイクロ波に交流電力を載せて数メートル離れた地点から電力を供給するというもの。すでに英国では、スタートアップが実験できるようにロンドン市内で給電用の無線網を構築している。パナソニックは2020年度をめどに実用化するとしている。SPTは、金属加工機のドリルに振動センサを取り付け、そのセンサの電源に無線給電を利用するという。

IoTのプラントへの応用では、JSRや横河電機がプラントの保守・管理にIoTを使い、収集したデータの分析による故障予測や修理期間の短縮をめざす、と25日の日経が報じた。JSRは、NTTやアクセンチュアと組み、千葉工場で実証実験を進める。プラントに設置したセンサから温度や振動などのデータを常時収集し、点検記録をデジタル化する。さらに鹿島工場では、ドローンに搭載した高精細カメラでプラントの表面を撮影する実験を始め、集めた画像データはAIを使って分析し、腐食などの状況を調べる。保守コストは年間数億円削減できるとしている。横河電機は、AI開発のスタートアップ、Hmcommと組み、特殊な集音器で集めた音と、化学品の流量との相関を分析するソフトを開発、石化プラントのパイプラインの詰まりなどを予測するサービスを始める。

日立製作所はAIを使ってブランドの無許諾使用などを検出するサービスを10月1日に始める。企業名やロゴが無断で使われる場合に対処するため、日立はAIを活用してネット上のブランド侵害を検知し、契約企業に報告する。

医療機器では新しい動きがある。アステラス製薬は、極小の埋め込み型医療機器を使った生体センシングや治療で、米スタートアップのiota Biosciencesと共同研究開発契約を締結した、と24日の日刊工業新聞が報じた。人体には電磁波が入りにくく、体に埋め込んだ医療機器を充電できない。iotaは超音波を利用し電力供給と無線通信を行う独自技術を保有しており、超音波に電源電力を重畳し、人体内の医療機器に届ける技術であろう。

(2019/09/30)

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