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車載市場を狙った動きが活発に

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先週、中国経済が予想以上に景気が悪化していることを週間ニュース分析で伝えたが、これは昨年の第4四半期(10〜12月)の業績がひどく悪かったものの、年明けには中国が戻りつつあるという情報も入ってきた。この2年間DRAM高騰→スマホも高騰で売れず、という図式が崩れ始めているが、スマホ以外の5Gや車載に目を向けた動きが出ている。

スマートフォンの景況が戻ってきたかどうかはまだ結果が出ていないため、言及できないが、少なくとも将来の5G用の半導体チップは間違いなく不可欠である。華為科技の子会社でファブレス半導体のHiSiliconが新しい5G用のチップ「Balong 5000」を開発した、と1月25日の日本経済新聞が報じた。詳細は不明だが、スマホ用のチップらしく、今の段階では中国の意図する5Gとはかけ離れているように見える。というのは、中国の5G通信ではLTE(4G)とは両立しない、スタンドアローン方式を使う予定で通信インフラの構築を進めているからだ。このBalong 5000チップは、スマホ用に2G、3G、4Gにも対応するということで、この5Gは通信インフラが対応する真の5Gではなさそうだからだ。2月末にスペインのバルセロナで開催されるMobile World Congressで発表されるという。

いずれにしても5Gの周波数帯域が各国で異なっているため、今どこが進んでいるとかいないとかは、まだ明確に言えない状況だ。日本でも周波数帯として、3.7GHz、4.5GHz、28GHzの割り当てが昨年秋に決まったばかりで(参考資料1)、通信業者への周波数帯の割り当てはこれから決まることになる。

車載関係では、24日に日刊工業新聞は、ロームが車載センサ向けの信号処理ICを開発すると報じた。車載向けセンサメーカーは、加速度や温度、ジャイロ、磁気、圧力などのいろいろなセンサをひとまとめにしてセンサモジュールを開発するが、各センサからの信号の同期を取りながら、各信号の持つ意味を理解し、クルマがどのような状態になっているかを判断し、マイコンへつなげる。センサ信号をまとめる信号処理ICはセンサフュージョンICと呼ばれ、クルマの状態をより精密に把握することができる。

「ロームはこれと併せ、センサモジュールの開発効率を高めるソフトウエアも発売する。従来は1~2年かかった開発期間を1カ月程度に短縮でき、数億円の開発費削減につながる。19年中に発売し、センサメーカーなどに拡販する」と日刊工業は述べている。ロームは半導体チップを販売するだけではなく、ソフトウエアも販売するソリューションプロバイダへ変身するように懸命に取り組んでいる。

東芝デバイス&ストレージ社が車内のECU同士をつなぐ通信バスICとしてイーサネットTSNをはじめとして3種類製品化したと22日の日経産業新聞が報じた。TSN(Time sensitive network)は、Ethernetをベースにして機器同士をつなぐ場合、それぞれ完全に同期をとらなければならない技術。工場の通信ネッワークにTSNを導入しようという動きはあるが、まだ動きは鈍い。しかし、クルマ用ではさまざまなセンサやビデオ画像などのデータに同期をとる必要性が今後望まれてくることから、案外クルマ用でTSNが最初に使われる可能性があるかもしれない。

また、ソニーがイメージセンサを欧米でも開発する体制を作ろうというニュースが26日の日経に掲載された。これも実は車載狙いである。これまでソニーはスマホ用のイメージセンサで大きなシェアを獲得してきたが、車載向けのシェアは10%程度しかない。クルマではサラウンドビューモニターに4台、フロントおよびバックモニターで2台、死角を解消するセンサが2台など1台の車に10台くらいのカメラが今後装着されることははっきりしている。ソニーが車載用で強くなるためには単なる性能が良いだけでは済まない。欧米に開発拠点を設けることは、極めて理にかなっている。このニュースでは人材に焦点が当たっているが、CMOSイメジャーの開発には、車載を理解した技術力も欠かせない。

参考資料
1. 5G周波数は3.7/4.5/28GHzでの割り当てに決まる (2018/11/12)

(2019/01/28)

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