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中国経済変調の影響が出てきた

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中国経済が予想以上に悪化している。その影響を受け、中国向けにビジネスを展開してきた日本、台湾、韓国の部品サプライヤやEMS、ファウンドリなどが影響を受けている。こんな記事が先週駆け巡った。長期的な新分野としてヘルスケア関連のセンサの動きも活発化している。

「2018年11月、12月はガタン、ガタンと落ち込んだ」。こう述べたのは日本電産会長の永守重信氏、と1月18日の日本経済新聞は伝え、中国での需要が急減し、車載向けや家電向けのモータ事業が急激に悪化している、と報じた。2019年3月期における日本電産の収益は、最高益予想から一転、6年ぶりの最終減益になる見通しだという。同社の重点事業である車載用モータの中国での11月の生産は前年同月比で3割も減少した、と吉本浩之社長のコメントを掲載した。日本電産は、この落ち込みを米中貿易摩擦に端を発した経済の不確実性が世界経済に深刻な影響を及ぼしていると見ている。

台湾のIT19社の2018年12月業績は2年ぶりに減収の前年同月比1.3%減になったと17日の日経産業新聞は伝え、iPhoneをはじめとするスマートフォンが中国市場で苦戦しているとした。iPhoneなどの製造を受託している鴻海精密工業の消費者向けが悪く、12月は同8.2%減となった。TSMCは0.1%減でとどまったが、DRAMの南亜科技は価格下落の影響で同18.8%の減収となったとする。

TSMCは、12月こそ横ばいだったが、19年1~3月の売り上げ見通しを前年同期比9~10%も減るとの見通しを明らかにした(18日の日経)。営業利益は同2割程度減少するとしている。高級スマホと仮想通貨の落ち込みが厳しいという。ただ、同社はスマホだけではなく、NvidiaやXilinxなどの未来志向のIT/エレクトロニクス向けのチップ製造も請け負っており、2018年通期では7%増にとどまっている。2019年はわずかな増収にとどまると見ており、従来の5~10%増の見通しから下方修正した。

中国におけるスマホ市場は17年、18年から低迷していた。例えば、2018年11月のAFP BB Newsによれば1~9月の中国内での携帯(ほぼスマホ)出荷量が前年同期比17%も下がったという(参考資料1)。このため、華為や小米、Oppoなどの中国スマホメーカーは外国市場への売り込みを積極的に展開しており、2018年第3四半期における出荷台数の変化は前年同期比でそれぞれ32.5%増、19.1%増、0.6%減と健闘している(参考資料2)。

仮想通貨のマイニング用コンピュータチップも不調になってきた。仮想通貨は、ブロックチェーン内での取引台帳をいち早く記述したものにビットコインがもらえる仕組みであり、専用コンピュータのためのチップ開発が18年前半まで活発になっていた。仮想通貨は総発行量が一定となって制限されているため、新たに入手するためには台帳へ記入してもらうしか方法はない。仮想通貨のデータには全て暗号がかけられており、暗号を解き台帳に記述しなければならない。海外からの送金手数料がほとんどかからないことから中国で仮想通貨の取引が活発に行われていた。しかし、一時2万ドル前後まで上がっていたビットコインの価格が4000ドルを割り込み、マイニング業者が7000台ものコンピュータを手放すといった事態が起きたと18日の日経は報じた。

さらに韓国でも半導体輸出がこの12月に9%減少し、中国向けが大幅に落ち込んだと18日の日経は伝えた。2018年12月の輸出額は前年同月比9%減の89億6000万ドルであり、中国向けの輸出は、2割減と大きい。メモリの輸出が1割減ったとしている。DRAM単価が直近の3カ月間で2割減少したことが響いたと見ている。

長期的な成長分野としてヘルスケア・医療分野がある。Appleは、ウェアラブル端末Apple Watchの最近機種に心拍数に加えて心電図の測定機能も設けたが、ヘルスケア分野で新サービスを立ち上げることをTim Cook CEOが示唆した、と16日の日経が報じた。また、シチズン時計はウェアラブル端末を開発するベンチャーのヴェルトと提携、IoTプラットフォーム「Riiiver」を開発・運営する、と21日の日経が報じた。

参考資料
1. 中国、今年9月までの携帯出荷量 前年比で17%落ち込む、AFP BB News (2018/11/02)
2. Global Smartphone Shipments Tumble 8 Percent in Q3 2018、Strategy Analytics (2018/11/01)

(2019/01/21)

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