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スマホを値上げしても出荷台数を維持できたApple、時価総額1兆ドル突破

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米国時間7月31日、Appleを巡る二つのニュースが発表された。市場調査会社のIDCから世界の出荷台数でAppleが2位から3位に落ちた、という負のニュースが出た一方、Appleが時価総額1兆円を突破した、という正のニュースも発表された。どちらも正しい。なぜ評価が分かれるように見えるのか。その大本の原因はメモリバブルにある。

スマートフォン全体では、2018年第2四半期に前年同期比1.8%減の3億4820万台となった。トップのSamsungは10.4%減の7150万台だが、2位には同40.9%増で5420万台の華為科技が躍進、Appleは0.7%増のほぼ横ばいだったため3位に甘んじた。出荷台数は4130万台であった。スマホ出荷台数全体がマイナスになる中で、0.7%増は悪くない。それでも新聞やニュースリリースの見出しは、Appleが第3位に転落したようなイメージを抱かせる。

ところが、同じ日にAppleが発表した決算報告では、売上額が前年同期比17%増の532億6500万ドル、純利益が32%増の115億1900万ドルとなった。iPhoneの販売台数は伸びなかったが、スマホの単価が上がったため、売上額がその分上がった。

スマホの値上がりは、何が影響したのか。AppleのiPhone 8とiPhone 8 Plusとでは価格差は1万1000円も違う。それぞれの主なスペックの違いは、メモリと画面サイズ、バッテリ容量である。このうち、液晶ディスプレイ画面が4.7インチに対して5.5インチだからさほどの違いはない。メモリはiPhone 8が2GB、iPhone 8 Plusは3GBと5割大きく、バッテリ容量も5割近い。メモリ価格が上がっただけで価格差は大きく跳ね上がる。パソコンも同様だ。メモリモジュールを1段階増設すると価格は1万円程度上がる。

そのメモリの単価が2016年7月を底に、2倍以上上がっている。例えば、DIMMモジュールDDR4-2133(8GB×2)は2017年7月に6557円だったが、2017年11月に1万9,000円強と3倍近く上がっている(参考資料1)。ほかのメモリモジュールでも底値7500円くらいのモジュールが2万円近くになっており、大きく値上がりしている。

DRAMの単価が2倍上がると、スマホメーカーもメモリ価格を上げてきた。このためスマホの単価は値上がりした。こうなるとスマホの出荷数量は伸びなくなる。Appleのスマホ価格が値上がりしてもiPhoneの数量が落ちなかったということは、それだけ商品に魅力あったということになる。第2四半期におけるiPhoneの売れ筋ランキングはまだ発表されていないが、IHS Markitの調査による、2018年第1四半期における機種別スマホのランキングでは、1位がiPhone Xの1270万台、2位はiPhone 8の850万台となり、SamsungのGalaxyとしてGalaxy Grand Prime Plusが3位に入っている。しかも4位がiPhone 8 Plusという順位だからAppleは検討しているといえそうだ。SamsungはAppleと比べ、スマホの種類が圧倒的に多いため、数量ではいまだにトップに君臨している。

だが、中国市場は少し事情が異なる。2018年第2四半期における中国市場でのスマホの出荷実績は(参考資料2)、トップが華為科技で、第2位がOppo、3位Vivo、4位小米、5位がAppleとなっている。中国は国産品を推奨している国であり市場であるため、中国勢が上位を占めることは理解できるが、外国勢としてはAppleがトップとなっている。かつて第1位を占めていたSamsungは、今では中国で市場シェアが1%にも満たないという。加えてインドでも1位の座から滑り降りることになったと、8月1日の日経は報じている。

結論を言えば、スマホはメモリの値上げによりスマホを値上げしても魅力ある商品なら出荷台数は減らないことをAppleが示したことになる。これによって株価が値上がりし、時価総額が1兆ドルを突破した、という訳である。

参考資料
1. 値上がりは続くが、容量はケチれない。2018年、メモリ購入の条件 PC Watch (2018/01/09)
2. China Smartphone Market Declined for the Fourth Consecutive Quarter in Q2 2018 (2018/07/30)

(2018/08/06)

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