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ギガフォトン、EUVの出力250W達成

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小松製作所の100%子会社であるギガフォトンは、EUVリソグラフィの実用化レベルに近い出力250WのEUV光源を開発したと7月6日発表した。EUVは今やオランダのASMLしか手掛けておらず、同社が微細化技術を先行している。先週は久しぶりにリソグラフィ装置の発表があり、キヤノンが半導体向けのリソグラフィ装置を2機、発表した。

EUVの実用化がこれまで遠かった最大の原因は、光源の出力が弱く、長時間露光せざるをえなかった。このため、1時間当たりのウェーハ処理量(スループット)が遅く、ArFエキシマレーザーを2度露光するダブルパターニング技術の方がスループットは高く、EUVの出番はなかった。しかし、微細化が10nmを切るようになると、もはやArFレーザー露光でさえも3回あるいは4回露光してようやく1回のマスクリソグラフィ工程になるなら、やはりスループットは落ちてしまう。EUVの光源波長は13.5nmであるから、OPC(光学的近接補正)などを駆使すればほぼ1回の露光で済む。ようやくEUVの出番がやってきたといえそうだ。

今回、ギガフォトンが開発したEUV光源は、発光効率4.0%で出力がこれまで最高の250Wを記録した。ただし、この出力値はピーク値であるため、まだ安定的に250Wを得ている訳ではなさそうだが、出力を130Wに落とすと、連続119時間連続運転にも成功している。つまり、出力が130Wならもう実用化レベルに達したといえる。

今回のピーク250Wの出力が得られたのは、これまでに培ってきた、直径20µm以下の微小なドロプレットの供給技術や、固体レーザーによるプリパルスとCO2レーザーによるメインパルスの組み合わせ、などの技術(参考資料1)を磨き上げることで達成した。これまで同様、NEDO(新エネルギー・産業技術開発機構)の支援を受けている。

参考資料1に示すように、2年前にセミコンポータルが報道した時は、ピーク値92Wで100Wにもう一歩、という段階だったが、昨年2月にはピーク140W (参考資料2) を発表した。今回の250Wは着実に実用化レベルに歩んでいるといえそうだ。2年前92Wのピーク値だったが、今や130Wの連続安定出力を達成したからだ。光源は唯一のユーザーであるASML社で検証され、実用化へと進められていく。

半導体技術はもはや微細化だけではないことがはっきりしてから、IoT端末のセンサやアナログ、マイコン、パワーマネジメント、RF回路など微細化がまだ必要ない回路に向けたICの市場も広がっている。IoTがその一つだが、キヤノンは200mm以下のウェーハに向けた、KrFエキシマレーザーステッパ装置「FPA-3030EX6」を発売した。アナログやセンサだけではなく、サファイアやSiC、ガラスなどSi以外のウェーハ基板の搬送にも対応しているという。

キヤノンが発表したもう一つの機種は、FO-WLP(ファンアウト-ウェーハレベルパッケージング)向けに、反り返ったウェーハ上に再構成用の配線パッドを形成するのに使うリソグラフィ装置「FPA-5520iV」。今後、FO-WLPパッケージの上にメモリをPoP(パッケージオンパッケージ)で重ねる技術がスマートフォンなどに使われようとしているが、このリソ装置はFO-WLPそのものに使う。PoPパッケージを最終形態とする訳だから、1枚のウェーハは極めて薄い。このため反りやすい。だからこそ、搬送システムと基板を載せるステージの吸着方式を全面的に改良した。もちろん3D-ICのTSVやピラーバンプなどのリソグラフィにも使える。

7月6日の日経産業新聞は、キヤノンの液晶パネル露光装置の技術を天体観測の反射望遠鏡の鏡に使うという記事を掲載した。ハワイのマウナケア島に直径30mの開口部を持つ望遠鏡を設置するプロジェクトで、主鏡492枚の内キヤノンが1/3を担当する。凹面鏡の表面凹凸の誤差は1.5µm以下と極めてスムーズな面を加工する。キヤノンは液晶の大面積リソ技術のノウハウを活かす。

参考資料
1. EUVリソグラフィ光源、100Wが射程内に (2014/07/01)
2. EUVリソが量産に向けシンポ、TSMCが1000枚/日、ギガフォトン140W (2015/02/27)

(2016/07/11)

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