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東京エレクトロンとAppliedの統合解消でもしぶとい株価

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4月末の週のビッグニュースは、東京エレクトロンとApplied Materialsとの統合が解消されることだった。本ウェブでは、「AppliedとTELとの統合計画ご破算を分析する」と、「『TELの社員は素晴らしい、今後も共同可能』Applied MaterialsのCEO」の2本を掲載したが、皮肉にも4月に最もよく読まれた記事は、TEL東会長の統合の意義に関するものだった。

経営統合がご破算になったことで、東京エレクトロンの株価が下落というニュースが4月30日に流れた。日本経済新聞の夕刊に掲載されたものだが、前日比16%減の6498円まで下落したという。5月7日現在は、6600円前後で落ち着いているが、統合解消が発表された4月27日15時までは7700円前後で安定に推移していた。日経によると、同社の「株は、統合予定の相手で半導体製造装置の世界トップ企業、米アプライドマテリアルズの株高が引っ張る格好で上昇していた」、という。さらに、「東エレク株に売りが膨らんだ理由は2つある。1つは統合による相乗効果への期待がはげ落ちたことだ。それ以上に株価に響いたのは、アプライドと結ばれていた『株価の赤い糸』が切れたことだ。統合を想定して2社の株価は連動してきた」と分析している。

東京エレクトロンの株価が下がったということは、大量に売られたことの裏返しでもある。それ以前は5日間の移動平均で100万株にも満たない取引だったが、統合発表の後には同1600万株程度の取引で売られた。ただし、日が経つにつれ、取引の株数は減少している。すなわち、取引株数が減少している現在、株価は6600円前後で安定している、という状態だ。これは、Appliedとの統合に期待して株価も上がっていたが、統合解消により下がったものの、その影響は暫定的であり、むしろ東京エレクトロンに期待する根強い声が多いということだろう。

その証拠に、2012年6月からの毎月の株価を見てみると(図1)、統合が発表される1年以上も前の2013年1月ごろから東京エレクトロンの株価は上昇傾向を続けてきた。発表のあった2014年7月から急に株価が上昇した訳ではない。むしろ、取引株数は減少している中で株価が上昇してきた、という現象が起きていた。これは、東京エレクトロンの根強いファンが株式を持ち続けてきている、ということではないだろうか。ただし、5月の連休が終わった直後であるため、来週以降まで見ておく必要があるだろうが。


図1 東京エレクトロンの3年間の株価推移 出典:東京エレクトロンホームページ、元の情報提供はストックウエザー株式会社

図1 東京エレクトロンの3年間の株価推移 出典:東京エレクトロンホームページ、元の情報提供はストックウエザー株式会社


4月末のニュースで、日本のテクノロジー産業にとって明るい希望的な記事があった。4月30日の日経が報じたもので、大学発のベンチャーに投資する新しいVC(ベンチャーキャピタル)が出てきたことだ。出資するだけではなく、口も出して一緒に経営するという動きである。東京大学エッジキャピタルやビヨンドネクストベンチャーズ、日本戦略投資などが大学発ベンチャーを後押しする。大学の研究者は市場やユーザーとの人脈などは乏しい。また財務的な知識も少ない。ベンチャーのビジネスを軌道に乗せるまで、経営に関与し、事業化のメドを見分けるところまで踏み込む。これまでのVCと称する企業は、事業が軌道に乗ってから出資するため、ベンチャーキャピタルというよりはファンドに近かった。日本でもシリコンバレーで見られるようなエンジェルと呼ばれるベンチャーキャピタリストが出てきたことは極めて心強い。

(2015/05/07)

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