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MWC開催を受けスマホのニュースが盛りだくさん

先週は、モバイル通信業者(キャリヤあるいはオペレータとも呼ぶ)のための展示・講演会であるMWC(Mobile World Congress)(図1)が開かれ、相変わらずスマートフォンなどのモバイル端末の報道ばかりが目についた。一方で、日本のモデム半導体開発共同会社アクセスネットワークテクノロジ(ANT)が解散するというニュースが対照的だった。

図1 MWCの会場 2013年からFira Barcelonaに会場が移った

図1 MWCの会場 2013年からFira Barcelonaに会場が移った


日本のメディアがこぞって報じたMWCからのニュースは、低価格スマホ向けのOS、Firefoxを搭載し、中国Spreadtrum社のアプリケーションプロセッサを使えば、25ドルのスマホが作れると、Mozilla財団が発表したこと。OSを軽くし、メモリ容量を減らしているという。Mozilla財団は、アプリケーション開発のためのソフトであるアプリケーションマネージャーを発表しており、アプリ開発のパートナーを募集している。いわば、Firefoxのエコシステム構築を目指している。

日経産業新聞はMWCからのニュースとして2月28日に、4K動画を撮影できる機能を搭載したソニーのエクスペリアZ2と、29ユーロと格安のノキア製スマホ(2.4インチ画面)、サムスンのウェアラブル端末ギア2などを紹介している。MWCでは、通信キャリヤやクラウド業者などのSDN(software defined network)をはじめとしてクラウド上でのサーバーやネットワーク機器を採用する新しい動きがあったはずなのだが。

27日に日本経済新聞は、富士通とNTTドコモ、NECの3社からなるANTをこの3月までに打ち切ると報じた。ANTはスマホ用のLTEモデムチップを開発するためのファブレス半導体企業となるはずだった。昨年のMWCでは、最初のモデムチップのコンセプトを発表していた。LTEのモデムでは、QualcommやMediaTek、nVidia(英国のファブレスIceraを買収してモデム技術を入手)、中国のSpreadtrumやHiSiliconなどがひしめき合う。QualcommとMedeiaTekが圧倒的に強く、日本のANTの勝算はどれほどあるか、疑問視されてはいた。LTEモデムやRFは各国ごとに方式や周波数、帯域などが異なり、NTTドコモ向けのチップは他には売れない。このため、外国にもモデムチップを販売しようと思えばソフトウエアを取り換えるだけでモデム方式を変えられるSDR(software defined radio)方式が有力だ。しかし、ANTがSDR方式を採っていたかどうか、定かではない。

28日の日経産業では「スマホ半導体、共同開発断念」という見出しを付けていたが、スマホ半導体はモデムやアプリケーションプロセッサだけではない。簡単なハードウエア機能をスマホに追加する場合には低集積のFPGAが有効であることを旧Silicon Blue社(Lattice Semiconductor社に吸収された)が示していた(参考資料1)。27日の同紙はLattice社の新製品FPGAに関する記事を掲載している。

キヤノンがナノインプリント技術メーカーのMolecular Imprint社を買収したというニュース(参考資料2)を受け、東芝とキヤノンがナノインプリント技術で提携する、と27日の日刊工業新聞が報じた。2015年度に15nmプロセスのNANDフラッシュメモリの量産を目指すとしている。リソグラフィではキヤノンはASMLの後塵を拝し、NANDフラッシュでは東芝がSamsungを追いかけるという構図だ。どちらもトップを目指す。ASMLは新しいEUV装置を推進、リソ2位のニコンはArF液浸リソによるマルチパターニング技術に賭けている。キヤノンはナノインプリントに力を入れ東芝と共同で実用化を早めようとしている。

3月2日の日経には、自動車電装部品で世界トップに君臨するBosch社の日本法人社長とのインタビュー記事が掲載された。ヘルベルト・ヘミング社長は「日本の自動車メーカーが求める高い品質の部品を国内で開発して、これを世界中に散らばるボッシュの拠点で生産し供給していく」と述べている。日本で開発し海外へ販売するというビジネスは、高品質が求められ開発期間の長い自動車産業を相手にする場合には、今でも通用するモデルといえる。

参考資料
1. スマホやタブレットの新機能追加をFPGAでサポートするシリコンブルー (2011/07/19)
2. キヤノンがMolecular Imprint社を買収、ナノインプリント技術を入手 (2014/02/17)

(2014/03/03)
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