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キヤノンがMolecular Imprints社を買収、ナノインプリント技術を入手

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キヤノンがナノインプリント技術のベンチャー企業である、米Molecular Imprints社を買収することで合意した。このニュースが日本経済新聞朝刊に載った2月14日に、キヤノンもニュースリリース(参考資料1)を流した。

先週の金曜日、日経はこのニュースを一面トップで伝えた。Molecular Imprints社は、ナノインプリント技術を使うリソグラフィ装置のメーカーで、微細な半導体だけではなくハードディスクのパターニング用も狙っている(参考資料2)。キヤノンのニュースリリースでは、本年2月5日をもってMolecular社の連結子会社化について合意したと述べている。

キヤノンは、現在、KrFエキシマレーザー(波長248nm)とi線(波長365nm)のリソグラフィ装置を生産・販売しているが、微細化対応は遅れていた。ArF(波長193nm)レーザーを光源とするリソではオランダのASML、ニコンの2社が手掛けている。キヤノンは微細化レースにおいて脱落したと思われていた。今回、ナノインプリント装置を手にすることで、同社は再び微細化レースに参入する。

キヤノンのニュースリリースによると、同社は、2004年に20nm以下の微細加工に向けたナノインプリント技術の研究を開始したとする。セミコンポータルが2008年12月にMolecular Imprints社の戦略を紹介した(参考資料2)後の2009年以降、ナノインプリント技術を用いた次世代リソグラフィ装置の量産を目指して、Molecular社および大手半導体メーカーと共同で開発に取り組んできたという。

次世代のリソグラフィ装置として、ASMLがEUV(波長13.5nmのX線)露光装置の開発を進めており、ニコンは液浸のArFレーザーによるダブルパターニングを推進している。10nm技術がEUVかトリプルパターニングになるのか、まだ結論は出ていない。どちらも、1時間あたりに生産するウェーハ枚数、すなわちスループットが低いため、コストが下がらないという悩みを持つ。

ナノインプリント技術は、2008年時点でのMolecular社の思惑が外れ、22nmのNANDフラッシュに使われていない。量産機導入がやや遅れ気味であり、次世代のリソグラフィ装置の候補として最近、話題に上らなくなってきた。かつて、3大リソメーカーの1社であったキヤノンが今回、Molecular社買収を決めたことで、この技術が次世代微細化技術に浮上してくることになる。

もともと光学機器メーカーであるキヤノンはレンズを得意としてきた。ナノインプリント技術は、印鑑と同じ原理でウェーハ表面に凹凸を付けるため、基本的にレンズを使わない。しかし、キヤノンはレンズを活かしたカメラだけではなく、インクジェットプリンタや複合機などの分野にも手を広げてきた。リソグラフィ装置においても、レンズだけではなく、ステージの機構やロボティクスなどの実績がある。これらの技術を活かすことで、次世代リソ装置への再参入を決めたのであろう。成功を期待したい。

先週は、ソニーがCMOSセンサーを増産するというニュースを、日経が12日に報じた。350億円を投じ月産能力を25%増やすため、その生産拡張にはルネサスエレクトロニクスから購入する鶴岡工場を当てる、とする。日経は、ソニーが鶴岡工場の買収を決めた理由を、アップルから打診があったためと報じている。アップルは、iPhoneやiPadなどの製品に使っているメーカー名を公表しない。アップルに部品を納入するサプライヤもアップル向けを公言しない。このため、日経は「アップルが来年にも発売する新型iPhone向けに画像センサーの供給量を倍増させるとみられる」という表現をとっている。

参考資料
1. キヤノンによるモレキュラーインプリント社の完全子会社化について ニュースリリース、(2014/02/14)

2. ナノインプリントの量産化は22nm以降のNANDフラッシュ、ハードディスクから (2008/12/24)

(2014/02/17)

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