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スマホやタブレットの新機能追加をFPGAでサポートするシリコンブルー

「アップルは2007年に最初のiPhoneを出した後2011年のiPhone5まで5機種しか出してこなかったのに対して、サムスンは16機種ものスマホを発表した。これほど多様な商品開発に対応するにはFPGAしかない」。こう語るのは米FPGAベンチャーのシリコンブルー(Silicon Blue)社ソリューションマーケティング担当VPのDenny Steele氏。

図1 世代間のアプリケーションプロセッサ(AP)をFPGAでつなぐ 出典:Silicon Blue

図1 世代間のアプリケーションプロセッサ(AP)をFPGAでつなぐ 出典:Silicon Blue


アップルのiPhoneやiPadに使われているアプリケーションプロセッサは新機種ごとに開発されてきた。ところが、次々とアプリケーションプロセッサを開発するのは難しい。そこで、シリコンブルーが提案するのは、図1のように、開発中の新しいアプリケーションプロセッサ(Future AP)を市場に出すまでの間、現世代のプロセッサ(Current AP)を使い、機能をFPGAで追加することで「つなぎ」のプロセッサとする、という戦略だ。すなわち第1世代をCurrent APとし、第2世代のプロセッサをCurrent AP+FPGA、第3世代のプロセッサをFuture APとする訳だ。

だから、シリコンブルー社が狙うのは、次々と新しいスマートフォンやタブレットPCを生み出しているアジア市場である。こういった新しい携帯機器は消費電力を下げることがマストであるが、もともと低消費電力を得意とするシリコンブルーだからこそ、この市場を狙い、しかもアジアに特化することで成長を図ろうという訳だ。

2006年設立の同社にはアルテラやザイリンクス、ラティスセミコンダクター、クイックロジック、といったプログラマブルロジックICメーカーの経験者が多い。ザイリンクスやアルテラは通信インフラや工業用のハイエンド市場を狙っているのに対して、ラティスは工業用や自動車のミッドレンジ/ローエンド市場を狙っている。三つのメーカーとも、アジアの携帯機器市場に力を入れるシリコンブルーとは競合しない。

今回発表したFPGAは、40nmプロセスを使う製品名iCE40、コード名をLos Angelsと呼び、従来製品のiCE65と比べ、単位面積当たりの機能をロジックで2倍、I/O端子で1.5倍に増やした。さらにUSB2.0やMIPIインターフェース、LVDSインターフェースなども強化した。


図2 機能とインターフェース、I/Oピンを増やしていく 出典:Silicon Blue

図2 機能とインターフェース、I/Oピンを増やしていく 出典:Silicon Blue


iCE40には高速のHXシリーズと低消費電力のLPシリーズの2機種がある。HXシリーズはタブレット狙いで、前の機種iCE65と比べると、80%高速で、LPシリーズでさえ50%高速だ。携帯機器への搭載を狙っているため、BGAパッケージに実装したICは最小2.5mm×2.5mmから7mm×7mmの大きさまで6種類、揃えた。ピンピッチは0.4mmと小さい。

HX、LPシリーズとも、640ロジックエレメントから1K、4K、8K、16Kまでのロジックエレメントまで揃えている。1ロジックエレメントには、4入出力のLUT(ルックアップテーブル)とフリップフロップ出力が集積されている。一つの製品には、それぞれのロジックセルに加え、RAMとPLL、クロックマネージメントなどを内蔵している。

非動作時の消費電力は電源1Vで、LP640の15μWからLP16Kの150μWまでと低い(図3)。HXシリーズの最高機種HX16Kでは1.5mWである。


図3 今回リリースされた製品群 LPシリーズ(上)とHXシリーズ(下) 出典:Silicon Blue

図3 今回リリースされた製品群 LPシリーズ(上)とHXシリーズ(下) 出典:Silicon Blue


ファブレスである同社は台湾のファウンドリTSMCにプロセスを依頼し、アセンブリはASE(日月光半導体)に依頼している。

応用としてHXシリーズはタブレットPC狙いであるため、1080pで30Hzの出力を持つ。単一出力のLVDSは、525Mbpsのデータレートでビデオを転送できるため、前世代のアプリケーションプロセッサを使いながら、2画面化や、HD化などビデオ出力機能をこのFPGAを使ってアップグレードできる。

また、LPシリーズはスマートフォン狙いであるため、これからの新しい入力デバイスに備え、さまざまなセンサインターフェースを取りそろえている。携帯電話用のMIPIをはじめ、SLIMbus、UART、I2C、SPIなどがある。スマホではタッチスクリーンは当たり前。カメラからの距離を測る近接センサ、バッテリチェッカ、ジャイロセンサ、温度センサなど10個以上のセンサが求められる。このため、センサ用にはI2CやSPI、UARTなどのインターフェース、プロセッサとのやり取りにはSLIMbusなどの高速バスインタフェースを用意している。

(2011/07/19)

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