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東芝、モバイルビジネスに向けNANDフラッシュ新工場の起工式

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東芝は8月23日、四日市工場の第5製造棟の第2期工事の起工式を行ったと発表した。これまで伝えてきたように(参考資料1)、NANDフラッシュの3Dプロセスや次世代リソグラフィプロセス品などの製造を目的としており、2014年夏に竣工予定となっている。

東芝のニュースリリースによると、鉄骨5階建てで、延べ床面積18万7000平方メートル、建屋面積3万8000平方メートルという規模になる。生産開始は未定としている。

サムスンが3DプロセスのNANDフラッシュの量産開始を発表したため(参考資料2)、東芝もこれに応える形でニュースリリースを出したもの。24日の日本経済新聞は、新棟では現在最先端の19nmから16〜17nmへと微細化すると報じた。日経によると、東芝の3Dプロセスでは3Dメモリセルをサムスンの24段よりもさらに積み増しするようだ。

NANDフラッシュは長期的にも成長が約束された製品だ。スマートフォンやタブレットのようなモバイル端末のストレージに使われるだけではなく、ノートパソコンの中で唯一、成長が見込めるウルトラブックのストレージにも使われる。端末だけではない。モバイル通信ネットワーク機器は、データ処理・ルーティング機能と、制御機能を分離して、あらゆるスイッチを1台の装置で集中制御できるようなSDN(Software Defined Network)の方向に向かっている。加えて、データセンター市場では、演算・制御のサーバ機能と、ストレージ機能をそれぞれ分離する構造になるため、大量のストレージメモリが必要となる。さらに金融関係ではインターネット取引が活発になり、秒単位ではなく、ミリ秒単位を問題にし始めた。従来のHDDでは回転速度の限界により応答しきれなくなり、より高速の半導体メモリが求められるようになる。こういった要求はすべて、モバイル産業がけん引する。端末からインフラ系までNANDフラッシュが強く求められる訳だ。

モバイルビジネスはさらに拡大する。中国がLTEの商用サービスを年内に始めると、22日の日経が報じた。China Mobileをはじめとする中国通信オペレータ3社は2014年にかけて中国全土に50万ヵ所以上の基地局を新設するとしている。今後4〜5年間の投資額は8兆円規模になるという。中国の通信方式はTDD-LTEと呼ばれる独自方式だが、インドや中東などにも採用していく。日本でもソフトバンクがTDD-LTE方式を採用しており、ソフトバンク向けのスマホを生産している機器メーカーは有利になる。米国のAT&Tやベライゾン、日本のNTTドコモなどはFDD-LTE方式を採用しており、RF/モデム技術が全く違うため、ドコモ向けの端末しか製造していなかった企業には、中国、インド市場への参入は難しくなる。

新興国でインターネットを普及させるためにフェイスブックがサムスンやクアルコム、メディアテック、エリクソン、ノキア、オペラソフトウエアと共同で新団体「internet.org」を立ち上げた、と22日の日経産業新聞が伝えた。高効率のデータ圧縮技術の開発や、低価格スマホの開発技術などを公開・普及させることも検討しているという。この中に日本企業が入っていない点が気にかかる。

パソコンからモバイル端末へ大きくシフトしているトレンドによって、マイクロソフトとインテルが新成長戦略を模索している中、マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOが12カ月以内に退任することを発表した。インテルもCEOが代わったことはすでに述べたとおり(参考資料3)。これからはモバイルの波に乗ることが成長していくためには不可欠。そこで、モバイル産業全体を、端末だけではなくインフラ系も含めて、把握することが必要条件になる。社長交替は、パソコン時代の終わりを告げる象徴ともいえる。

モバイル→NANDフラッシュ→3Dプロセス用装置、といった関係から、7〜9月期の東京エレクトロン(TEL)の受注額が対前四半期よりも7%増加していると21日の日経が報じた。10~12月期の受注もさらに増えるとTELはみている。ニコンは、微細化を捨て450mmウェーハ開発を進めると23日の日経は伝えた。EUV開発はASMLの一人旅となったが、インテル、TSMC、サムスンが支援している。

最後に、21日の日経が富士通の半導体リストラ構想について報じている。富士通はニュースリリースを発行していないため、その真偽はわからないが、パナソニックとの統合は、設計・開発部門と、生産部門ごとに行う方向だという。また、生産工場である三重工場の200mmラインをすべて会津工場に集約、三重は300mmだけに特化して、TSMCに出資してもらうという構想だ。ここまで新聞紙上で訴えたとしてもTSMCが参加するかどうかは全くわからない。台湾IT業界の神様ともいわれるモーリス・チャン氏次第だろう。あるいはうがった見方をすれば、300mmラインだけにまとめることが三重工場を購入する場合のチャン氏の要件かもしれない。

参考資料
1. 東芝、エルピーダが設備投資を再開 (2013/07/22)
2. サムスン、3次元NANDを64個搭載したSSDを量産開始 (2013/08/15)
3. Intel、オッテリーニ氏が退任、新CEOと新社長が誕生 (2013/05/07)

(2013/08/26)

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