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アップルiPad向け部品メーカーの株価が軒並み上昇

先週16日にはアップル社の新型iPadが発売され、この端末に搭載されている部品メーカーの株価が軒並み上昇したというニュースが翌17日の日本経済新聞に掲載された。米国のアップル社製コンピュータや携帯端末の修理会社であるifixit社が新型iPadを分解したことから明らかになった。またパワーデバイスも話題に上った。

新型iPadの「売り」は高精細ディスプレイ。2048×1536画素とフルHD規格の解像度よりも高い。このディスプレイはサムスン製であり、噂されたシャープのディスプレイではなかった。NANDフラッシュメモリは東芝製であり、CMOSイメージセンサはソニー製だった。

17日の日経によると、アップル社は1月に部品・部材などの調達先企業のリストを公開しており、今回の新型iPadの発表において部品メーカーの株価が上昇した、という。東芝をはじめ、プリント基板のメイコーや、村田製作所、太陽誘電、フォスター電機などの日本勢や、海外企業でもサムスン電子やLGディスプレー、インテル、クアルコム、鴻海精密工業なども値上がりしているという。

8日に三菱電機がSiCトランジスタ/ダイオードを搭載したモータ駆動インバータ基板をモータに内蔵した試みを報道(参考資料1)したが、SiCによる装置の小型化の発表は日立製作所からも15日にあった。日立は鉄道車両のインバータモジュールにSiCを使い、従来製品の2/3に小型になったと日刊工業新聞が報じた。三菱電機は、パワーSiCトランジスタを駆動するためのドライバICを開発したというニュースもあった。出力1200VのICでパワートランジスタのゲートを駆動する。

パワーデバイスやマイコンなどカーエレクトロニクス市場が大きく変わりそうなニュースがある。18日の日経に掲載された記事だ。クルマのエンジンや部品を共通のモジュール方式にしてコストダウンを図ろうという動きである。これはドイツのクルマメーカー、フォルクスワーゲンが発表したモジュールアーキテクチャという考え方である。例えば小型車のエンジンを共通にして馬力の必要なクルマにはターボチャージャーを追加するだけで済ませようという。高級車の「アウディ」から「フォルクスワーゲン」に展開し、新興国向けの「シュコダ」や「セアト」などのクルマとも共有していく。

こういったモジュールアーキテクチャでは当然ながらECU(電子制御ユニット)もモジュール化しようという考えになる。ECUそのものもモジュールだという考え方はあるが、これまでクルマの中の用途によってECUを作り分けてきた。基本的なECUを作り、それに機能を追加するだけで別のECUができることができないだろうか。このためにはソフトウエアやハードウエアの開発ツールのカバー範囲を広げ、いろいろなECUに対応できるように広範囲のメニューを用意する必要がある。個別のECUを共通化するという考え方を今後検討していくことを考えるべきだろう。容易な道ではないが、それを実現できた企業こそ、次世代のカーエレ用デバイスを支配することになろう。

16日のMWC関係の記事(参考資料2)で紹介したが、中国の半導体の存在感が増してきたことを19日の日刊工業が伝えている。インテルやサムスン、ハイニックスが中国に半導体前工程工場を作ったことに加え、SMICの投資計画、華為独自のクアッドコアプロセッサの設計など、中国が安売り工場から実力のある工場へと変身していることを挙げている。一方、日経産業新聞はNECがスマートフォンで中国市場に再参入すると報じていたが、顧客のニーズが満たされていない領域として、防水・防塵を特長とするスマホをNECは考えているとしている。NECの成功を祈りたいが、防水・防塵機能と中国向けのソフトウエアの改良だけで中国人が6万6000円(5000元)ものお金を払うだろうか。中国独自の技術力も付いたことから、それを上回るような機能や表現力がスマホに求められているのではないだろうか。ただ、販路に関して複数の中国企業と提携し拡販体制を整えていることは評価できる。

参考資料
1. 三菱電機、SiCインバータを一体化したモータ試作/、インホイールEV射程内に (2012/03/08)
2. MWCで見えてきたメガトレンドはNFC、中国の存在感、モバイルプロセッサ (2012/03/16)

(2012/03/19)
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